あなぐらの種

雨宮慧ひとり芝居
『あなぐら』


さてと


先日引っ越した。
底冷えのひどい、薄暗い、狭い、部屋であった。

住んでいるときには気にしていなかったことが、
離れてみると異様に思えてしまう。

鍵のかからない窓
蟻の隊列が組まれる壁際
外より寒い室内
右から二つ目が点かない蛍光灯
外より暑い室内
水の流れない風呂

私は長い時間、それなりに偏った環境にいたのではないだろうか?

期間にして10年、暮らした部屋だった。
いや部屋というのも烏滸がましいかもしれない。

せいぜいが、『あなぐら』だ。



ここまで思考を巡らせてタイトルが決まる。

次に書きたいものは『あなぐら』だ。


タイトルが決まったらパーツを揃えよう。

あなぐらといえば

ドワーフかもしれない。
宝石にまつわる話はきっと美しくて冷たい。
何かを作り出すイメージはどこからきているんだっけ?

実はゴブリンかもしれない。
似通っているようで意外と違うこの二つは面白いかも。
ただその場合ゴブリンスレイヤーに気をつけないといけない。鏖殺されてしまう。

アナグラといえば。

尊敬する小林賢太郎氏の作品で『アナグラムの穴』というのがある。
語感が気持ちいいが、どうしても寄ってしまうのでこのネタは避けなければ。


穴蔵といえば。

コトバンクより。
地下室。また、寒地で冬季藁仕事などする、地下に掘った仕事場。

なるほど仕事場なのか。
イメージと合致する。

穴蔵ではチマチマとモノを作っていなければ。
それは私の10年と似てきてくれる。


あなぐらといえば。

1人だ。

穴蔵では孤独でいなければならない。
例えばそこで人の温もりなんてものに触れてしまったら二度と外には行けなくなるから。

さてと

必要なパーツにはまだ足りないけれど、
誰がそこにいるかは見えてきそうだ。

例えば


そこに蝉がいたらどうする?

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