若者が挑戦できる「場」をつくり続ける
学生の頃、「何かをやりたい!」とふいに感じたことはありますか?
それでは続けての質問。
その「やりたい!」という気持ちを受け入れ、その思いを一緒に育てていける仲間や大人はいましたか?
そして、それを、実現するために必要なものはそろっていましたか?
くにたち富士見台地域のまちづくりに取り組むKFには、店舗を経営したり、イベントを開催したり、新しいアイデアを創造しようとする若いプレイヤーがたくさんいます。
そして、学生や地域の若者の「やりたい!」という思いを実現させる「場」をつくりだし、彼らの挑戦を応援したり、ときには一緒にアイデアを育てていったりする大人も数多くいます。普段は学生が表に立つことが多いKFですが、学生と市民がともに活動する団体であり、市民である大人の方々は「KF理事」として、日々活動の幅を広げているのです。
そんな「やりたい!」を実現する「場」「組織」として機能し、多くの「人」が集まるKFについて知っていただくために、KFのメンバーの思いをお伝えできればと思い、KFの理事の方々のお話を連載することとなりました!
今回は、「KF理事インタビュー第一弾」と称して、理事長の内藤さんにお話しを伺いました。普段、富士見台地域でリフォーム専門店を営む傍ら、KF創設時からずっと理事長も務めていらっしゃいます。多様な活躍をされている内藤さんのお話を通して、若者も挑戦できる土壌をつくるKFの魅力が、少しでもお伝えできたら幸いです!
今回は、オンラインツールを用いてインタビューを行いました。
商店主・KF理事として、若者と混ざり合う
ーまずは、商店主としての内藤さんについて伺いたいと思います。リフォーム専門店「ユアーズ」について、教えていただけますか?
「ユアーズ」では、カーテンなどのインテリア商品を販売したり、電気の交換やシステムキッチンの導入などのリフォーム事業を手掛けていたりします。最初は小売り事業から始めたものの、20年ほど前からリフォーム事業もはじめました。
もともと、大学卒業後はサラリーマンでしたが、二年ほど経った時、独立しようと決めました。昔は銀行からお金を借りるのに担保が必要で、利息が12%もあったので、今と比べれば独立して事業を興すことは、めずらしかったのではないでしょうか。
「ユアーズ」の店頭には、たくさんのインテリア商品が並んでいます。KFの学生はよく前を通り、理事長のもとに向かうことも多々あります。
ちなみに、「ユアーズ」という店名は、青山通りに昔あった輸入食品のお店の店名に由来してつけました。
「ユアーズ」という名前のお店を日本で二番目に出したのが内藤さんなのだそうですが、青山通りの「ユアーズ」が今はなくなってしまったために、内藤さんのお店が今は「ユアーズ」の一番手とのことでした!!
お客様とのコミュニケーションの中で商売をするのが、買う方も売る方も楽しいのだと思っています。それができるのが、まさに富士見台地域ではないでしょうか!
オンラインでのインタビューのため、直接写真を撮りにいくことができず、内藤さんのどの写真を使うかというお話をいろいろした末にこれになりました。人前で話す機会の多い内藤さんらしい写真ですね。オンラインインタビューには、ユアーズの店頭にたくさん並ぶカーテンを背景に参加してくださいました!
ーそれでは、KF理事長としての内藤さんについて伺っていきたいと思います。理事長として、どのようなことをなさっているのでしょうか?
一言でいえば、あまり表にでることはないけれども、学生がいきいきと活動できるフィールドをつくってあげられるようにすることだと思います。彼らを中心とした活動によって、地域の活性化が進められれば、十分なのではないでしょうか。
大人だからこそできること、伝えられることがある
ーこれまでも約20年間理事長を務められてきましたが、その中で印象的だったことはなんでしょうか?
個人的に、KFが特に大変だった時期が二つあると思います。ひとつは、新入生がひとりしか入ってこなくて、事業の継続が危ぶまれた年、もうひとつは、約二年前から始まったコロナ禍です。特に、コロナ禍では、店舗の営業もままならない中、学生は困ることが多かったと思います。そういったときに、学生が試行錯誤することに加えて、大人が出ていき、一緒に課題を解決していくことが必要だと感じました。
内藤さんは、地域活性化を目的に活動する学生のために、KFのカフェ事業立ち上げ当時、金銭的なサポートをしてくださるなど、学生の挑戦を後押ししてくださる力の強さをものすごく感じます。(後ほどご紹介する書籍に詳細は書かれていますが、学生はこの時の借金を、きちんと事業の利益から内藤さんにお返ししています。)
KFの経営店舗が入る、富士見台名店街(むっさ21)のアーケード内の様子。KFの活動は、ここを中心に展開されていきます。
ーでは、コロナ禍に関連して、今のKFは、どのような状態にあると思いますか?これからについても考えていらっしゃることがあれば、教えていただきたいです!
今は、オンライン会議が中心となり、学生が商店街に通える機会が減少したり、地域全体での交流の場となっていたイベントなどがあまり開催できていないことから、KF内でコミュニケーションをもっととれるように工夫していくべきだと思います。
KFは、富士見台地域で何かを企画したいときに、その実現の場となるところです。これまで、地域通貨「エコマネー」や、今需要が高まっている「Uber Eats」の前進となるような宅配事業「かいものサポーターズ」というサービスを試してみたことがあります。それぞれ課題点がみつかり、実現には至りませんでしたが、このように学生が何か地域のために新しい企画を創造するために、じっくり考える時間をコロナ禍でとることができたらよいのではないでしょうか。
若いうちの失敗は、犯罪でなければある程度許されます。学生たちには、失敗してもよいから、自分たちのやりたいと思ったことを試してみてほしい、そして、考えるためのアンテナをはりつづけてほしい、そう思います。
内藤さんとのお話の中で、「ニュートンの万有引力」の話題も出てきました!この発見は、ニュートンがペストの流行中に故郷へ戻り自由に考えるする時間を得ることで出てきたものなのですが、それになぞらえて、学生の発想への期待を語ってくださいました。
全体を見て、若い力で創造を続けてほしい
ーKF立ち上げ当初からこれまでの内藤さんのことを見聞きしていると、「学生が主体のKF」という姿勢が強く感じられます。学生の活動をサポートする一方、時には商店主という経営者の立場から、学生のアイデアに対して冷静なアドバイスをする様子も印象的でした。KFで一緒に活動する学生に対して、特に伝えたいことはなんでしょうか?
全体をみる力を鍛えること、そして将来の展望を考えてみることを頑張ってほしいということでしょうかね。KFは、参加する学生の数が多くなってきているので、組織の規模もどんどん大きくなっています。それに伴って、ある企画を進めるチームごとのまとまりが強くなってきていると思いますが、そのチーム同士が交流する中で、新たに生まれるものがあると思います。世の中が閉塞感に満ちていても、やりたいことを実現したいという気持ちはもっていてほしい。そのための場所が、KFです。
最後に
いかがでしたか?
内藤さんには、理事長としてインタビューのトップバッターとなっていただきましたが、学生・若者の活躍を応援する姿勢が終始感じられる温かい雰囲気のインタビューとなりました。今年で創立19周年を迎えるKFは、実は約10年前に、『学生まちづくらーの奇跡―国立発!一橋大生のコミュニティ・ビジネス』(学文社)と題して、KFの活動が始まる前の動きから事業が拡大していくまでの歴史を書籍化しました。その本の中でも、内藤さんの学生の主体性を重視する言動が描かれており、その気持ちの強さを改めて感じ取ることができました。
「やりたい!」という思いを実現したい学生・若者を受け入れてくれるKFには、内藤さんをはじめとした、温かく、ときには鋭い意見を投げてくださる市民の方々がいます。筆者自身、そのことに対する感謝の気持ちがますます高まり、KFでの活動のモチベーションが、さらに高まりました。
これまでも、これからも、若い力で地域に新しい風を吹かせていける組織であり続けられるように、KFの力を存分に活かしていきたいと思います。
内藤さん、ありがとうございました!
リフォーム専門店ユアーズの詳細は、こちら!
KFの成り立ちとその中での学生と行政と商店主のやりとりをまとめた書籍『学生まちづくらーの奇跡―国立発!一橋大生のコミュニティ・ビジネス』(学文社)に、KFの軌跡がまとめられているので、気になる方はぜひご一読ください!こちらのnoteでは、現在と未来を見据えたKFの情報発信を続けていきます。