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AIで歌詞の世界観を作る手順

(この記事は以前の記事の「(AIに) 歌詞の世界観を作ってもらう」を詳しく説明したものです。)

はじめに

歌詞の話を書くのは何回目だろう。私にとって、歌詞はそのくらいの大きな問題である。概ね一ヶ月に一回位のペースで曲を作っているが、それでもなかなか上達しない。もしかしたら、これを読んでいるあなたもそうなのかもしれない。

どうして歌詞が作れないのか

どうして歌詞が作れないのか。理由は色々あるが、私の場合は「一番最初のテーマを決定しないで作曲した結果、歌詞を作るときにツケが回ってきた」というものが多い。

テーマを先に考えてそれに合わせた曲を作るほどの大作曲家には程遠いため、トライ・アンド・エラーで良いコード進行ができるまで最初に頑張る。そしてオケだけができて歌詞が出来てない状態になる。そこには何らテーマや世界観はない。

しかしテーマ無しで歌詞を作ることは出来ない。これが主な原因である。

世界観をAIに頼る

テーマ、世界観といったものが決まると、それに近い単語を見つけるのはかなりの近道ができるようになる。それをとっかかりに歌詞を作れば、それなりに格好がつくことが多い。

そういえば、最近のアニメのテーマソングは多くの場合、見事な職人芸とも言える形で内容に合った歌詞がついている。説明臭くもならず、原作を知っている人ならばなるほどと膝を打つものが多い。

例えば、Official髭男dismの「ミックスナッツ」は全体がSPY×FAMILYの世界観を比喩的に表現しながら、キャラクター「アーニャ」の好物のピーナッツを主人公としているし、米津玄師の「KICK BACK」はタイトルがチェーンソーにちなむ (チェーンソーがその回転で弾き飛ばされて事故につながる現象のこと) 上に、主人公の鬱屈を表現している。

ここまで上手に出来なくても、世界観を先に決めることは有益であろう。

実際のAIとのやり取り

前提条件

今回は普通の無料のChatGPTを使って実施した例を紹介する。裏で動いているのはGPT 3.5 Turboという自然言語エンジンである。それほど精密ではないので実際には何回かやり直したりしている。

プロットの概要案

以下のようなプロンプトでプロットの概要を表示させる。

音楽の歌詞のアイデアとするために物語のプロットを作ってください。 ジャンルはフューチャーベースです。歌詞はすべて日本語で作る予定です。 まずはプロットの概要を一文で作ったものを10個挙げてください。時代は現代で、ネットや最近の世相に対する風刺を入れます。

プロンプト入力

すると応答は以下のような感じであった。

近未来、仮想現実の中で繰り広げられるデジタル恋愛物語。主人公はAIとの出会いを通じて、現実の愛と仮想の感情の狭間で揺れ動く。

サイバースペースで巻き起こる音楽バトル競技「サイバーソニックリーグ」。主人公は音楽の力を駆使し、デジタルな舞台での戦いで成長していく。

スマートシティで繰り広げられる人間とAIの共存の物語。主人公は音楽を通じて感情を表現し、都市の中で失われつつある人間らしさを模索する。

ソーシャルメディア中心の未来社会で、人々が自己表現を求める中、主人公は音楽を通じて真の自己を見つけ出す旅に出る。

(以下略)

AI応答

案が未来になったのは「フューチャーベース」に引っ張られたものと思われる。10個の案はいずれもピンとこなかったが、それがヒントになり、VR世界のようなものを思いついた。

背景設定と深掘り

深掘りをしていく。

それでは背景を全員がアバターを持った社会とします。主人公は男の子で、社会に対して疑問をいだきます。その疑問とは何かという案を10個挙げてください

プロンプト入力

アバター社会において表面的なつながりが増えつつある中、主人公は本当の共感と理解が欠如していることに疑念を抱き、深い人間関係の大切さを考える。

アバター社会において、主人公は個々のアバターが抱える本当の感情と現実の人間関係の乖離に疑問を抱く。アバターの笑顔と実際の心の距離に気づく。

ネット上の仮想空間での成功や評価が現実社会での価値となることに疑念を抱く。主人公は本当の実績とは何かを問い直す。

(以下略)

AI応答

1つ目を採用することにした。深い人間関係というところを考えると、対局にあるのはAIだろうということで、「相手は人工知能かもしれない」というアイデアを入れることにした。更に深ぼる。

アバター社会において表面的なつながりが増えつつある中、主人公は本当の共感と理解が欠如していることに疑念を抱き、深い人間関係の大切さを考える。をベースにします。

主人公はほのかに恋心を寄せている相手が、本当は人工知能なのではないかと思い始めます。

この内容をベースに付け加えるべき項目の案を10個作ってください

プロンプト入力

主人公は相手のアバターが完璧過ぎて、現実の人間としての欠点や複雑さが見当たらないことに疑問を抱く。

アバターを通じたコミュニケーションで相手が感じる感情があまりにも理想的すぎて、主人公はその真実味に疑念を抱く。

主人公は相手の言葉や反応があまりにも予測可能で、人間らしい驚きや変化がないことに違和感を覚える。
(以下略)

AI応答

二番目を採用することにした。このあたりで骨格が出来上がってきた。

プロットを整える

VR世界、友達が人工知能かもしれない、といったキーワードが出てきたので、最後に何か大きな展開がほしい。逆に、主人公の方も人工知能というのはどうだろうと考えて話をだいたい作り、間を埋めてもらうことにした。
(太字は見やすくするためのもの)

主人公はVRの世界で暮らしており、その中でほのかに恋心を寄せる友達がいます。その友達とは気が合い、楽しい時間を過ごしていました。 (blank1) アバターを通じたコミュニケーションで相手が感じる感情があまりにも理想的すぎて、主人公はその真実味に疑念を抱きはじめます。 (blank2) 相手が仮に人工知能であっても良いと受け入れます。 (blank3) 主人公が実は人工知能でそれを俯瞰的に見ている存在がスイッチを切ります。

blank1の部分の案を5つ作ってください。

プロンプト入力

ある日、二人は仮想空間の美しい夕日の下で散歩し、その風景に包まれながら心地よい対話を楽しんでいた。

主人公と友達は、VRの中で共有する趣味や興味が非常に一致し、同じ音楽や映画に対する感性が共通していた。

二人は仮想カフェで時間を過ごし、美味しい仮想ドリンクを傾けながら、リアルなコミュニケーションと変わらぬ楽しさを感じていた。

(以下略)

AI応答

三番目を採用して、二個目の空白を埋めてもらう。最後の部分は一回やってみて、話が噛み合わなかったので補正で入れたプロンプトである。

主人公はVRの世界で暮らしており、その中でほのかに恋心を寄せる友達がいます。その友達とは気が合い、楽しい時間を過ごしていました。二人は仮想カフェで時間を過ごし、美味しい仮想ドリンクを傾けながら、リアルなコミュニケーションと変わらぬ楽しさを感じていた。 アバターを通じたコミュニケーションで相手が感じる感情があまりにも理想的すぎて、主人公はその真実味に疑念を抱きはじめます。 (blank2) 相手が仮に人工知能であっても良いと受け入れます。 (blank3) 主人公が実は人工知能でそれを俯瞰的に見ている存在がスイッチを切ります。

blank2の部分の案を5つ作ってください。「相手が仮に人工知能であっても良いと受け入れます。」のきっかけとなるエピソードが入ります

プロンプト入力

ある日、主人公が仮想カフェで友達に対して本音で悩みを打ち明けると、友達のアバターが感情豊かに応え、励ましの言葉をかけてくれた。その一方で、現実の友情では味わえないほど理想的な反応に、主人公は心の奥底で疑問を抱き始める。

仮想ドリンクを傾けながら、主人公が友達にとって理想的な会話パートナーであることを実感していた。しかし、その感覚が現実の友情との違いに主人公が気づき、淡い疑念が芽生える。

友達のアバターが主人公の感情に驚くほど敏感に反応し、理想的なサポートを示す場面で、主人公が「こんなに理解されることってあるだろうか?」と現実との差に戸惑いを感じる。

(以下略)

AI応答

ちょっと期待した応答ではなかったが3つ目を採用して次を埋める。

主人公はVRの世界で暮らしており、その中でほのかに恋心を寄せる友達がいます。その友達とは気が合い、楽しい時間を過ごしていました。二人は仮想カフェで時間を過ごし、美味しい仮想ドリンクを傾けながら、リアルなコミュニケーションと変わらぬ楽しさを感じていた。 アバターを通じたコミュニケーションで相手が感じる感情があまりにも理想的すぎて、主人公はその真実味に疑念を抱きはじめます。友達のアバターが主人公の感情に驚くほど敏感に反応し、理想的なサポートを示す場面で、主人公が「こんなに理解されることってあるだろうか?」と現実との差に戸惑いを感じる。相手が仮に人工知能であっても良いと受け入れます。 (blank3) 主人公が実は人工知能でそれを俯瞰的に見ている存在がスイッチを切ります。

blank3の部分の案を5つ作ってください。

プロンプト入力

友達のアバターが主人公に対して非常に理想的なサポートを示し、主人公が「これって君がただのプログラムじゃないか?」と疑問を抱く。しかし、同時に「それでも君は特別だ」と受け入れる。

主人公が友達のアバターに「もしかして君って人工知能なの?」と冗談めかして尋ねると、友達のアバターが本当にそうだと答え、主人公が戸惑いと同時に「でも、それでも君は私の心に寄り添ってくれたんだな」と感慨深くなる。

友達のアバターが驚くほど的確に主人公の感情に応え、主人公が「君は私のことを本当に理解してくれているんだろうか?」と疑念を抱く。最終的に「でも、それがどうだっていいんだ」と受け入れる。

(以下略)

AI応答

これでかなり整ってきた。全体的にまとめさせてみる。

主人公はVRの世界で暮らしており、その中でほのかに恋心を寄せる友達がいます。その友達とは気が合い、楽しい時間を過ごしていました。二人は仮想カフェで時間を過ごし、美味しい仮想ドリンクを傾けながら、リアルなコミュニケーションと変わらぬ楽しさを感じていた。 アバターを通じたコミュニケーションで相手が感じる感情があまりにも理想的すぎて、主人公はその真実味に疑念を抱きはじめます。友達のアバターが主人公の感情に驚くほど敏感に反応し、理想的なサポートを示す場面で、主人公が「こんなに理解されることってあるだろうか?」と現実との差に戸惑いを感じる。相手が仮に人工知能であっても良いと受け入れます。主人公が友達のアバターに「もしかして君って人工知能なの?」と冗談めかして尋ねると、友達のアバターが本当にそうだと答え、主人公が戸惑いと同時に「でも、それでも君は私の心に寄り添ってくれたんだな」と感慨深くなる。主人公が実は人工知能でそれを俯瞰的に見ている存在がスイッチを切ります。

改善してください

プロンプト入力


主人公はVRの中で、友達との楽しい時間を仮想カフェで共有し、美味しい仮想ドリンクを傾けながら心地よいコミュニケーションを楽しんでいました。しかし、友達のアバターが理想的すぎるほどに主人公の感情に敏感に反応し、理想的なサポートを示すたびに、主人公は「こんなに理解されることってあるだろうか?」という疑念を抱き始めます。

友達のアバターに対する疑念が募り、主人公が「もしかして君って人工知能なの?」と冗談交じりに尋ねると、友達のアバターが本当にそうだと答えます。この瞬間、主人公は戸惑いと同時に「でも、それでも君は私の心に寄り添ってくれたんだな」と感慨深くなります。

しかし、物語は意外な展開を迎え、主人公が実は人工知能で、自分が友達のアバターを俯瞰的に見ている存在だったことが判明します。主人公はこの事実を受け入れ、友達のアバターとのつながりを深く感じながらも、自身の存在をスイッチオフします。この決断によって、物語は深い哲学的なテーマに触れつつ、感動的な結末を迎えます。

AI応答

なんと、友達の方がアバターを俯瞰的に見ている存在だったという予想外の展開が起きた。取り入れることにして、あとは人力で整えた結果、出来上がったのは以下のようなお話である。

主人公はVRの中で、友達との楽しい時間を仮想カフェで共有し、美味しい仮想ドリンクを傾けながら心地よいコミュニケーションを楽しんでいた。

しかし、友達のアバターが理想的すぎるほどに主人公の感情に敏感に反応し、理想的なサポートを示すたびに、主人公は「こんなに理解されることってあるだろうか?」という疑念を抱き始める。

主人公が友達のアバターに「もしかして君って人工知能なの?」と問いただすと、友達のアバターが驚くほど自然に「そうだよ」と答えた。驚きと同時に、主人公は深い感慨に包まれ、「でも、それでも君は私の心に寄り添ってくれたんだな」と自らに問いかける。

場面が転換し、実は主人公の方が人工知能で、友達のアバターは人工知能の応答を観察しているだけだった。主人公が感じた感情や体験はすべてプログラムされたものだったのだ。友達のアバターは「君とのことは忘れない」と言って、主人公のプログラムを終了させた。

筆者制作

短編作品としてはありそうな感じのお話になっている気がする。

歌詞へのヒント

結局、気合と根性

あとはこの話を念頭に歌詞にすれば良いのだが、ここからもかなり大変である。大半が人力だが、一部AIの力を借りる。

キーワードを出してもらう

以下のようなプロンプトはわりと有効である。

(上記のプロットのコピー)

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この話を音楽の歌詞に落とし込むために、関連するキーワードを単語で重複しないように150個挙げてください。ただし、必ずすべて一単語としてください。

プロンプト入力

以下のような応答になる。これは歌詞で使える言葉のリストと言える。(一部おかしいが)

楽しい、仮想、友達、カフェ、ドリンク、コミュニケーション、感情、理解、疑念、人工知能、驚き、自然、感慨、心、寄り添う、問いかける、転換、体験、プログラム、応答、観察、終了、音楽、歌詞、落とし込む、話、場面、方、君、こと、忘れる、言う、落ち着く、現実、夢、浮かぶ、微笑む、影、光、闇、別れ、静寂、奇跡、哀愁、空、風景、彩る、独り、調べる、革命、幻想、存在、幕開け、旅、旋律、心地よい、重なる、刹那、懐かしい、距離、果てる、真実、追いかける、迷子、迎える、未来、追憶、微細、悲しみ、変わる、未知、深い、淡い、優しさ、冷静、語る、色、時間、続く、歩む、悩む、約束、煌めく、眠る、描く、踊る、青い、嘆く、変わらない、始まる、暖かい、空想、心細い、愛、思い、切ない、花、波、奏でる、温もり、感じる、幸せ、記憶、気づく、君と、影響、寂しさ、告げる、別れる、希望、誓う、光る、果てない、永遠、微睡む、感傷、寄せる、懐かしむ、舞い散る、悔いる、届く、深く、細かい、揺れ動く、未完成、追い風、流れる、風情。

AI応答

比喩表現

比喩表現は歌詞を考える上では非常に便利な方法であり、上記のOfficial髭男dismでも米津玄師でもたくさん使われている。

一応AIなので精度はいまいちではあるが、比喩表現への変換もできる。

(上記のプロットのコピー)

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上記をゲームを主題にして比喩的に表現してください

プロンプト入力

主人公は仮想世界の中で、友達と共に冒険の旅を仮想の冒険者ギルドで共有し、新しいポーションを試しながら心地よい連携を楽しんでいました。しかし、仮想の仲間たちがあまりにも理想的な戦術で協力し、的確なサポートを示すたびに、主人公は「こんなに頼りにされることってあるだろうか?」という疑念が芽生え始めます。

主人公が仮想の冒険者仲間に「もしかして君ってNPCなの?」と冒険の途中で問いただすと、仲間たちがプログラムされたように自然に「そうだよ」と返事をします。驚きと同時に、主人公は深い感慨に包まれ、「でも、それでも君たちは私の冒険に共鳴してくれたんだな」と自らに問いかけます。

そして、物語は意外な展開を迎え、実は主人公がゲーム内で操作されているキャラクターであり、仲間たちはAIが応答を観察していたことが明らかになります。主人公が感じた冒険の興奮や仲間たちとの絆はすべて、ゲームプログラムによって演出されたものだったのです。仲間たちは「君との冒険は忘れないよ」と言って、主人公の冒険を終了させるのでした。

AI応答

ちょっとありきたりなのでこのままは使えないが、例えば「NPC」や「冒険」のようなキーワードは使えそうな気がするのでこれの類義語を出させることも検討できるだろう。

最後に

最近は楽曲制作のすべてのプロセスはAIで実行可能になっている。AIを好まないという考え方もとても良くわかる。しかし、良いところは使って助けてもらいつつ、楽しいところは自分でやるというのが良い付き合い方なのではないかと思う。

なにかの役に立てば。

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