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倶楽部にて
朝、アラームが鳴って目が覚めて、スマホを手に取り、ベッドの中でThreads のタイムラインをぼーっと眺めていたら、こんなものが目に飛び込んできた。
米国のラッパー、50 Centが、もしも昭和の時代に日本でレコードを出していたら、というコンセプトで作られた、架空の日本盤ジャケデザインである。
すばらしすぎる。感動で一気に目が覚めた。50に「ごじゅう」とルビが振ってあるところなど、神がかっている。
特に秀逸なのが、B面の「誕生日ダヨ! クイーンズ音頭」だ。元ネタは50 Centのヒット曲「In Da Club」。昭和歌謡曲風に訳せば、「倶楽部にて」といったところだろうか。冒頭の歌詞が特に印象的なパーティソングである。
Go! Go! Go, shawty, it's your birthday!
直訳すれば「今日はお前の誕生日」だが、じつはその先はこんなふうに続く。
We gon' party like it's your birthday
We gon' sip Bacardi like it's your birthday
And you know we don't give a fuck it's not your birthday
「誕生日ノリで騒ごうぜ
誕生日ノリで飲みまくろうぜ
え? 今日、誕生日じゃない? んなのいいから、騒ごうぜ」
要するに、とりあえず飲んで騒ぎたい歌であって、誕生日はぶっちゃけ関係ないのだ。
この「Go! Go! It's your birthday!」は、酔っ払って踊っている人などに「いいぞ、もっとやれ」とけしかけるときなどに、日常会話で使われることもある。日本の飲み会で聞く、「飲~んで、飲んで飲んで、飲んで!」とか、ああいうやつと同じノリだ。(令和の今、そういうかけ声がいまだに飲み会で飛び交うものなのかは少々疑問だが……)
その「In Da Club」も、もう20年以上前の曲。もはや懐メロだ。今改めて歌詞を読んでみると、いろいろな意味で時代の流れを感じざるをえない。
50 Centの言う「飲んで騒ぐ」とはだいぶノリが違うが、日本で「とりあえず飲みたいだけの曲」といえば、「日本全国酒飲み音頭」を思い出す。「〇月は〇〇で酒が飲めるぞ」と、年中なんらかの口実で酒を飲もうとする歌だ。いちいち形ばかりのどうでもいい理由をつけているところが、きちょうめんというかチマチマしているというか、いかにも和風だ。
誕生日は年に1回しかないのに対して、一年を通して口実があるほうが酒が飲みたい欲の深さが上のようにも思えるが、酒を飲むために任意の日を誕生日にしてしまうおおらかさには、とりあえずなんにでもバーベキューソースをぶっかけて大盛りにするようなアメリカらしい豪快さが垣間見える。
最近のHip Hopにはすっかり疎くなってしまった私だが、“クラブ活動”をしていた若かりしころを懐かしく思い出した。終電で出かけて始発で帰るなどはさすがにもう無理だが、昼間に2、3時間フラッと遊びにいける、ちゃんと音楽を聴いて踊れるクラブ、なんてものは、どこかにないだろうか。
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