季語研究 「霜」 -霜の朝はどこかワクワク-
★★★けろけろ道場 季語研究★★★
No.30【霜(しも)】(三冬 / 天文)
● 概要
空気中の水蒸気が氷の結晶となり、屋外の建造物や地表に付着したもの
● 傍題
霜の花・・・霜を花と喩えた表現
霜の声・・・霜の降りた夜の、冷たくさえてしんしんと更けゆく様子。
青女(せいじょ)・・・霜・雪を降らす女神で、転じて霜の異名。
大霜・・・たくさんの霜
強霜・・・多く降りた霜
深霜 朝霜 夜霜 霜晴 霜雫 霜解
● 例句研究
皆さんこんにちは。
今回の季語は「霜」ということで、みなさんと一緒に考えていきたいと思います。日常でも使う言葉で、冬には実際に見ることもありますが、どうも「霜に関して思い入れや面白エピソードあるよ!」という人は多くなさそうです。それにしては存在感が強いので、霜の持ち味をきちんと生かした句を作りたいところです。また、二文字であるため、上五か下五に置くという手が使いづらい(傍題を使う手はありますが)という難しさもあります。
うーむ、困った困ったと頭を抱えているところですが、今回は例句をテーマごとにグルーピングして紹介するという手法を取りますので、例句をのんびりと鑑賞していきましょう。
ではでは。
(1)霜が降りている句(近景)
朝起きたら降りていたという句も多いです。
葛の葉のおもてなりけり今朝の霜
-芭蕉-
夜すがらや竹凍らするけさの霜
-芭蕉-
朝の霜を見て夜の光景を思い浮かべているので分類としては(1)になりますが、(3)に近い趣も感じられます。
しら菊に赤みさしけり霜の朝
-青蘿-
(2)霜が降りている句(遠景)
強霜の富士や力を裾までも
-飯田龍太-
橋立や霜一すぢの朝朗
-大魯-
(3)霜が降る句(夜)
このパターンも多いです。霜は実際に「降る」ものではないので、降る様を想像している趣に感じられます。
つやつやと柳に霜の降る夜かな
-暁台-
霜降れば霜を盾とす法の城
-高浜虚子-
酒くさき蒲団剝ぎけり霜の声
-其角-
「降る」という語は使われていませんが、夜を舞台にしているということで(3)に分類しました。
ここまで読むと、意外に「霜を踏む」という発想の句が少ないことが分かります。私が過去に詠んだ「霜」の句はどれも「霜を踏む」句だったので、もしかすると私は季語のイメージを掴み損ねていたのかも知れません。
◆ 主要参考文献
『合本 俳句歳時記 第四版』(角川学芸出版)
ウェブサイト『きごさい歳時記』