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本屋に立ち寄り、人の世の帰り

金がいる
資格を取ろうなどと思って、立ち寄った本屋をぐるりと周り
以前少しだけ学んだことのある資格の本の前 検定勉強でもしようかと
これはテキストと問題集が一緒になってて良いな しかしこっちの方がイラスト付きでわかりやすそうだ
この検定を取るにはこのタイプの問題集は必須だろう 一人でぶつくさ言いながらふたつ手に取った
よしこんなもんだろう 全力で取り組めば、なんとか冬の試験に合格できそうだ
さて、レジに向かうついでに他の本も見て回ろう
話題の新作 人気小説家の作品 健康本
一周し終えるころ、古典や詩集の前で足が止まる
ポケットに収まるもう一人の自分 あるいは、ふとした時にわたしを支えてくれる
詩にはそんなことが起こるらしい
あんまり多くの詩や詩人を知らないが、詩が好きである
昔々油粘土を捏ねて、何を作るでもなくカタチをつくり出し これ此れに似ているなと思いついたものを作る
不可抗力と自由の遊びが思い起こされた
なぜこんなことを思い出すのだろう
二冊の本 目の前に一つの本棚にまとめられた詩集
わからないことだらけの人生はまだ終わりたく無いと駄々をこねる
油粘土なんかよりずっと重たくなった足を引きずって、二冊の本を取った本棚の前にいる
この本を買って、勉強をするのだ。資格を取り、就職をすればよいのだ。勉強がいかに難しくとも簡単な話だ。
1分とも1時間とも永遠とも言えぬ暗闇の時間
わたしは二冊の本を元の場所に
戻していた。
この本はわたしの人生を変えることになる。わたしにはその本を買う勇気がなかった。
それを買うことで、もう2度と、今いる場所に。今向かおうとしている景色の先に。もう2度と辿り着けなくなってしまう、道がわからなくなってしまう。そんな気がしてならないのだ。
へばりついてくる視線からは逃げられない。
いつまでもついてくる。
おまえはいったいなにをしてきたのだ と
じゃあ何をしてきたと言われない人生などあるのか
明日も腹を空かせてぼんやりと
空を見上げて汗をかきながら歩く
道が分からず歩いて
歩いたところを道としてみよう
へばりついてくる視線たちよ、着いてこい。先に行っているぞ。

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