漁師カレンダーを、より深く味わう方法 東京都写真美術館 図書室 【後編】
2023年春、東京都写真美術館の図書室の蔵書に加えていただいた気仙沼漁師カレンダー。前編では、カレンダーに関心を持っていただいたきっかけについてうかがいました。
後編では、どのように保存されているのか、また東京都写真美術館の図書室ならではのカレンダーの楽しみ方を教えていただきました。
漁師カレンダーはこんなふうに保存されている
本田さん
ここが閲覧室で、この場所とは別に、漁師カレンダーが収蔵されている書庫があります。雑誌、写真集、展覧会カタログ、技巧書、評論の本など、大多数の資料が書庫にあります。
本田さん
気仙沼のカレンダーはサイズが大きいので、一冊ずつ、専用のフィルムカバーに入れています。封筒がついているものは封筒も入れてセットで保存しています。
— 封筒も入れているんですか?
本田さん
そうですね。封筒や箱や帯がついていたら、それも資料として全て保存しています。
本田さん
最後に中性紙の箱に入れて保管するのですが、開けるとこういう感じです。酸性紙だと劣化するので、文書保管には中性紙の箱を使うんです。
— 東京都写真美術館の図書室はどんな方が、どう利用されているんですか?
本田さん
図書室では展覧会ごとに関連図書のコーナーを設けているので、展覧会をご覧になった方が立ち寄られることが多いですね。
また、図書室には約12万冊の蔵書があり、古い雑誌や資料も揃えているので、これらの資料閲覧を目的に研究者の方もいらっしゃいます。写真や映像を勉強している学生さんが、1日中図書室にいらっしゃることもありますし。
― いろんな方が来られるんですね!
本田さん
図書室は展覧会のチケットが不要ですし、無料でご利用いただけるんです。ふらっと来て、気軽に利用していただきたいと思っています。
ここならでは!の気仙沼漁師カレンダーの楽しみ方
本田さん
歴代のカレンダーを見比べていただくのも面白いですが、 それぞれの写真家の写真集も一緒に見ていただきたいですね。
例えば、市橋織江さんの新刊写真集『サマーアフターサマー』。挿絵のイラストを描いている外山夏緒さんは、市橋さんのカレンダーのイラスト・デザインも手掛けられています。写真集では、写真の上からイラストを重ねて表現してあって。そういう繋がりも面白いです。
― ああ、これはぜひ並べて見てもらいたいですね!
本田さん
漁師カレンダーをきっかけに、それぞれの作家へと興味を広げていってもらえるといいなと思います。
ー 一番いい楽しみ方ですね。
本田さん
竹沢うるまさんは、漁師カレンダーでも人を撮るのが素敵でしたが、キューバを撮影した写真集『ブエナビスタ』を見ると、竹沢さん独自の人物の撮り方を感じてもらえると思います。
公文健太郎さんは『耕す人』という写真集で農家を撮影していて。漁師と農家、仕事は違っても「働く人」という同じ視点で写真を撮っていることが分かります。
本田さん
他にも、雑誌のインタビューを読むとその作家の人となりにも触れられます。
— それはやってみたいですね。雑誌のインタビューを読んで、また写真を見返すのもいいですね。
本田さん
もし図書室で迷ったり困ったりしたら、気軽に司書に聞いてください。どういった本があるのかご案内できますし、雑誌についても、主要な作家名はなるべく検索システムに情報を入れるようにしています。ご自宅からも検索できるんですよ。
日常の中に溶け込んだ魅力
本田さん
改めて見ると、面白いですよね。手元で開いて楽しむ写真集とは違って、お家などで日常的に飾って楽しめるのは、カレンダーならではの魅力だと思います。額装してある作品を飾るにしても、毎月作品を掛け替えるのは、ご家庭ではなかなか難しいですから。
ー そうですね、なかなかハードルが高いです。
本田さん
カレンダーとして作品を紹介できる形式は、気軽に鑑賞ができて、季節も感じられて、旅をしている感覚も味わえる。そこが良いところかもしれませんね。
— 確かにそうですよね。なんだか、嬉しいです!ありがとうございます。
本田さん
その年を終えた後も、写真集として手元で楽しむこともできますし。とても魅力があると思います。これをきっかけに図書室にもお越しいただき、多くの方にご覧いただければと思います。