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KEPPLE Seminar Report【CVC入門セミナー第3弾】TOPPANホールディングスの事例から紐解く スタートアップとの協業を推進するポイント

こんにちは!ケップルのPR担当、冨田です。
ケップルは、スタートアップエコシステムの発展に貢献するため、スタートアップメディア「KEPPLE」や、スタートアップデータベース「KEPPLE DB」、「株価算定・投資検討DD」など、投資家や起業家のみなさまをサポートするさまざまなプロダクト・サービスを提供しています。

近年、オープンイノベーションや新規事業開発を目的とした事業会社によるスタートアップ投資への取り組みが増加している中で、これからスタートアップ投資をはじめようとされている企業の方々から「まず何からはじめたらいいかわからない」「進めるうえでのポイントが知りたい」といったご相談をお寄せいただくことが増えてまいりました。

そこで、「CVC入門セミナー」と題して、オープンイノベーションの初期フェーズから事業連携までの知見を総合的に深めていただけるセミナーを、全3回に渡り実施させていただきました。

今回はその第3弾として、TOPPANホールディングスの滝本 悠氏をお招きし、開催したイベントのレポートをお届けします。オープンイノベーションやCVC活動の進め方について理解を深めていただける内容となっていますので、ぜひご覧ください。
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※本レポートは2023年9月19日に開催したセミナーの書き起こしになります。

▼スピーカー紹介

滝本 悠氏
TOPPANホールディングス株式会社|事業開発本部|戦略投資部

大学を卒業後、新規事業開発支援を展開するGOB(株)に参画・取締役に就任。 大手企業における新規事業創出やアクセラレーションプログラム等の運営に携わる。
2021年に凸版印刷(現TOPPANホールディングス)に入社し、スタートアップ企業との資本業務提携および事業開発を推進。また投資ポートフォリオ管理や社内外への情報発信・メディア運用も併せて手掛ける。
AI・フィンテック・トラベルテック等が担当領域。早稲田大学経営管理研究科卒業。


印刷事業からのポートフォリオ変革、成長領域での新規事業創出

ー 改めて、御社の会社概要について教えてください。

滝本氏:TOPPANグループは1900年創業の120年を超えた会社です。「人を想う感性と心に響く技術で、多様な文化が息づく世界に。」というグループパーパスのもと、多角化しながら事業を展開してきました。元々は商業印刷や株券・証券印刷、パッケージ素材製造が中心でしたが、建装材やエレクトロニクス、最近では電子書籍やヘルスケア等へと広がっています。

実はこの10月にホールディングス体制への移行があり、それに合わせて社名が変更となりました。凸版印刷の「印刷」の文字が外れるという意思決定がありました。新しい挑戦が強く求められるタイミングだと認識しています。

足元では紙への印刷自体の減少傾向に対応して、事業ポートフォリオを変革していくことが一つのテーマになっています。
また全社的には「Digital & Sustainable Transformation」を掲げて事業を展開しています。

ー CVC設立の背景や取り組み状況について教えてください。

私が所属しているTOPPAN CVCは、2016年頃から活動をしています。当時からペーパーメディアの市場縮小が予想されており、改めて我々がどこを成長領域として定めていくかを全社的に整理し直すタイミングがありました。そして、成長領域の中で事業開発をしていくうえで、スタートアップのビジネスモデルや技術も活用させていただく目的をもって、CVC部門が立ち上がりました。

投資して完了ではなく、積極的に仮説検証や事業化を進めており、将来的にはジョイントベンチャー組成や事業部への移管ということを見据えながら運営しています。新規事業開発のための大きな役割を担う部門となっています。

CVCと呼びつつも事業共創を目的とした、バランスシートからの投資を行っています。TOPPANグループにとっては非連続となる市場やビジネスモデル、またスタートアップと補完関係を構築できるようなプロダクトやサービスに投資させていただいており、日本とアメリカを中心に活動しています。

主に、事業共創を目的にスタートアップと資本業務提携をしております。ファイナンシャルリターンもしっかりと追いながら、基本的にはストラテジックリターンを重視しています。スタートアップと事業部門と三位一体で共創を進めていますが、事業部門ですぐに体制を組むのが難しい場合には、CVCが主体となって挑戦することもあります。

このように、2016年から活動を開始して、現在60社を超えるスタートアップへ投資を実行し、M&AやIPOも生まれている状況です。幅広い投資領域を特徴としていますが、TOPPANグループの事業ドメイン自体が多岐に渡っているところが背景にあると考えています。

ー ファンド形式ではなく、バランスシートからの出資を行われているのは、事業連携を前提にされているからでしょうか?

滝本氏:そうですね。事業開発のためにスタートアップの皆様のお力をお借りしていくことを命題としていますので、いろいろと模索しながらも、基本的にはBS投資との相性が良いという判断に至ったと聞いています。

一方で、昨年度に新しいチャレンジとして、シリコンバレーでCVCをファンド形式で設立しています。米国では事業連携前提に限らず投資活動を行っています。
創部以来、資本業務提携を中心としながら進めているということは変わっていないのですが、どのような投資をするべきかということは、常に議論を深めながら進めています。中長期的な投資方針と、市場のトレンドや課題感に対応する投資はバランスを見ながら柔軟に行っています。

三位一体での相互理解促進と柔軟な体制づくり

ー 投資領域が広い分、社内で合意形成していくのは難しそうですね。

まさにそこは私たちが注力しているところです。月に1回持ち回りで、各担当者が注目する領域に関する市場調査レポートを作成し、社内で議論しています。

直近ではWeb3.0やAIの分野などについて、「この市場に今何が起きているのか、どのようにアタックするべきか」を投資担当者の仮説や熱意も含めて共有しています。内容によっては反対意見含めて議論が巻き起こることもあるほか、担当者毎の得意な領域が明確になり、それぞれのメンバーの色分けがはっきりしていく印象があります。

ー 協業を進めるにあたって、スタートアップとはどのようにコミュニケーションを取られていますか?

ここはケースバイケースで対応できるようにしています。PoCも含めて事前に事業面でのお付き合いをさせていただきながら相性を確かめていくパターンもあれば、どちらかというと投資先行でスピーディに対応していくこともあります。いずれにせよ、業務提携契約を締結していますので、事業部門としっかりコミュニケーションをとることを重視しています。

また多くの投資先と協業に関するディスカッションを定期的に行う会議体を設定しています。投資前も大事ですが、投資後のコミュニケーションについても事前に設計をしておくことが非常に重要だと考えています。投資前と投資後のお付き合いの仕方は、また少し変わってくるものです。事前のコミュニケーションもしっかり取らせていただきつつ、投資後のディスカッションや協議をしながら、場合によって協業のテーマが変わっていくということにも柔軟に対応できるような体制を作っています。

ー スタートアップとの協業を進めていく中で、工夫されていることはありますか?

いくつか取り組んでいることの一つに出向があります。協業やジョイントベンチャーを進めていく手前に、相互理解がとても重要だと考えています。双方のカルチャー、スピード感などあらゆる点が良い意味で違うと思いますので、CVCのメンバーを中心に、投資先への出向をさせていただいて、その中で相互理解を深めていくということをこれまで複数の企業と実施しています。「TOPPAN CVCのこの人に相談してみよう」など、気軽に声をかけてもらえる関係性になりやすいですし、我々が勉強させていただくことも非常に多いです。

ー 社内事業部門とのコミュニケーションをスムーズに進めるうえでのポイントはありますか?

一つは、スタートアップへの出向と近いイメージで、社内出向や事業部門との兼務も一部実施しています。CVCと事業部門を兼務し、しっかりと事業部門の視点を深めていくという取り組みを行っています。その逆も然りです。部門が違えばレポートラインやルールも違うのは当然ですので、事業部門との兼務はコミュニケーションの活性化に大きく寄与しています。

もう一つは投資先の経営層に来ていただいて、社内向けにプレゼンテーションをしていただくセミナーです。投資先企業については社内からも注目されているのですが、CVCからなかなか情報を出しきれていないという課題がありました。そこで、スタートアップの素晴らしいプロダクトやサービスについて社内のメンバーにも理解してもらうために、セミナーを企画しました。自分たちのクライアントにも紹介していきたいという営業メンバーを中心に、300名弱が参加してくれました。同様に、クライアント向けに共同セミナーを実施する取り組みも行っています。社内向け情報発信のためのセミナーは参加者も多く満足度も高かったので、定期的な取り組みとして今後も実施していく予定です。

ー 社内の注目度も高まっているとのことですが、そのような状況を作り出せた背景はどのようなところにあると思われますか?

まずは、CVC設立時の2016年前後の会社の状況としては、CVC部門関係者だけでなく、会社全体として今後の成長に危機感を持っていたことがあると思います。また、設立後も定期的に各事業部門とコミュニケーションを取りながら、双方の方針や状況を含めて情報交換してきたところが背景にあると考えています。

スタートアップの挑戦に貢献していくという姿勢

ー 協業の成功事例について、ぜひお聞かせください。

60社強の出資先がある中で、いずれも事業連携を前提として取り組んでいます。印刷業との関わりが一見するとわかりづらい事業も含めてチャレンジしている状況です。例えば…

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