子供を帰国子女にすべく意気込んでいる大人たちへ
とある友人のY氏(3歳の子持ちサラリーマン)が先日、私にこんな話をしてきました。
「俺、息子をケヴィンみたいにしたくてさ、会社でちょっと強引に海外赴任できるように調整してるんだよね」
彼の話を聞いていると色々とモノ申したい気持ちになり、その日彼に伝えたことをこれから綴ります。
※「帰国子女」と言っても世界各国様々な国での滞在経験をさします。しかし本記事では分かりやすく、便宜上「アメリカ」とさせていただきます、ご了承ください。
私、ケヴィンとは
そもそも私、ケヴィンが帰国子女云々を語るに足りるのか?という点について。
私は父親の仕事の都合で家族がアメリカ在住中に生まれ、5歳の時に日本に帰国。
小学校を日本で過ごしたのち、小学生6年生時から高校1年の終わりまでまたアメリカで過ごしました。
高校2年からずっと日本です。
ということでバリバリの帰国子女です。
世の帰国子女に対するイメージにモノ申したい
そもそも私は世の帰国子女に対するイメージに対して残念に思う部分があります。
私自身、よく言われたことですが「帰国子女は英語ができていいよね」、「帰国子女は大学受験に有利でいいよね」など。
帰国子女は苦労する
「まだ小さい子供のうちは英語を身に着けやすい」とよく言われますが、それはその通りです。しかし、2つ重要な点が抜けています。
それは
・「年齢が小さいほど日本語が疎かになる」
・「身に付きやすいほど忘れやすい」
ということ。
「年齢が小さいほど日本語が疎かになる」
小学低学年から英語圏で過ごすとビックリするくらい発音がキレイでペラペラな英語が喋れるでしょう。
しかし英語がペラペラなほど、日本語が怪しくなります。
例えば小学3,4年生なのに動物を「1個、2個」と数えたり、物事を日本語で言えなかったり。
そのまま人生を英語圏で過ごすのであれば心配する必要はありませんが、いずれ日本に帰国し、日本で人生を歩むのであれば「日本人なのに日本語が変」という子供はとても苦労します。
「身に付きやすいほど忘れやすい」
小学3,4年生あたりまでは言語の習得力が高く、友達と遊んでいるうちに英語を覚えるのであまり苦労せずに英語を扱えるようになります。
しかし、その反面小さい子供は英語を忘れるのも早いです。
仮に小学1年生でアメリカに住み始めて小学6年生で日本に帰った場合、英語を忘れる可能性が高いですし、日本語が疎かになっている可能性があります。
一方で仮に小学1年生から中学3年まで9年間アメリカで過ごした場合。
さすがに英語を忘れることは無いと思いますが、相当アメリカナイズドされているので日本の学校に通う時に苦労する可能性が高いです。
日本の中高の独特な文化・風習
日本人自身はあまり気にならないかもしれませんが、私からすると日本の中高は独特な難しい空気感があります。
最近はあまり聞かなくなりましたが、ひと昔前によく言われていた「空気を読め」というやつです。
友達の中でも微妙な序列関係があったり、付き合いだったり、多感な年ごろの子たち特有の難しい部分があります。
だからとにかく大変だし苦労する
自分が帰国子女ではない大人からすると「ものすごく良い環境を用意してあげた」と誇らしいかもしれませんが、子供はとても苦労します。
子供が小さいうちにアメリカに行けば、英語を習得するのは楽かもしれませんが、問題はその後です。
日本にもどった後、中学なり高校から日本での生活を歩む時、英語力が高いほどアメリカ慣れしているので日本での生活に慣れるのが大変です。
一方で中学低学年あるいは小学生のうちに日本に戻ってくる場合、子供は苦労しないかもしれませんが、英語力の維持が難しくなります。
苦労だけして英語を習得できない人も多くいる
苦労しても、英語を習得・維持できればまだ良い方です。
中には英語を身に着けられない人たちも多くいます。
というのも子供は大きくになるにつれて英語を身に着けるハードルが高くなります。
私の回りで小学6年以降アメリカに暮らし始めた人で英語をまともに習得できた人はほんの一握りです。
皆、日本語が通じないアメリカでの生活に苦労しつづけ、父の仕事の折り合いがつき日本に帰ることを心待ちにしていました。
中にはうまくいく子もいる
ここまでは帰国子女の実情を伝えるために、うまくいかない例を紹介しました。
しかし、中には羨ましいくらい順調な子もいます。
例えば友達のT君。
彼は小学1,2年生からアメリカに住み始めて、中学1,2年の時に日本に帰国しました。
彼は英語の読み書き、そして会話が完璧な上、不思議なことに日本語もまったく問題ありませんでした。
日本に帰国した後も英語力は維持でき、某KO大学に入学しました。
(帰国してから大学受験までの期間が長かったので、帰国子女入試の対象外でしたが一般受験で合格しました、優秀ですね・・・)
他にも数人、このようにうまく英語力と日本語力を維持していった人たちがいますが、時期的には上記の通り、小学低学年で渡米、そして中学1,2年のうちに帰国というのが黄金比な気がします。
このスケジュールで子供をアメリカで育てることができれば理想的ですが、渡米の本来の目的は仕事ですから調整は難しいかもしれません。
しかし、もしコントロールできるなら上記の期間がお勧めです。
家庭の取り組みと本人の努力が必要
黄金比のタイミングで子供を海外で育てられない場合、家庭での取り組みと本人の努力がとても大切になってきます。
まずは親の努力。
アメリカでの生活が長くなると親も英単語を使うこと慣れてきます。
子供の送り迎えを「ピックアップしにいく」なんて言ったりするのですが、それは子供にも影響します。
日本語力の維持のため家庭では正しい日本語を教えることが大切です。
そして子供の努力ですが子供には現地の友達をたくさん作ってもらい、現地の友達と毎日遊んでもらうのが理想的です。(英語力の観点からは)
しかし子供の渡米のタイミングが遅れるにつれて日本人と時間を過ごすことを好む傾向が強くなります。
そこで本人が現地の友達を多く作る努力をしてくれれば良いのですが、もし子供が抵抗を感じるなら「せっかくアメリカにいるんだからアメリカ人の友達作りなよ」とは絶対に言わないでください。
それは子供が言われると一番辛いことです、子供だってわかっています、アメリカ人の友達がいっぱいいる方がかっこいいし、自分だって英語ペラペラになりたいけど・・・と。
私には野球と音楽があった
私もどちらかというと日本人の友達と遊ぶ機会が多かったのですが、それでもアメリカ人との接点を持てたのは今でも趣味としている野球と音楽があったからです。
野球は親の協力もあって平日から毎日活動するチームに所属して、シーズン中はほぼ毎日アメリカ人と一緒に過ごして野球をしていました。また学校でも音楽好きな友達を作ることができました。
仮に野球も音楽もなければ私はアメリカ人たちとの接点を持つことはできなかったでしょう。
野球では夏になると遠征に出かけて泊りがけでみんなと一緒に過ごしたのは今でも良い思い出です。
色々と辛いことも多かったですが、タイムマシンで戻れるなら野球仲間たちとの時間をもう一度過ごしたいくらいです。
まとめ①
「帰国子女」に関する子供達の苦労があまり知られていないので、今回はその説明に多くを費やしました。
大人には是非、子供が辛い思いをする可能性があるという点を十二分に考えた上で、子供の帰国子女化プランを練って頂ければと思います。
冒頭で触れた友人のY氏は自分で海外赴任のタイミングを調整できるようでしたが、恐らくほとんどの海外赴任者は子供の都合云々で赴任のタイミングをコントロールできないでしょう。
結局のところ、会社から行けと言われたタイミングで赴任し、帰れと言われたら帰るしかないと思います。
なのでこの記事で説明したことを聞いても役に立たないかもしれませんが、お子さんが自我をしっかりもつ小学高学年からの渡米なのであれば、お子さんのケアをしっかりとしてあげてください。
アメリカでの生活がうまくいかなかった某友人はアメリカで過ごした経験を「青春が奪われた」と表現していましたし、大人からすると絶好のチャンスでも子供からするとまったくありがたくない場合もあります。
逆に小学低学年、あるいはもっと小さい頃からの渡米であれば英語の習得は楽な反面、日本に帰国する際、苦労する可能性大なので、お子さんの日本人としての面をしっかりと面倒見てあげることが大切です。
好き勝手に色々と綴らせて頂きましたが、このあたりで締めさせて頂きます。
この記事が帰国子女に関係するどなたかの役に立てば幸いです!