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M-1の漫才をデータで可視化すると、ミルクボーイ優勝の要因が見えてきた

ゲセガーガーガーガーガーガーガーガーガー!!
オウ、オウ!(ドュン、ドュン、ドュンン)オウ、オウ!
どうもー @fujitako03 です!よろしくおねがいしますー

これはBrainpad AdventCalendarの記事です。

今年のM-1、最高に面白かった!

今年のM−1グランプリは皆さんご存知の通り、ミルクボーイが歴代最高得点を出しての優勝となりました。私も、コーンフレークのネタは自宅の机を叩きながら今年一番の大笑いをしました。

今年は歌ネタのニューヨークを皮切りに、鼓や扇子を使った漫才のすゑひろがりず、ツッコまないツッコミのぺこぱなど、とにかく漫才の幅が広かったように思います。「面白さ」だけでなく「新しさ」を求められるM-1グランプリは多様な漫才が見られて視聴者としてはとても楽しいのですが、その具体的な違いが何かと問われると、意外と難しいのではないでしょうか。そんなときはデータの出番です。漫才をデータ化して可視化してやりましょう!

(最終的に作ったものはこんな感じです!)

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漫才のデータってどこで手に入れるの?

漫才のデータはどこを探せば見つかるのでしょうか。
ネットを隅々まで探せば、、、、、そんな、甘いものではありません。データを得るには誰かが奴隷になるかないのです。

まずは漫才のデータを集めるためのツールを作成しましょう!

作成したツールはこのような見た目になります。PythonのFlaskというフレームワークで作っています。
スクリーンショット 2019-12-26 1.17.43

左側が入力フォームとなっていて、会話のやり取りごとに必要な項目にチェックを付けていきます。右側はこれまでの入力が表示されています。

例えば、「コーンフレークやないかい」という発言をデータ化するとしたとき、話者は「基本立ち位置右のB」、ツッコミを「はい」にし、会場の笑いを「小さい」をオン、「間は食い気味」としてほかの値はデフォルトで送信、次の発言の入力に移ります。

よって、今回のデータはあくまでも素人の私にはそう見えたというデータです。おそらくもっと漫才に詳しい方やそれこそ漫才師本人からすると「それはボケじゃない」などの意見があると思いますのでご承知おきください。

この作業を、漫才を何度も巻き戻して確認しながら入力していくだけです。
大体4分の漫才を1本データ化するのに2時間弱かかります。自分はデータの奴隷だと言い聞かせて入力していきます。

漫才をデータしていく上で難しいと感じた点がいくつもありました。
・ボケ(ツッコミ)と判定するべきかどうかが曖昧
・どこで区切るがが難しい(相槌はどうする?)
・同時に話している場合は?
・早口で聞き取れないことがたびたびある
今回の上記についての対応策としては、細かくルールを決めるのではなく、フラグ付けを行う人を自分だけにすることでなるべくフラグのブレを抑えるということで一旦は済ませていますが、本来は明確なルールを作るべきかなと思います。

ちなみに、google Speech APIやgoogle documentの音声入力機能を活用して文字起こしの自動化も試みましたが、漫才の特性上雑音が多いことや早口であることなどが影響し手で入力するほうが早いという結論に至りました。

奴隷作業はつらいだけではありません、同じ漫才を2時間見続けると最後は全く笑えなくなる、、、かと思いきや、悟りの境地に達してこれまでとはまったく異なる視点でその漫才の面白さに気づくようになります。今の私はミルクボーイの漫才は、ボケの駒場が合間合間で挟んでくる「せやねん」が面白くてたまらないです。ぜひ「せやねん」だけに注目してもう一度ネタを観てください。

22日の放送後、睡眠時間を削って集めました。
今回対象とするのは、皆さんの印象に残っているであろう上位3組の1本目の漫才3つになります。
それぞれの漫才の集計値を比較したものが以下になります!

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数字の定義
【発言回数】発言が途切れるもしくは話題が変わるまでを1とした合計数
【発言文字数】発言を文章に起こしたときの合計文字数(漢字は読みに関わらず1とする)
【ボケ数】ボケた回数(ツッコミ担当でもボケたらカウント)
【ツッコミ数】ツッコミ回数(ボケ担当でもボケたらカウント)
【ウケ回数】話者が話している間にお客さんがウケた回数。(ボケに対するツッコミをするタイミングで笑いが起きたら、ツッコミの発言に対してウケ回数がカウント)
【動きの大きさ】体の動きと、立ち位置の移動を総合的に加味した指標
【ポジティブ/ネガティブ】発言の文章を入力として機械学習で判定したポジティブ度ネガティブ度(https://hironsan.hatenablog.com/entry/japanese-sentiment-analyzer

比較から見えること

画像に書き込みました!
それぞれの漫才の特徴が数字としても現れているのが面白いですね。

無題のプレゼンテーション (1)

動く!漫才ダッシュボードを作った

漫才は大喜利のように1問1答ではなく1本のストーリーで作られています。集約した数字だけで見るよりも、漫才の流れでみたほうが特徴がわかるのではないかと思い、動く漫才ダッシュボードを作成しました。

ダッシュボードの説明
1本の4分漫才を15秒で楽しめるようになっています。
1段目:コンビ名と芸名
2段目:セリフ
3段目:立ち位置と動き。舞台に向かって見たとき立ち位置の立ち位置と体の動きの大小を表現しています。
4段目:発言ごとの文字数棒グラフ(ボケとツッコミで色付け)
5段目:発言ごとの文字数棒グラフ(観客の笑いで色付け)

これらは、Rという統計解析によく使われるプログラミング言語を使って作りました。

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 ミルクボーイの漫才は見た方は分かると思いますが、終始同じリズムで展開され、観客もそのリズムの中にのめりこんで行きます。
どんなリズムかを整理すると
①駒場が「おかんが忘れている好きな朝食」の特徴を言う
②内海が「コーンフレーク(やないか/と違うやないか)」とつっこむ
③内海がコーンフレークではない理由をコーンフレークのあるある話で説明する
④内海が駒場に「もっと他に特徴言ってなかったか」と聞く
ここまでがひとつのループで、「おかんが言うにはな」を挟んでまた次のループに移る。という流れになっています。
次も同じリズムで展開されるのが分かっているので、「おかんが言うにはな」を聞きながら、「さあ次はコーンフレークに対して何て言うんだろう」とワクワクしています。

ダッシュボードから見えること
『殆ど動かない。まさにしゃべくり漫才!』
真ん中の丸い点が2つ並んだ図は、コンビの動きを表現しているのですがほとんど動きません。松本人志も、「これぞ漫才。久しぶりに見せてもーた」まさにしゃべくり漫才であると評価しています

データで見てもリズムが一定!
下から2段めの棒グラフを見ると、発言ごとの文字数でプロットしているのですが、かなり一定であることがデータでも表現されています。青い棒グラフから、「コーンフレークやないかい」という声が聞こえてきます。

ウケのリズムも一定!
一番下の棒グラフは発言ごとに、お客さんがウケた(黄色)大きくウケた(オレンジ)で色づけています。
よく見ると、先に黄色い棒がたち、後からオレンジの棒が立っています。
具体的には「コーンフレークと(やないかい/ちがうやないかい)」で笑いを取り、そのあとのコーンフレークをくさすようなあるあるで大笑い笑いを取っている構造が表現されています。

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かまいたちのネタは、ボケの山内がUSJをUFJと良い間違えたことを頑なに認めず、むしろ良い間違えたのは濱家だと押し付けて開き直る山内の異常性が光る漫才でした。ミルクボーイと違うのは、ミルクボーイはツッコミがボケに対してむしろ従順で、毎回1つ前と違うことを言っているのに毎回それを素直に受け取って、コーンフレークかそうでないかをつっこむ漫才でいた。かまいたちの場合は、どちらかと言うと喧嘩に近く、お互いにお互いを罵倒することが多い漫才です。これは、ポジティブ度ネガティブ度にも表現されています。

とにかくボケの数と笑いの数が多い!
ダッシュボードを見ているとまずに入るのがボケの数と笑いの数の多さです。ミルクボーイとくらべて下の棒グラフであきらかに色がついている棒がおおいことから分かります。
また、ボケの数に対してツッコミは少なく、山内に濱家が押し負けている様子もグラフから読み取れます。

後半の濱家が大きく動き回る!
こちらも漫才を見た方は記憶に残っているかと思いますが、後半、濱家が右に左大きく動き回ります。また、お客さんにたいして投げかけも多く、舞台の端から端まで観客席も含めて漫才を展開していました。


ぺこぱのネタは、ツッコミの松蔭寺がツッコミかけるけどツッコまない斬新さが印象的でした。これをツッコミとするのかしないのかは非常に迷いましたが、フレームそのものはツッコミなので今回はツッコミとしています。
他の2組と違うのは、漫才の中でコントを展開する漫才コントであるという点です。

ふたりとも大きく動き回る!
漫才コントであるがゆえ、前半から二人がおおきく動き回っていることが、動きと立ち位置プロットから見て取れると思います。

ウケを取るのはボケではなくほとんどツッコミの松蔭寺!
一番下の棒グラフを見ると、ウケの色がついているのはほとんど下に伸びてる松蔭寺の棒グラフであることがわかります。ボケそのものはあえてベタな笑いにすることでここは笑いどころではないことをお客さんに伝え、そのあとのツッコミ(?)で大きな笑いをとっています

笑いのリズムがミルクボーイと逆!
ミルクボーイは「コーンフレークやないかい」→「コーンフレークあるある」で小さい笑いから大きな笑いにつなげていました。それとは逆にぺこぱの漫才は「ツッコミフレーズ」→「キザな一言」で、大きな笑いの後に小さな笑いの構造となっていました。
一番下の棒グラフでオレンジの次に黄色い棒グラフが来ているのがそれを表しています

ミルクボーイはなぜ優勝できたのか

今回のM-1後、ミルクボーイももちろんですがぺこぱの漫才が「やさしい漫才」だと大きな話題になりました。ミルクボーイも相方に対して文句や罵倒を言うのではなく、むしろ従順に相方の話を素直に信じて揺さぶられていく姿は、これも「やさしい漫才」に含まれるのではないでしょうか。
ここ数年「だれも傷つけない笑い」が今どきの笑いである論がいろいろなところで聞こえます。これについては、議論が多いのですが、私は「だれも傷つけない笑いなど無い派」です。本当は誰かしらは傷ついているテイになっています。今回だと、コーンフレークと最中と松蔭寺が自虐ネタで傷ついています。
個人的には笑いが成立するためには何かが傷つかなければ行けないと思っているのですが、そのなにかを「モノ」であったり、「自分」に持ってくることで易しい漫才が成立していたのではないでしょうか。

見た目からもやさしそうな、そんな時代が求めているやさしい漫才を、新しい形の漫才の中で表現したくさんのウケをかっさらったミルクボーイはまさに今回のM-1グランプリ優勝にふさわしいのではないでしょうか。

最後に

今回は、可視化からM-1グランプリ2019を私の目線で考察しましたが、他にも言えることはたくさんあるのではないかと思っています。漫才のこんなテクニックもデータで表現されている!など皆さんからの意見があればぜひコメント欄やTwitterで書いて頂けるとうれしです。

この分析は、以前Japan.Rというイベントで紹介した、2018年のM-1分析の続きになります!前回は2018年の和牛、ジャルジャル、トム・ブラウンの分析をしているので、合わせてぜひご覧ください!

https://docs.google.com/presentation/d/1MS92cdYhjBChtZI2PdSkFfApmNVO4-WDrmB7OghPyQQ/mobilepresent?slide=id.p

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