学習内容の単純化と思考能力の低下
学校で勉強する内容は、「単純化」されていることがほとんどです。
ここでの、「単純化」とは、「複数の要素から、一つの要素を取り出している」ことを意味しています。
それにより、単体の現象としては、理解しやすくなっていますが、実際の現象と差が生じます。
私が小学生の時に疑問を持った事例をあげてみます。
「りんごは、大きい、小さい、甘い、甘くない、赤色、緑色、色々あるのに、どうして、全部1個のりんごとして数えるの?」
「物差しで長さを測れるっていうけど、目盛より小さいものは、どうやって測るの?そもそも、長さを正確に測ることなんてできるの?」
「どうして、直径にπをかけると円周になるの?π=3.141592・・・て、何でどこまでも続くの?」
「天秤で重さを測る時、分銅が重さの基準になっているけど、その分銅の重さはどうやって測ったの?そもそも重さはどこから決まってるの?」
「車に乗り時速40km/hで2時間移動した時の距離の答えは80km。でも、いきなり0km/sから40km/sの速度で走り出せないのに、計算結果はあってるの?」
何故、この様な疑問を感じるのでしょう?
それは、「自分が日常生活から感じとる事」と「学校で習う授業の内容」にギャップがあるからです。
そして、
このギャップは「単純化」されることにより発生しています。「単純化」することで、単体の現象を理解しやすくするメリットはあります。
それでは、この「単純化」の問題は何でしょう?
それは、誰もが少なからず、上記の様な疑問を感じているにも関わらず、多くの人は、ある時点で疑問に感じることを止めてしまうことです。
ある人は小学生、ある人は中学生、または高校生かもしれません。
何故なら、この様な疑問を感じ、その答え探しに時間を使っても、テストで点がとてないからです。
そして、「単純化」されていることを気にしなくなってしまいます。
「単純化」された内容は、簡単に計算できるます。それはパソコンが得意としている範囲です。どんなに素早く「単純化された問題」を解けるようになっても、パソコンにはかないません。
それよりも、時間をかけて、「複雑な現象を紐解き、複数の単純された現象に落とし込んでいくこと」が重要です。実際にエンジニアのような仕事をはじめると、その様な能力が必要とされます。
もしかすると、AIの発達により、様々な思考自体もパソコン上で手軽に行えるようになるかもしれません。しかし、そのアルゴリズムを作るのは人間です。
やはり、どの仕事においても、当面の間「思考すること」は必要とされるでしょう。
そして、学生の間に、「思考する訓練の場を多く持つこと」が必要です。
そして、本来物理の授業は、思考する訓練に最適の学習です。