トルコ式ゲットアップ入門
今回はそれってどこに効いてるの?の代表的な種目である『トルコ式ゲットアップ(以下ゲットアップ)』について解説していきたいと思います。
この記事でのゲットアップは、動作の質を追求したハードスタイルと呼ばれる手法(空手の型稽古のトレーニング版のような形)を主体としてご紹介していきます。
1、トルコ式ゲットアップとは?
トルコ式ゲットアップは多くの能力を発達させることができる非常に優れた種目です。
アメリカで活躍するコーチのBandon Hetzlerは、ゲットアップの効果について下記のようにまとめています。
翻訳すると、
交差測性を促進する(右脳と左脳を連携させる)
上半身の安定性を促進する
下半身の安定性を促進する
体幹と四肢の反射的な安定性を促進する
右腕と左足、左腕と右足の連結を高める
上肢、下肢をそれぞれ相互に動作させる
前庭系(平衡感覚に寄与)を刺激する
視覚系(平衡感覚に寄与)を刺激する
固有受容システム(平衡感覚に関与)を刺激する
空間認識を促進
前後の体重移動を開発する
上半身、体幹、股関節の強さを開発する
同記事でHetzler氏は、人間の発育発達で重要なクローリングと呼ばれる動きとゲットアップには同じ効果が期待でき、荷重をできる点でより優れていると評価しています。
仰向け姿勢から立ち上がり、また仰向けになるという単純な動きですが、立ち上がる過程で機能的な動きが多く組み込まれている珍しい種目です。それぞれの機能的な動きを再教育し、全身をトレーニングしていくことが可能です。
FMS (Functional Movement Systems) の創設者として知られる Gray Cook は冒頭で紹介している英文のように、エクササイズを1つだけ選ぶとしたらトルコ式ゲットアップを選ぶ!と言っています。
それくらいに効果の高い(様々な要素を含んでいる)種目であることがわかると思います。
また、Glute guyとしてアメリカでヒップスラストを流行らせた Bret Contreras が50種目以上の種目で腹筋群の筋電図測定を行った際、ゲットアップが4つの腹筋群を最も活性化させた(100%以上)と紹介しており、私がRKCやSFGといったケトルベルの団体資格を取得した際に使用されたマニュアルにも同じ内容が記載されています。
そんなトルコ式ゲットアップの歴史は古く、1928年にはロシアの書籍でケトルベルトレーニングとして紹介されており、1930年代には既に古いエクササイズで単純にGet upやOne arm get upなどと呼ばれていました。詳細は分かっていない部分も多いですが、300年以上の歴史があり、トルコのレスリングと伝統的なトレーニングに関連があると世界的なケトルベル指導の団体であるStrong FirstのBrett JonesとPavel Macekが説明しています。
20世紀初頭のストロングマンが記した本には、胡座姿勢からの立ち上がりをゲットアップとして紹介しているものもあったようです。
胡座姿勢のことはヨーロッパ圏ではTurkish sittingと呼ぶようなので関連があるのかもしれません。
他にも、インドの小さい村の寺院にゲットアップのような絵が描かれていたりするみたいで、似たような運動は昔から存在していたことが想像されます。
そんな歴史あるゲットアップですが、現代でスポットライトを当てたのは世界にケトルベルを流行らせたカリスマ Pavel Tsatsouline と、過去に米国のTOP100トレーナーにも選ばれた Steve Maxwell というアメリカの著名なフィットネスコーチです。
その後、FMS創設者の Gray Cook と Brett Jones 、ストロングマン北米チャンピオンにも輝いたことがある Jeff O'Connor 、私の初めてのケトルベルインストラクター試験の試験管だった Mark Cheng らが作成した「Kettlebell From The Ground Up」で、ハイペルビスを含む7つのステップを基本とした流れを確立し、安全で多くの恩恵を得られる洗練された種目へとフォームを発展させてきました。
そんな歴史もあり、世界で活躍するコーチの経験と英知を結集させた『トルコ式ゲットアップ』、やらない理由がありませんよね?
SNSで紹介されている、説明があいまいでよく意味が分からないトレーニングを真似するよりも、何十倍もの恩恵があるでしょう。
全体の流れ
各姿勢での詳細やエラーに関しては後ほど解説していきますが、各姿勢でのポイントを確認しづらいかもしれないので事前に掲載しておきます。
実施時の参考にしていただければ幸いです。
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