コロナ時代だから刺さる20世紀最大の哲学者ハイデガーの言葉と不安との向き方
先がまったく見えないコロナ時代。押し寄せてくる不安の波に押しつぶされそうな毎日をどう乗り越えるのか?僕たちの喫緊の課題です。
「いつになればコロナが収束するんだろう」
「お店にお客さんが来なくてどうしよう」
「大地震が起きたらどうしよう」
「死ぬのが怖い」
いろんな不安を抱えながらそれでも必死で生きていかなければなりません。
ハイデガー(1889-1976)は20世紀最大の哲学者と呼ばれており、人間の永遠のテーマであるこの悩みについて解決方法を見出しています。
彼はまず人を困らせるネガティブな気持ち、考えを「不安」と「恐れ」に大別しました。
不安・・・曖昧で対処法がない
恐れ・・・明確で対処法がある
なんとも言えない気持ちになってしまうネガティブなものを明確に線引きすることで、一気に気持ちを転換できます。
では実際に先ほど例に挙げたものを不安と恐れに区別してみましょう。
「不安」は正直どうしようもない、今考えても仕方がないものに該当しますが、対象が明確で対策が考えられる「恐れ」には自分で努力でき、かつ改善できる余地があります。
今まで通りの来店が難しいけれど、テイクアウトを始める、ネット販売を始める、顧客に連絡して注文してもらう、チラシを配る、他の店と協業する、固定費を削る、融資や給付金の制度を利用する、ターゲットを変える、SNSで情報を発信するなどの対処法で危機を乗り越えられる可能性があります。(もちろん、勇気ある撤退もその一つ)
自分の心が押しつぶされそうなとき、まずは不安と恐れと区別することから始めてください。
不安との向き合い方
じゃあ不安とはどう向き合っていくべきなのか?
それは「今」を必死で生きることです。
当たり前やーんというツッコミはちょっと待ってください。結構深い話なんです、これが。
これを解説するためにはまず、人が持つ時間の概念を簡単に説明しなければいけません。ひとことで言えば誰しも「過去→現在→未来」という捉え方をしています。当たり前っちゃ当たり前です。
ですが、ハイデガー風にいうとこれを「通俗的時間」と呼ぶそうです。
人はどうしてもこの通俗的時間に囚われているせいで、過ぎ去った過去やまだ見ぬ未来を思い、不安や恐れで頭がいっぱいになっています。
しかしハイデガーは通俗的時間ではなく根源的時間(今)として考えよう、と語っています。
過去→既在(Gewesen)今の自分の中にすでに存在しているもの
未来→到来(Zukunft)今の自分の方へもたらすこと
つまり、過去も未来も自分の「中」にあるということ。
いつ起こるかわからない大地震に対してずっと不安を感じているだけではなく、防災グッズを用意したり、防災訓練に参加したりするなど、漠然とした恐怖で受け止めるのではなく「今」という瞬間ですべての物事を捉えれば、「今」基準で対処できることがたくさんあると説いています。
過去に起こったこと、その事実は変えられないけれど「今」努力すればその事実から一歩前に改善、進むことだってできると。ダイエットをどちゃくそ頑張るのもその一つですよね。
※ハイデガーは「今」という言葉を使わず、Dasein(ダーザイン)→今ここにいることと説明しています。
こんな風に曖昧だった不安に対しても「今」に焦点を当てれば、「恐れ」のように明確でかつ対処法が生まれてきませんか?
もちろんそれだけですべてから解放されることはありません。人それぞれで不安や恐れの区別が異なってくるでしょう。しかし現在のコロナ時代において大事なのは、押しつぶされそうな自分の心をどうやって健康的に過ごせるのかが最も大事だと僕は考えています。
なぜなら過度の不安や恐れは自分を傷つけるだけではなく、その矛先を他者へ向けてしまうから。そのパワーは言葉の力を借りて、他の誰かを傷つける恐ろしい刃に変貌します。それは最悪な結果を引き起こしてしまう可能性があります。
だからこそ、僕らは今に焦点を当て続け、できることを最大限にトライし続ける。それこそが最良の「不安との向かい方」だと僕は信じています。
日々の連続した最高の積み重ねが、素晴らしい到来(Zukunft)になると信じ、一緒に同じ時代を歩き続けていこうではあーりませんか。(チャーリー浜風)
※この記事はNHKの「世界の哲学者に人生相談」をヒントに書かせていただきました。
https://www.nhk.jp/p/tetsugaku-soudan/ts/K6KQ5G3VN5/