本当は面白い物理の授業 018 位置エネルギーその2
今回も「位置エネルギー」です。
017回目の授業は「重力による位置エネルギー」でした。
今回の授業では「弾性力による位置エネルギー」です。
弾性力とは
「弾性力」とは何でしょう?
それは、物体に力を加えると変形し、それが元の形に戻ろうとする時に発生する力です。
代表的なものとして「ばね」があります。
様々な製品で「ばね」の「弾性力」は使われています。
例えば、マウンテンバイクや自動車のサスペンションです。
もっと身近なものとしては、ボールペンにも「バネ」が使用されています。
ボールペンを分解してみましょう。
小さな「バネ」が入っていると思います。
この様な形の「ばね」を「圧縮ばね」と言います。
一方、「フック(引っ掛ける部分)」がある「ばね」を「引張りばね」と言います。高校物理の計算では特に使い分けないため、気にする必要はありません。
「ばね」を指で押してみましょう。反対方向押し返す力が発生します。また、「ばね」を引っ張りましょう。反対方向に引っ張り返されます。これが弾性力です。
ばね定数とは
「ばね」は変形した量に比例した力を発生させます。そして、その変形量と力の増加量は一定です。
例えば、「ばね」を10mm押し込んだ時に押し返す力が1Nだった場合、20mm押し込むと2N、30mm押し込むと3Nの力が発生します。
「ばね」に負荷を与えた場合、その「負荷」を「ばねの変形量」で割った数値を「ばね定数」と言います。
そして、上記のように、「負荷」と「ばねの変形量」は正比例の関係にあります。
それでは、「ばね定数」の計算です。
「ばね定数」=「ばねへの負荷」/「バネの変形量」
また、「ばね定数」の記号は「k」を使います。
「ばね」は負荷に応じて、同じ大きさの力を逆方向に発生させます。
下図のように、「ばね」を「F(N)」の力で引っ張った場合、「ばね」も「F(N)」の力で逆方向に引っ張り返していると言うことです。
よって、
「ばねへの負荷」=「ばねが発生する力」
「ばね定数」=「ばねが発生する力」/「ばねの変形量」
よって、これを単位に置き換えると、
「ばね定数の単位」=「N」/「m」= 「N/m」
そして、弾性力は「ばね」が「縮む方向」にも「伸びる方向」にも同じ様に働きます。
つまり、
同じ「ばね」で有れば「縮む方向」にも「伸びる方向」にも「ばね定数」は一定です。
よって、「ばねが発生する力:F」は
F = k・x
と、表すことができます。
高校物理では考慮する必要はありませんが、実際の「ばね」は変形量に限界があります。一定量以上の変形を発生させると、「ばね」は変形したまま元の形状には戻りません。
ばね定数を決めるもの
「ばね定数」は何から決まるのでしょう?
この知識は、高校物理では必要ありません。ただし「ばね定数」のイメージを理解する手助けになります。
「ばね定数」が大きいということは、「強いばね」ということです。
「強いばね」とは、「小さな伸び」で「大きな力」を発生させる「ばね」と考えてください。
「ばね定数」の特性は、以下の様な項目で決まります。
・線径(ワイヤーの直径)
・コイル平均径
・コイルの巻数
「線径」とは「ばねの素材自体の直径(ワイヤーの直径)」です。「線径」が太くなれば、「ばね定数」も大きくなります。
「コイル平均径」とは「くるくる巻いたコイル自体の直径」です。「コイル平均径」小さくすると、「ばね定数」は大きくなります。
「コイル巻数」とは、「ワイヤーを巻いている回数」です。「コイル巻数」を少なくすると、「ばね定数」が大きくなります。
上記は説明を簡略化しているため、やや正確性にかけますが、イメージはつかんでもらえると思います。
弾性力による位置エネルギー
「ばね」の「弾性力による位置エネルギー」の計算です。
『「自然長のばね」に「力」を加えて「仕事」をする事により、その「仕事」が「ばね」の「弾性力による位置エネルギー」に変換された』と考えます。
つまり、「ばね」を「x(m)」伸ばすまでの「仕事」の総和です。
そして、「仕事」とは「力」に「力を加えた距離」をかけたものでした。
よって、下図のような三角形の面積(斜線部)が「ばねにした仕事」になります。これが、「弾性力による位置エネルギー」に相当します。
よって、
U = 1/2・k・x^2
となります。
上記の式から単位も導き出しましょう。
「位置エネルギーの単位」
=「N/m」・「m^2」
=「N・m」
=「J」
当然ですが、この単位も「仕事」と同じ「J」になりましたね。