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本当は面白い物理の授業 012 摩擦力とは?

今回の授業は「摩擦力」です。
高校物理で習いますが、実は解明されてないことが多く残る分野です。

「摩擦力」は、私達が普段使っている製品にも密接に関係しています。

そして、
機能上「プラス側に働く」場合と「マイナス側に働く」場合があります。

まずは、「摩擦力がプラス側に働く事例」です。

私達が「自転車」のペダルをこぐことで、前に進むことができるのは、「タイヤ」と「地面」の間に発生する「摩擦力」のおかげです。

「タイヤ」は、「ゴム」を主な材料として作製されています。「ゴム」は「摩擦力」が発生し易い代表的な素材です。

よって、「タイヤ」と「地面」の間に大きな摩擦力が発生します。これにより、「タイヤ」が滑ることなく、前に進むことが出来ます。


次に「摩擦力がマイナス側に働く事例」です。

例えば、
自転車の「チェーン」です。
「チェーン」は「歯車」と噛み合うことにより、「ペダルをこぐ力」を「タイヤ」に伝えています。

しかし、「チェーン」が「歯車」に噛み合っている時、それらの間に「摩擦力」が発生します。

「グリース(油)」が切れているチェーンの自転車のペダルをこぐと、非常に重く感じます。これは、「チェーン」と「歯車」の間の「摩擦力」が増加しているからです。

「グリース」は、「摩擦力」を低減させて「チェーン」と「歯車」の「摩耗」を防止します。


この様に、「自転車」だけをとってみても、「摩擦力」は「プラス」にも「マイナス」にも働いています。
駆動系を持っている製品で、摩擦力の影響を受けない製品は、皆無といっても過言ではありません。
「摩擦力」は機械系エンジニアにとっては、非常に重要な学問です。


それでは、もう少し詳細に移りましょう。

まず、「摩擦力」には「静止摩擦力」と「動摩擦力」が存在します。

具体的な例を挙げて説明します。

分厚い「辞書」を用意してください。表紙が硬めで重い本で有れば、何でも問題ありません。

次のステップを意識して実験しましょう。
①「辞書」を「机」の上に置きます。
②指を使い「小さな力」で水平に「辞書」を押します。
 「辞書」は動きません。
③もう少し力を上げます。まだ「辞書」は動きません。
④もっと力を上げると「辞書」が動き始めます。
⑤そのまま「辞書」を押し続けます。

各ステップの状態を以下に説明します。

①の状態では、摩擦力は発生していません。
「押す力」が無いと、「摩擦力」も発生しないのです。
もし、「押す力」が無いにも関わらず、「摩擦力」が発生する様なことがあれば、「摩擦力」が発生する方向に「辞書」が動くことになってしまいます。その様な現象が起こることはありません。


②の状態で、初めて摩擦力が発生します。「辞書」が動いていないということは、「押す力」と「摩擦力」が釣り合っていることになります。
また、「物体」が「机」に対して「停止」している時の「摩擦力」を「静止摩擦力」と言います。

「押す力」=「静止摩擦力」


③「押す力」を上げましたが、まだ「辞書」は動いていません。「押す力」を上げた分、「静止摩擦力」も増えているからです。


④さらに「押す力」を上げると、「辞書」が動き始めました。
「辞書」が動き出す直前の「静止摩擦力」が最大値になります。これを「最大摩擦力」と呼びます。
そして、「押す力」が「最大摩擦力」を超えた瞬間に「辞書」は動き出します。
また「辞書」が動き始めてからの「摩擦力」を「動摩擦力」と呼びます。


⑤「辞書」を④の状態から、止めずに一定の速度を保って押し続けます。
一度「辞書」が動き出すと、「辞書」が動き出す直前よりも「小さな力」でおせるはずです。

この現象から
「動摩擦力」<「最大摩擦力」
になる事が言えます。

(参考程度にですが、私の経験上「最大摩擦力」から「動摩擦力」に切り替わることにより2割程度「摩擦力」が減少する傾向があります。)

「摩擦力」の概念は、理解いただけたでしょうか。

次回は、実際に計算してみます。

「本当は面白い物理の授業013」へ続く

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