『スナーク狩り』Bで始まる名前の理由
Lewis Carrollの長編物語詩『スナーク狩り』(The Hunting of the Snark, 1876)は、物語自体が1つの謎々になっています。
この物語には名前がBで始まる乗組員が9人と1匹登場しますが、それは彼らがビリヤードのボールだからなのです。
『スナーク狩り』は、ポケットビリヤードのナインボールのお話だったんですね。
Snarkにはsnookerの意味も含まれているのかも知れません。
「白紙の地図」ビリヤード台を上から見た図、「時々後ろに進む船」はビリヤードのキューですね。
乗組員は以下の9人と1匹。
Bellman
Boots
A maker of Bonnets and Hoods
Barrister
Broker
Billiard-marker
Banker
Beaver
Baker
Butcher
数字の書かれた的玉が9個、白い手玉が1個。
ビリヤードマーカー(得点係)もいるし、ball, manに似た綴りのbellmanもいます。
ヘンリー・ホリデイの丸っこい絵柄のキャラも、ボールを表しているのかも知れません。
『スナーク狩り』にはキャロル作品に頻繁に登場する42や21に加え「9+1」も何度か登場しています。
9人と1匹、挿絵9枚と地図1枚、など。
ブッチャーが黄色いキッドの手袋と飾り襟→⑨番
バンカーが白と黒→⑧番
lace編みをしているビーバーは、もちろんAliceですね。
進行
第1章、第4章、第8章がゲーム進行の大枠を表しています。
第1章のLandingは、バンキング(先攻後攻の決定)の場面。
挿絵でもベルマンがバンカーを掴んで運んでいますよね。
第4章のHuntingはブレイクショット(ラックで組んだ的玉を打つ第1打)の場面。
第8章のVanishingはスクラッチ(手玉をポケットに落とすファウル)の場面。
ベイカーがおどけたように手を振ってみせる仕草は、手玉が今にもポケットに落ちそうになっている状態を思わせます。
"Booー"という声はギャラリーのブーイングという意味も重ねられているのかも。
「指貫と注意で・・・微笑と石鹸で・・・」
They sought it with thimbles, they sought it with care,
They pursued it with forks and hope;
They threatened its life with a railway-share;
They charmed it with smiles and soap.
with thimblesはキューを構える手付き、
forksはメカニカル・ブリッジ、
soapはキューに付けるチョーク、など。
ラバ・ダブ・ダブの話
『スナーク狩り』には「マザーグースの忘れられた謎々④」のRub-a-dub-dubの詩も関係しています。
the butcher, the baker, the bonnnet makerといえば、Rub-a-dub-dubのthe butcher, the baker, the candlestick makerを連想させます。
ボンネットは女性が頭に被る物なので、製造するのは帽子屋です。
従って「ボンネット屋=帽子屋」ということになります。
ブッチャー、ベイカー、ハッターの3人は、全員作者の分身と言える位置付けのキャラ。
さらに、Rub-a-dub-dubの謎々の答が'pudding'であったことも、bakerがbride cakeしか作れないことと合致します。
お知らせ
なお、今回から私の記事には「#ネタバレ」を付けることにしました。
「未解決パズルの回答の仮説」をネタバレと呼ぶのか、線引きはどうするのかという基準は人それぞれなのかもしれませんが、不快に感じる人が1人でもいる可能性がある以上、全てに付けるのが妥当と判断しました。
特に内容が変わるわけではありませんので、今まで読んで下さった皆様、どうか引き続きよろしくお願い致します。
2020年10月6日 筆者
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?