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掌編小説)古事成語

昔、中国の礎の国に、ほこたてを売る者がいた。
商人は自らの矛を掲げ
『この矛はどんな盾でも突き通すことができる最強の矛です』
また、盾を掲げ、
『この盾はどんな矛も通さない最強の盾です』と言った。

すると1人の男が、
『それではその矛でその盾を突いたらどうなるか』と問うてきた。

すると商人は
『いゃ〜。どこに行ってもお客さんみたいな人っているんですよねぇ。なんすか?クレームすっか?
それとも嫌がらせ?おじさんもさぁいい歳なんだし空気読もうよ。こっちもね、商売でやってんだよ。そこそこの矛と盾ですじゃ売れないだろ。
売りたいんだから、すげぇ矛と盾を売ってるって言うに決まってんじゃん。
それにさぁ。何でもかんでも人に聞くって言うのもどうなの?気になったんならさぁ、自分で調べてみなよ』

男は商人の心無い対応に怒りを覚えながらも
『それは悪かった。商売の邪魔をしてすまなかったね。君が言う通り、気になったのなら自分で調べてみるよ。だから、お詫びの意味も込めてその矛と盾を売ってくれないか?』

すると商人は
『毎度あり〜!おじさん、マジ紳士だね。でも紳士な振りをして、“口は災いの元”とか言って矛で切り掛かって来そうだから盾だけ売らせて貰うわぁ』
そう言って男に盾を売り渡した。

盾を受け取ると男はすぐ様、盾を頭上に振り上げ、そのまま商人の頭に落とした。
ドスっと鈍い音とともに商人の頭は赤く染まる。
男はその後も倒れて怯える商人を何度も何度も殴打し、そのまま撲殺した。

真っ赤に染まった地面に横たわる商人を足下に男は吐き捨てるように言った。
『攻撃は最大の防御なり』

これが『攻撃は最大の防御なり』の成り立ちだとかどうだとか…。

おわり