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#連載小説
プレキシ、謎めいたまま[7]
僕は中学一年からずっと国語を選択していて、ずっと一つの小説を書いていた。……選択国語を担当しているのは全部同じ教師で、よく言えば生徒の自主性を最大限尊重しており、悪く言えばまったくやる気がなかった。彼は選択科目のコマのうちその半分しか授業をしなかったし、授業がある日でも彼が何か話したりするのは授業時間の半分しかなく、残りは〈制作〉という名前の体のいい自習時間だった。僕が初めて彼の授業を受けたとき
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しかし、僕は特別彼女と仲が良いわけでもなかったし、そんなこと突然聞いてみるわけにもいかなかったから、僕は中間の段階としてもっと彼女と仲良くならなければならないと思っていた。ある放課後、たまたま校舎裏の花壇にひとりで水やりをしている彼女を見つけた。彼女は緑色のプラスチックでできた大きなじょうろを右手で持って、肩から振り子のように振りながら石積みの花壇全体に水を撒いていたが、僕がみる限り花壇には特に
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なぜなら本当の祈りというのは、アウグスティヌスの祈りがそうだったように、あらゆる不在の痕跡に囲まれて、なお存在している可能性へと宛てられるものであるだろうから、(……彼女自身の心それ自体が、自分にとって神さまなどいないということを重々承知のうえで、本を読んで何かを感じたり、考えたりして、すがるような気持ちになったのなら)……殉教者の祈りが本当に純粋なものになるのは、くべられた火が彼の最後の神経を
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でも本当に、転校生は、世界の終わりの鐘の音全てを背負っているみたいな顔をして新しい学校に……あるいは、古い学校に戻ってくるべきではない。彼女はそういう表情と、何かを訴えるような渇いた目差と、猫背と、歪んだ歩き方で自分の背負っている世界一般的な不幸(本当に十四歳というのは世界一般的な不幸を各々背負っているのだが)を僕達に示して、僕というファナティックなフォロワーをたった一人得た代わりに、三十人のア
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