メーカーで商品企画経験40年職人が教える潜在ニーズからサービスや商品をヒットさせる秘訣
#創作大賞2024
目次
ブランディング成功の秘訣&マーケティング定義
重大な事実、お客さまは自分の「本当に欲しいもの」を知らない
潜在ニーズとは?
調査手法の注意点、限界と落とし穴
市場調査では潜在ニーズは見えてこない
調査手法の注意点、落とし穴
世の中に絶対ということはない
常識の罠
時代は常に変化している
不満や文句は宝の山は会議などでは出ないダメ
満たされない心を埋める
良い点より「文句」を言いたいのが人
潜在ニーズを探る秘訣
数が出れば出るほど潜在ニーズ発見が近づく
それは社会にとって必要か?
ロングセラーヒットとするためには
ヒットの土台コンセプト商品開発をブレさせない「ブランド憲法」制定
ブランド憲法とは?
ブランド憲法のメリット
理論バカになってはいけない
鵜呑みの危険性、決してやらぬこと
みんなが、なるほど「うなる」企画がヒットにつながる
ヒットする企画は後ろから書くと証明できる
ヒットをブーストさせる仕組み
Tシャツ理論ブランディングチェック
ヒッ卜するものに共通していること
30%差別化ルール
リニューアルの難しさ
あとがき
ブランディング成功秘訣&マーケティング定義
私が常に、何よりも大事だと考えているのは、”人を喜ばせたい”かどうかです。マーケティングとは、「人や社会に刺激を与え、感動してもらい、行動してもらうこと」。市場を読み解いたうえで、最大限の売上を得られるような商品・サービスをつくり上げることは当然ですが、顧客が本当にその価値を必要だと思ってくれることを提供することであり、つまり喜びを与えるということと同義です。さらにいえば、マーケティングの究極の目的は人助けであると考えます。人助けは売り込むこととは無縁です。人は受け取る側(授受側)よりも、あげる側(提供側)が興奮することは良く知られている事実です。そこが根本原理です。
そして、重大な事実、お客さまは自分の「本当に欲しいもの」を知らない
まずは、すべての常識は疑ってかかることが重要。ブランディングの基本と潜在ニーズから生み出すヒットの秘訣についてメーカーでの企画発売を40年間やっている職人がわかり易く極意を解説します。ヒットする秘訣の正体であるのは潜在ニーズ。それまで「欲しい」とおくびにも出さなかったのに、実際の商品を目に前にすると
「それそれ!それが欲しかったんだ!」
と突然豹変して、笑顔を向けてくる人に出会ったことはありませんか?または、自分自身がその体験をしたことはないでしょうか。「それ」こそが、潜在ニーズをとらえた商品です。潜在ニーズとは、文字どおり、顕在化された意識の下に潜む、「無意識」する欲求です。の世界に存在難しい心理学の話をするまでもありませんが、人間の意識は自覚できる「顕在意識」とはっきりと自覚できない「無意識」に大別できます。
潜在ニーズとは?
さらにこの「無意識」は、心理学者のユングが唱えた分析心理学によれば、一個人の領域における「個人的無意識」と個人の範時を超えた「集合的無意識」に分けられます。「個人的無意識」とは、個人がこれまで蓄積した経験や思想をベースにしつつも、自覚するまでにいたっていない混沌とした意識のこと。「集合的無意識」とは、人類や生物といった、個人を超えた先にある根源的な領域に潜む意識を指しています。
つまり潜在ニーズとは、ある特定個人、またはいまの時代を生きる日本人など集団の無意識下に潜んだ思いといえるでしょう。人間というものは、自分のことでさえ意外とよくわかっていないものです。「ああ、何で緊張するのかと思ったら、私はこの人のことが好きだったんだな」「朝起きれないと思っていたら、内心では会社を辞めたいと感じていたんだな」など、ふとしたきっかけで無意識下にあった自分の気持ちに気づくことがありますが、普段はなかなか自覚できないのです。
これが、ましてや赤の他人のことともなれば、なおさらです。その人の顕在意識さえすべてを理解できないのに、さらにその奥にある無意識の中身を探ろうというのですから。しかし新しい商品やサービスを生み出す人たちは、叡智を結晶させたノウハウを元に、この潜在ニーズをとらえようと努力を重ねてきました。「それそれ!」と、たくさんの人から笑顔を見せてもらえる商品を開発することこそ、生み出す側の喜びだからです。
市場調査では潜在ニーズは見えてこない
商品を開発する際は、市場調査などの各種リサーチをかけることが多くあります。
消費者のニーズを知りたい
検討している内容の仮説で本当に売れるのかを確かめたい
顧客の真の欲求をどれくらい満たしているか?
といった目的があります。まず調査の目的ですが、こうした調査によって潜在ニーズを発見する可能性は、ほぽゼロと断言してもよいでしょう。なぜなら、これらによって明らかになるのは、回答に参加した消費者の顕在意識に基づくニーズだからです。ここから本当にヒットの元となるデータはなかなか出てきません。
さらにいえば、その調査で検出されたこーズは、いまこの瞬間のニーズであり、すぐに過去のものとなってしまいます。単にそうした調査に基づいて商品化しても、発売された頃には消費者の心はすでに別のところへ移ってしまっているということも少なくないのです。いわば、調査でわかるのは過去および現在のことのみでこれから商品をヒットさせるべき未来が見えることは稀なのです。
調査で潜在ニーズが簡単にわかればどんなにいいかと思いますが、大規模な定量調査を大手調査会社と数百回実施した経験から判断すると、調査ですべてがわかるのなら、マーケッターや商品開発という仕事は必要なくなってしまいます。ましてバイヤーも提案を受けるメーカー企画書ではほぼすべてが売れる数値が入っています。が現実、翌年残っているものはわずかですから理解しています。
調査手法の注意点、限界と落とし穴
通常の調査では、たくさんの項目を質問してしまうあまり、質問数が多くなり誤った情報が収集される可能性が高くなります。消費者のことを探りたい私たちからすれば、せっかくの機会になるべく多くを聞き出そうとするのが人情ですが、回答を寄せるモニターからすれば、いくら協力するとはいってもなるべく労少なく済ませたいと考えるものです。
そのため、あまりに調査が長いと「早く帰らせてくれ」となっていいかげんな回答が増え、調査結果の精度が落ちてしまうことが多くなります。それでは、いくら費用をかけたところで、じつは使えないデータの塊ができるだけです。
世の中に絶対ということはない
世の中に絶対ということはないので、たまに、こうした調査からヒット商品が生まれることもあります。しかしそれは、潜在ニーズをとらえるのに成功したというよりは、とても優秀なマーケッターの技か幸運な勘違いというべきものでヒットに導かれた、偶然の産物でしょう。
私は多くの企業のコンサルティングを手がけ、数々の現場をのぞいてきましたが、業界分析や顧客分析から開発をはじめた通常開発商品は99%ヒットしませんでした。それよりも先にするべき「別のアプローチ」があるのです。過去の経験からも調査からすべてがわかることはほとんどありません。「そんなものは聞いたことない」の中にある「それが欲しかった」潜在ニーズを発見するうえで、覚えておいてほしいことのーつは、”常識にとらわれない”ということです。自社メイン商材や自社関連での広く社会全体を見据えた出来事の不満点をとにかく探ることが先決です。
常識の罠
人というものは、会社や業界の慣習にとらわれがちです。それも、会社や業界に長く居座っていたり、その道に長じているという自信にあふれでいるほど、凝り固まってしまうものです。私自身も長く飲料業界にいたので、外に出るとよくわかります。
改めて説明するまでもないかもしれませんが、「自分はそんなことはない」と軽んじるあまり、これを正しく認識するのは意外と困難なことなのです。常識とは別の視野を持つことができても、お客も、競合他社もまだ気づいていないところを狙う。「そうか、その手があったかと、みんなが唸るのがヒット商品であり、常識を気にしたり周囲の目を気にして現状を変えようとしないというのもいけません。なぜなら、潜在ニーズが既成概念の外側にあることも少なくないからです。
時代は常に変化している
時代は常に変化しています。いつのまにか裏づけのない思い込みが蔓延し、常識が神格化してしまっていたのです。常識を疑ってかかる姿勢を持ちましょう。アップルのスティーブ・ジョブズにとっても、常識は敵でした。専門職の道具だったパソコンを一般人の手に広げた非常に薄いノートPCも、小さなコンピュータを手のひらに乗せたスマートフォンも、「そんなことはできない」と常識を盾に反論するエンジニアたちとの戦いがあったと聞いています。ジョブズは本来の目的である人々の交流という大義を単なる調査で商品をつぶすわけにはいかなかったのです。
常識を乗り越えるには、肉体的にも精神的にも大きな苦難をもたらす場合があります。「勝てば官軍」で挑まなければ常識の壁を突破できないときもあるでしょう。しかし、最初の一歩を踏み出した人には、期待以上に大きな成果という輝かしい未来が待ち受けているものです。はたして本当にそうなのか?
不満や文句は宝の山は会議などでは出ないダメ
実際に、潜在ニーズをどのように発見すればいいか。それはずばり、文句を聞くことです。人がなぜ商品やサービスが欲しいのかといえば、それによって満たされたいのです。自分にとっていらないもの、邪魔なものを欲しいという人はそうはいません。生活必需品から衣食住関連商品、高価なブランド品まで、金額の大小にかかわらず人は商品やサービスを得ることで、”不足していた部分を満たしワクワクしたい”と願っています。満たされていない状態だと、「どうして満たせないのか」「早く満たしてほしい」というような心理状況へと陥ります。
満たされない思いは、ちょっとした拍子に口から出てしまうのです。「満たされず」不満文句というカタチで。これは商品開発の現場で使われる「課題」とは違います。つまり、文句というのは「満足」状態になるために不足しているものを示唆してくれるニーズそのものなのです。心の声であり、しかも文句のすばらしいところは、本人が自覚している不満だけでなく、無意識化にある不満、すなわち”潜在ニーズ”について発見されやすくなります。
満たされない心を埋める
人と話していて、次のような会話に出くわしたことはないでしょうか。「うーん、どうもねえ、何か好きになれないんだよね、最近のビール」そこで、「どういうところが?」と聞いてみれば、いろいろと返ってくるはずです。「うーん、味は別に悪くないんだけど~飲みにくいというか」「形状が悪いのかな?」「いや、そうじゃなくて~は気軽に飲めない感じで」突き詰めていくと、本当はもっと飲みたいのに価格が高くていまの小遣いでは満足いくほど購入できない、という話になったりします。本人としてはビールに対して何となく抱いていた”不満足感としか自覚していなかった”のですが、文句を吐き続けていくうちに、不満の元は”価格”にあることがわかりました。
そして、「味や品質、量は同じで、より手頃な価格のビール」が潜在的なニーズであることがわかったのです。「あのパッケージを見ると、何となくイヤな気持ちになる」「この味は生理的に受けつけない」「もっと、こう、スタイリッシュな感じがいい」そんな、本人でさえ確信を持っていないアバウトな文句の中に、潜在ニーズは隠されているのです。こうしたことは、ブレインストーミングでいくら考えて出そうとしても出ません。
商品やサービスは、”満たされない心を埋める”ためのピースであり、不満という課題の解決策なのです。したがって、文句こそが、潜在ニーズに辿り着くための道しるべです。そしてその道しるべは、たくさんあればあるほど正確なゴール地点を指し示してくれることになります。文句をたくさん集めます。
良い点より「文句」を言いたいのが人
実際に商品開発するために、たくさんの文句を集めたいときは、グループインタビューを行なうのが一番簡単で効果的です。最低でも6人ー組のグループインタビューを2組分行なえば、そこそこの数の文句を引き出せるはずです。知人を集めたりすれば、コスト的にも安上がりで済むでしょう。ただこの場合、形式は司会役のモデレーターと参加者が席を囲んで自由に話すグループインタビューですが、中身は一般的なそれとは異なることに注意してください。
通常だと、消費者の傾向を調べるためにあらかじめ用意した商品の概要書を見せて、「清涼飲料水を買うときにとくに重要視している点は?」や「ここにあるP、Q、Rのどれがいい?またその理由も教えて?」というような質問を投げかけることが多いと思います。ちなみに、ここでA、B、Cとしないのは、順序のバイアスを極力排除するためです。インタビューでは回答者の正直な本音を聞き出すこと、回答者にも無意識の感覚に近い状態で発言してもらうことが重要です。
しかしこれでは、顕在意識にある思いしか表に出てきません。しかも、こうしたグループインタビューに慣れていない消費者だと、多かれ少なかれ緊張してしまい、深く思いを巡らすことができずに奥行きのない話に終始してしまいがちです。反対に、慣れすぎている人だと課題解決策を提案しようとするあまりにコンサルタント的になり、本人の純粋な気持ちから逸脱してしまうことがあります。
それでは困るのです。”必要なのは文句”。間違っても「課題を出し合う」というような言葉を口にしたり、雰囲気を創りだしてはいけません。そのため、インタビューを開始する前に宣言してください。
潜在ニーズを探る秘訣
あえて、今日は『いいこと』をいわないでください。”文句”だけいってくださいと。人は公の場だと、文句のようなネガティブな言葉をあまり発さないように気をつけるものです。それがコミュニケーションのマナーであり、万一にも人間関係が悪化するリスクを避けるための配慮でしょう。しかし、ごく親しい間柄では、”文句の言い合いはこのうえなく楽しい”はずです。”文句は本音”であり、建前を取っ払って遠慮なしに歯に衣着せぬ物言いをするのは、本当に気持ちのよいことだからです。
文句だけを言い合うというルールを宣言すると、はじめは戸惑うかもしれませんが、人でも口火を切ると、あとは堰(せき)を切ったように文句が溢れ出てきます。「私はここの、こうした部分があまり気に入っていません」、「ああ、それ私も思ってました! このデザインはナシですよね」、「ですよね~」一度はじまって遠慮がいらないとわかると、記録するのが大変なくらい出てきます。
人は不思議なもので、そうして”仲間内で文句をいいあっているうちにエスカレート”し、より過激で、より真実をついていて、ぐうの音も出ない文句をいえた人が偉いというような雰囲気になります。
「どれだけヒドイことをいえるかな?」というような。私にも、もっと不満に感じているところがあったんじゃなかったつけ?と意識を心の内側に向けはじめ、”潜在ニーズに近い領域”まで潜って文句を見つけ出してくれます。
もし、メーカーが顧客に「何が売れると思うか?」消費者に直接聞いてみるといいというのは浅薄な考えですし、まったくもってナンセンスです。提供側が一般顧客へ単なる質問によって消費者に潜在ニーズを問い詰めようとしても無理ですし、そもそも自分の仕事を放棄しているようなものです。
数が出れば出るほど潜在ニーズ発見が近づく
ちなみにこの文句を言い合う手法は、商品開発以外でも役立ちます。たとえば、社内の課題解決のためのブレインストーミングでも、最初から前向きな提案をいおうとすると、なぜか紋切り型の、中身の薄い答えしか出てきません。「最近は残業の時間が増加している傾向にあり、個々で業務の効率化を推進すべきです」。しかし、可能な限り”ダイレクトな文句”のほうが響きます。
それに、「いいこと」よりもネガティブなことのほうがいいやすいという人も、少なくないものです。”打ち合わせは活況”を呈すことでしょう。ときにはすぐに解決しない文句が出るかもしれませんが、将来の解決を想定して、それまでストックしておけばいい話です。
それは社会にとって必要か?
自分のアイデアに自信を持つには、「その商品が社会にとって必要か?」という観点も非常に有効です。そうやって考えてみると、ロングセラーになり得るか、それとも一発ヒットだけで終わるかを想像できます。ヒットするというのは、企業に大きな利益を生み出すだけでなく、より多くの人の手に届き、使われるということ。人がモノを手にするのは、それが”心のどこかの部分”を満たすからであり、満ちて安定した状態になりたいがために購入するわけです。必要のないものは一時的に売れても長く売れ続けられません。
逆に、”なくても困らない”ものは手に入れる意味がなく、大きく売れ続けられることはありません。ただ、熱に浮かされる流行モノは例外かもしれません。あなたがこれから生み出そうとしている商品が、社会にとって必要とみなされるかどうか。数人であっても、それを手に入れて満足するだろう人の顔を思い描くことができたのなら、少なくともその人たちにとっては「必要なもの」であり、自信を持って開発を進めていくべきです。
ロングセラーヒットとするためには
その商品がロングセラーになるかどうかは、-つの法則にあてはめてみると想像しやすくなります。思い描いたその商品が、次のどの言葉に最も当てはまるか、想像してみてください。
「でいい」
「がいい」
「でないとダメ」
「がなくなると困る」
後ろになるにつれて必要性が高くなり、一番最後の「がなくなると困る」レベルに至ってロングセラーと呼ばれる商品となります。たとえば、シャワートイレを想像してみてください。利用したことのない人にとっては、「あればいいな」と考えるものかもしれませんが、一度使いはじめれば、その利便性や心地よきは不可欠なものと感じるはずです。「シャワートイレがなくなると困る!」という人はかなり多く、だからこそこれだけの市場規模を生み出しているのです。
ヒットの土台コンセプト商品開発をブレさせない「ブランド憲法」制定
BVC独自の”お助けシート”によって目指すべき道が見えてきたら、より具体的な戦略・戦術をまとめる工程へと移ります。この際、細かな戦術を考えていくのと並行して行なってほしいのが、その商品のプランディングであり、立ち位置の明確化です。
いまの世の中で商品をヒットさせるには、どのような商品であれ、ブランドとしての価値を備えることが前提となります。そもそも「ブランド」とは何か? 「ブランド(brand)」の語源は「焼く(burn)にあるとされ、畜午に焼きごてをあてて自分が飼育していることを証明したことが由来とされています。そこから転じて、その他大勢と明確に区分され、独自の存在であるものが、「ブランド」なのです。
そのため、ブランドを確立するにはそのもの自身の存在をはっきりと内外へと示し、ほかとの違いを証明しなくてはなりません。それには、次の要素を明確にしておきます。
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■ターゲット
どのような人に購入してもらいたいか?性別・年齢・職業・地域などの属性や、行動パターン・ライフスタイルなど。また、どのような影響や喜び、変化を与えるのか。
■戦場(どの商品やサービスなどと戦うか?)
どこで戦うのか?競合するサービスや製品群、ブランド・カテゴリーはどこか。消費者にどのようなモノ・サービスとしてとらえられたいか。
■差別化ポイント
何がどのように違うのか、なぜ買ってほしいのか?消費者にとって価値のある具体的利便性があるか。競合他社の商品で代替できない点は何か。
■根拠の提示
具体的に何がどうなのか?ほかの商品とどのように違うのか、差別化ポイントを簡潔に説明する。差別化ポイントの根拠を信憲性、かつ信頼性をもって説明する。
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これらはまさに、商品が誕生した経緯であり、存在理由そのものといえるでしょう。ですから、ちょっとした情勢の変化や担当者の変更で、簡単に変わってはならない商品の根幹です。マーケティングの世界では、「ポジショニングステートメント」と呼んでいます。そして、大事なのはそのポジショニングステートメントをきちっと文章として明確にすることです。私はそれを、「ブランド憲法」と名づけています。
ブランド憲法とは?
この商品は、~に向けています。ブランドXは、~市場カテゴリーに向けた商品。それは、~のように差別化されて、明確な~という違いがある。なぜならば、~は~という明確な根拠があるからです。
憲法は、国でいえば個人の権利や義務など国家の基礎となる法律、ありとあらゆる法の上位に立つ、すべての基本です。それと同じように、これから生み出していく商品のすべての規範となる憲法を制定しようというわけです。
商品やサービスのネーミング、機能性やデザインといったあらゆる属性は、すべてこのブランド憲法の下に位置することになります。たとえ革新技術によってすばらしい機能を搭載できそうだとわかっても、この憲法と矛盾している内容であれば、実現させてはいけません。それを無理に通そうとすると全体がちぐはぐになり、やがてブランドという「国」そのものが崩壊してしまうでしょう。
ブランド憲法のメリット
すばらしいアイデアがひらめくと、すぐに商品企画に落とし込みたくなります。アイデアだけを武器に商品化したものは、確かに、一時的に受け入れられ、大きな売上を記録するかもしれません。しかし、ブランド憲法を持たない商品は売れても単発で終わり、人々に愛される大ヒット商品やロングセラーには育たないものです。
なぜなら、おわかりのとおり、商品には「機能」、「デザイン」のほかにもさまざまな要素が内包され、制作には多くの人聞が携わりますが、憲法がなければみなが同じ方向を向くことができないからです。すべてが少しずつズレてしまった商品は、優れた機能を持っていたとしても消費者の心に違和感を与えてしまいます。告知手法、販促方法、陳列方法なども含め商品やサービスに係るどの部分が問題なのかをブランド憲法に照らして、今の時代に合っているか合っていないか?を常にチェックする必要がありそのためにもブランド憲法が必須となります。
理論バカになってはいけない
ブランディングに関連するそれぞれのパーツをつなぎ合わせた”マーケティングサークル”を完成させるには、さまざまなフレームワークを活用するのがよいと思います。具体的な活用についてはたくさんの書籍やウェブサイトなどで解説されていますからそちらに譲りますが、よくある強み、弱み、機会、脅威を考察する「SWOT分析」など状況に応じて最適なツールを使い分けるといいでしょう。ただ、注意していただきたいのは、知識だけを詰め込みすぎて理論ばかりが先行してしまうことです。それはマイナスをゼロにする効果があっても、プラスをさらにプラスとする効果は少ないからです。
経験の裏づけがない理論はどこか空虚で、そうした問題は実際の工程のどこかで表出し、ヒットへと進む道のりを阻害してしまうでしょう。何より経験がいかされない結論は自分で自信が持てませんから、本腰を入れて事にあたれませんし、そうした迷いはどこかでバレてしまうものです。
もっともらしいどんな理論よりも、自分自身で培った自己流のフレームワークを磨き上げられれば、それを活用するに越したことはありません。”商品開発はチームワーク”で行ないますから、ほかの誰からも理解できないほどの自己流では困りますが、どれほどマイナーなフレームワークでも、自分の血肉になったものほど頼りになるものはありません。
鵜呑みの危険性、決してやらぬこと
インターネットで検索し、そこに書かれていた文章を読むだけで知った気になってしまうのも問題です。そこにあるのもーつの情報ですが、その道のプロから話を聞いたり実物を直接見に行ったりするなど、行動によって経験を重ねることが大切です。このひと手聞が、血となり肉となるのです。感性に頼ることをバカにする人もいますが、人間の心は単純な計算では割り出せません。だからこそおもしろいのですが、理論による計算だけでは足りない部分を補う必要があります。
その道のプロがいうことでも、鵜呑みにしないように注意してください。たとえば「SNSを使った販促はこうするのがいいんです」という「プロ」の話を聞いて、その論理をしっかり吟味せずに「ああそうなの、じゃあそれでお願い」と投げてしまうと、思わぬ失敗を招いてしまうものです。疑ってかかる大切さを肌身で感じます。その道のプロがいうことでも、”鵜呑みにしない”ように注意してください。たとえば「SNSを使った販促はこうするのがいいんです」という「プロ」の話を聞いて、その論理をしっかり吟味せずに「ああそうなの、じゃあそれでお願い」と投げてしまうと、思わぬ失敗を招いてしまうものです。疑ってかかる大切さを肌身で感じます。
りんごは木から落ちるのに、月はなぜ落ちてこないのかを考えたニュートン。太陽ではなく、その周りを地球が回っていると考えたガリレオ。私たちには、彼らのように既成概念を壊す発想力が求められるのです。理屈だけで世の中は動きません。解説しているこの理論やテクニックについても、ぜひ疑ってかかってください。また、読んだだけで理解した気にならないでください。実践で活用し、その効力のほどをご自身で体感してみてもらえれば、私の話が本当かそうでないのか、納得いただけると思います。
みんなが、なるほど「唸る」企画がヒットにつながる
企画書・プレゼン資料は「結論」から考える基本戦略が固まれば、企画書に仕上げます。これまでの作業で見えてきた商品の全容を、わかりやすく、かつ説得力を持って構成するのがポイントです。投資利益率(ROI)などお金の数字も大切です。3年または5年先の中期予想を練り、商品化するにふさわしいプランであることを説得させる材料のーっとします。スタートダッシュをかける初年度は赤字になることも少なくありませんが、その後の伸びを想像させることで、商品化実現の一歩を踏み出しやすくさせます。
ヒットする企画は後ろから書くと証明できる
企画書を作成するにあたって大事なのは、仮説を立てて結論から書きはじめるということです。「結論(数値)←説明(メリット)←結論(スケジュール)」というように、最も伝えたいことである結論を最初と最後に置いて、説明部分を聞に”サンドイッチ”させるのがベストです。このためには、まず結論を明確にして、本論である説明部分でメリットなど掲載すべき内容を考えていく必要があります。後ろから書き進めていく、という言い方もできるでしょう。結論がはっきりしないと、上司や関係者は「で、結局、いいたいことは何?」となってしまいます。私は人の企画書をたくさん見てきましたが、結論がはっきりしていない企画書の多さには驚かされたものです。
ある結論に至るには、数多くのデータや現象を考察した末に、これから開発しようとする商品の正当性や有効性を立証させる流れが基本です。そのため、文句をくっつけて見出した潜在ニーズやお助けシートで理解したやるべきこと、市場動向や各種リサーチ情報など、これまで進めてきたことを順々に記入していけばいいように思いますが、それだけでは魅力的な企画書が生まれにくいのです。
収集した情報の中には、今回提案したい結論とは結びつかないノイズのようなものも含まれています。たとえば文句を調べるために収集した情報のうち、潜在ニーズを導き出したのはごく一部です。企画書は頭から読み進めているわけですから、精査した上司やバイヤーなどがそこで別の潜在ニーズを読み取ってしまったら、企画の提案が頭に入ってこないかもしれません。
結論から書き進めていけば、「訴えたい結論の説得力を増すためにはどうすればいいか?」という思考になります。文句のリサーチ結果を掲載する箇所では、「らしく」するため本論とあまり関係ない文句の例を多少散らしつつも、今回の結果に直接関係する文句を中心に据えることができます。そうすると、ゴール地点にある結論に関係することしか登場してきませんので、説得力があります。企画書は関係者から信任を得るための書類であり、学術論文ではありません。
客観性は必要ですが、教科書どおりに書かなくてはいけない決まりはありません。むしろ、「これはヒットする」と確信した商品を生み出すための説明書、または言い訳だと私は思っています。極論をいえば、前述したように費用をかけた市場調査にも絶対はありませんから、長々と掲載する必要性はないのです。
ヒットをブーストさせる仕組み
爆発するブレイクポイントがある。いまさらですが、そもそもヒット商品とは何でしょうか?その定義は難しいところですが、たとえば飲料の場合、発売した年を乗り切って翌年も売られている商品はヒットしていると呼べるでしょう。季節性商品の場合はもっと大きな瞬間風速が必要となるでしょう。また、日経ヒット商品番付に選出されるなど、対外的に「ヒットした」とみなされることもありでしょう。私はこれまでの経験から、どうにか社会に70%の人に受け入れられると、そこから一気にブレイクできると考えています。日本には周りの空気を読む風土がありますので、たとえばSNSアプリなどでも70%もの人が愛用するレベルの商品となると、残りの人も気になって仕方なく購入に走るからです。いわゆるフォロワー追従です。
Tシャツ理論ブランディングチェック
ある商品やブランドが成功しているか、簡単に確認できる方法があります。商品やブランドのロゴが入ったTシャツを着て街を歩けるかどうか、想像してみるのです。価値や憧れを感じているものであれば問題なく着用できますし、ものによっては誇らしくもあるでしょう。見た目のデザイン的に遼巡するものもあるかもしれませんが、それでも強いポジティブなイメージを持っていれば「ダサかっこいいかも」として着ることができるはずです。反対に、価値も憧れもないものなら、絶対に身につけたくないと考えるはずです。見た目がいかにかっこよくても、「何でこの商品の広告塔にならないといけないのか」と反発するでしょう。
”ロゴ入りTシャツ”に置き換えると、その商品やブランドを情緒の面でどうとらえているのかを如実に判断できます。Tシャツでなく、ロゴ入りの紙袋でもいいかもしれません。なかには、「昔は全然OKだったけど、いまはイヤだ」というものもあるかもしれません。加齢によって消費者の好みが変遷したのかもしれませんし、商品やブランドのイメージが悪化しているのかもしれません。後者の場合は早急な立て直しが必要になります。例えば”スターバックスの紙袋”ではどうでしょうか?
ヒッ卜するものに共通していること
どうすればヒットするのか。また、ヒットする商品にはどのような特徴があるのか紹介します。商品特性としてどのようなポイントがあるのか、-つめは、「メリットの多さ」。ヒットする商品には、それだけ消費者が魅力を感じるメリットがあるわけですが、たくさんあればあるほどいいものです。
私はよく「一石四鳥を目指せ」といいます。たとえば、ダイエット食品の『プロテインダイエット』には「ダイエットできる」という主目的だけでなく、「それーつ1食になってラク」「ー食400円程度で安い」「しっかり栄養も摂れる」といったたくさんのメリットが消費者を惹きつけました。実際ダイエット利用が主だと思いますが、そのほかにも「食事の準備が省ける」「食費を抑えられる」「栄養バランスを考えなくても済む」と、この商品を選ぶ理由があり、購買を後押ししてくれます。ダイエットが完遂したあとも、引き続き購入してくれる可能性も出てきます。
ポイントは、なるべくわかりやすく、たくさんメリットを提示すること。そうして「何だかいいものなんだな」と思ってもらえると、成功です。2つめは、「はじめて」。メリットをたくさん詰め込むにしても、これが「はじめて」のことだとなおよしです。「ただーつの掃除機」をうたったダイソンの掃除機のように、「世界初」「業界初」といった文言に人は惹かれますし、イノベーティプな技術ではない「今年初」「ブランド初」といったものでも、関心を高めるフックになります。
それも、ーつの「はじめて」ではなく2つも3つもくっつくと、それが2乗3乗のパワーになります。消費者だけでなく、メディアも飛びついてくるほどです。はじめて尽くしの商品は輝かしい魅力を放つ反面、過去の例からどのような利益がもたらされるのかを想像しにくく、また一歩横道に逸れると大失敗してしまうリスクもあるのですが、ハマったときには大きなヒットを呼び起こします。リスクを怖がる人も多いのですが、ぜひ勇気を持って挑戦してほしいと思います。
30%差別化ルール
他社製品より30%売上の低迷が大きくなると、ちょっとしたテコ入れでは済まなくなり、リニューアルが必要になることもあります。リニューアルとして大きなブーストをかけたいのなら、30以上の変化を目指しましょう。私はこれを「リニューアルの30%ルール」と呼んでいます。
人間というものは、たいてい初%以上の変化があってはじめて大きな刺激を受けるものです。1,000円の商品が10%引きの900円になれば、そのときは得したと思いますが、記憶には残りません。しかしこれが30%引きの700円になると、「これは安い」と心に響き、その衝撃が深く刻まれます。同じ価格で容量が叩%増量しても、「ふーん」としか思わないでしょう。しかし30%増量になると見た目の変化も大きく感じ、お得感も高まります。ですから、30%未満の変更は、やるだけ損をすると思ってください。それだけ身銭を切っても、労力をかけても、得るものはほとんどありません。
リニューアルの難しさ
ただ、私はリニューアル自体に少々懐疑的です。なぜなら費用対効果が悪いからです。リニューアルで時間や費用のコストをかけるなら、潜在ニーズを1から探るほうがいい場合も少なくありません。世界に名だたる大企業でも、毎年毎年に継続して売れている商品を持っているところはわずかです。商品にはどうしてもヒットした時代のイメージがつきまとうもので、次々に生まれる新商品と比べ、現代の潜在ニーズをとらえるだけでなく、過去からの決別という手聞が余計にかかります。社名を冠した商品など、会社と運命共同体となったものなら話は別ですが、資源は新しいアイデアに投入したほうがいい場合も多いのです。どうしても売れないとわかったら、深追いしてはいけません。
下手にリニューアルすることなく、あとはロングテールに期待して、売れるだけ売れるよう祈りましょう。気合を入れて手がけた商品ほどどうにかしたくなるものですが、時期が悪かったとあきらめ、次の商品へと頭を切り替えましょう。
あとがき
ここまで、お読みいただきありがとうございます。ぜひ、ご自身のブランド化や商品サービスをヒットさせたいと思っている方は実際に試して参考にしてください。きっと成功が待っています。
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