正統性なき時代の”偏愛”という企画
人間は古来から愛について探求してきた。ある哲学者によれば愛には6つの分類があるという。今日は愛の分類の話ではなく、愛の偏りの話をしたい。好きなものは何ですか?と聞かれてすぐに答えられる人は幸せだ。なぜなら、人間として生きる意味のひとつに好きなものがあるという条件が考えられるから。つまり、好きなものがあれば生きられるのだ。関心の高いものに時間やお金を集中的に投入する人たちをこの国では「オタク」と呼ぶ。「オタク」と呼ばれるのには訳がある。それは彼らが関心を寄せる対象が一般大衆のそれと異なるからだ。しかし、自らの美意識にしたがって対価を払い、所有欲を満たすという点においては、たとえば古美術収集に大金を費やす人々と変わりはない。正統性がますます薄まる現代社会。偏愛が個人にとっても、そして社会にとっても至上命題になることは間違いなさそうだ。
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