ヒッピーが "汚い" 服を好む理由
「あの、その髪型不快なんでやめてもらえませんか?」
私の友人が、実際に知らない人に街中で言われた言葉だ。その声をかけた人曰く、私の友人のドレッドヘアは黒人文化を模したものであって文化の盗用(Cultural appropiation)に当たるので、その髪型にしているだけで私の友人は人種差別主義者になる、ということだ。日本ではそこまで聞かないが、欧米では文化の盗用に関する議論が活発に行われている(参考資料)。
ドレッドが文化の盗用に当たるかについては賛否両論あるので、今回はそこに踏み込まないが、バックパッカーやヒッピーのコミュニティにいると、ドレッドヘアの人と関わる機会がたくさんある。しかし彼らが皆、黒人文化に影響されてその髪型にしている訳ではないように思われる。
ドレッドヘアに限らず、ヒッピーコミュニティでは、少し特殊なファッションを身に纏っている人が多い。今回は、なぜそのようなファッションがバックパッカー・カルチャーで生まれたかを考えていきたい。
ヒッピーファッション
以前のブログで述べたように、バックパッカーには様々な種類があるが、そのうちの私の周りによくいるヒッピータイプのバックパッカーは、やはりいわゆるヒッピーファッションに身を包んでいることが多い。そもそもヒッピーファッションとは、どのようなものなのか。
ヒッピーファッションというと、以下のようなファッションをイメージする人が多いかもしれない。長髪にボヘミアンワンピ、バンダナのような髪飾り、靴はウェスタンブーツで全体的にカラフルな印象だ。有名人だとSuperflyなどが代名詞だろう。
引用:http://fashiontrendwalk.com/34-modern-hippie-fashion-style-to-try-this-2018/
しかし実際のところ、このようなファッションは一般人が真似た「ヒッピー」ファッションであって、本物のヒッピーはむしろ下の図のようなファッションを身に纏っていることが多い。カラフルというよりはアース系の色を好み、布と服の中間のようなものをよく着ている。アクセサリーやタトゥーなどは、民族的な者が多い。髪はドレッドであることが多く、靴を履いていない人も多い。一般的なヒッピーファッションのイメージから考えると、日本人には特に「可愛く」見えないだろう。
引用:https://www.ozdoof.com/festival-tribe-sisters-people/
ヒッピーファッションの理由
それではなぜ、バックパッカーをはじめとしたヒッピーは、このようなファッションを身に纏うのか。
1. 容易性
バックパッカーやヒッピーがそのような格好するのは、まず一番にそれが簡単だからだ。彼らは清潔な市街ではなく、自然に溢れた場所で暮らしていることが多い。頻繁に洗濯することもできない。そうすると、アース系の色やカラフルな柄物の方が、汚れても目立たないので単純に便利なのである。ドレッドヘアも日本人の直毛な髪質では難しいかもしれないが、髪を何日も洗わないと自然とドレッドが編まれることが多い。自然と編まれなくても、ドレッドにしておいた方が汚れが気にならなくて楽だと考える人もいる。つまり彼らの服装は、彼らの生活習慣に合っているのだ。
2. 住んでいる地域性
彼らの持ち物に柄物や民族的な物が多いのは、彼らがアジアなどの原住民がいまだ民族柄の衣装を着ている地域で生活しているからだ。大量生産を好まないヒッピーや、できるだけ節約したいバックパッカーは、現地で生産されたものを購入することが多い。なので自然とそのような、民族的なアイテムがヒッピーコミュニティで一般的になった。
3. 反フォーマル文化
ヒッピー文化とは、60年代に生まれたカウンターカルチャーだ。そのため、ファッションにも既存の価値観に対する反骨精神が表されている。当時の男性はカチッとしたスーツに短髪がフォーマルな格好であったため、それに反抗するようにゆったりとした中性的な服と、ロングヘアを好むようになった。それが今でもヒッピー文化の一つとして残っている。
まとめ
このようにヒッピー達やヒッピー文化を受け継ぐバックパッカーは、彼らの生活に合ったファッションを発達させてきた。今はヒッピー文化を飛び出して一般にも普及してきた。しかし彼らにとっては、世間に彼らのファッションがお洒落だと認められるか、または汚いと捉えられるかは気にするに値しないことであって、仮に世間が全くその良さに気づけなかったとしても、彼らは彼らの好きなものを着続けるだろう。