斑鳩いかるのシンリョウジョ ep10.5 途中経過・調査メモ

         ー新型症状及び特殊能力と薬物についての記録と推察メモー

 202X年6月18日
   帝北大学鳳研究室代表 鳳麗麗
   斑鳩シンリョウジョ代表 斑鳩いかる


 新型の症状の目撃、報告例が今年に入り増加している。これはそれにまつわるメモであり、斑鳩シンリョウジョと鳳研究室共同で収集した情報を元に書き起こしたデータである。

 1. 特殊な症状及び能力、引き起こされる外傷と内傷・起こりうる被害とその対処

 症状の場合・パターンは大きく以下のケースに絞られる。

 帯電・症状ー体内での異常帯電、体外への異常放出
    被害ー異常帯電による体内の感電、全身に及ぶ重度の火傷、体外放出による周囲への被害・損害
    対処ーアースを用いての体外への帯電の放出

 水 ・症状ー体内の水分の異常放出
    被害ー脱水症状
    対処ー常時の水分補給

 血液・症状ー血液中の鉄分の超凝固・超放出
    被害ー内部裂傷
    対処ー血液中の鉄分の凝固を妨害する作用を施す。現在鉄分融解剤開発中。

 再生・症状ー異常再生による受けた外傷の瞬間的完治
    被害ー無し
    対処ー被害なしと判断・様子を見つつ現状維持

 変形・症状ー意にそぐわない急速な顔面・骨格の変形
    被害ー人相の変化、身体への大きな負担
    対処ー対象の患者は自分の顔を忘れているという事だったので顔を記憶野に強くインプット

 時間・症状ー停止した時間を感知可能。尚、停止した時間における行動は不可能。
    被害ーなし、又は当人の感覚的苦痛あり
    対処ーする必要無しと判断

 共鳴・症状ー無意識下での自身から発せられる音の周波数の調整。
    被害ー現在目立った被害無し。予想されうる被害として共鳴周波数による物理的破壊の可能性
    対処ー治療の方法、必要無し
  特記事項
   今回、声によって他者の能力の解除を確認、人体への影響とみなす。当問題の解決への尽力が望ましい。

 特例として以下に斑鳩いかるの症状も記すことにする。

 電気・症状ー微弱な電流を用いて脳波の操作が可能。技術的に獲得したもの
    被害ー脳の記録の軽度なスキャン・表面的な記憶の消去が可能
    対処ー精細な操作を必要とするため、処置中は身の動きが完全に封じられる、戦闘の際はサポートに徹しざるを得ない。

 以上のパターンが斑鳩シンリョウジョで症状として診断するケースであり、これより以下は症状ではなく能力として扱う。
 能力の区分は未だ不明な点も多いが、ここでは薬物によって引き起こされた人為的な症状と位置付ける。

 火 ・症状ー火傷
    被害ー重度の全身火傷・周囲への延焼
    対処ー当シンリョウジョで症状を抑えられるよう処置

 時間・症状ー前述と違い停止した時間の中での行動が可能
    被害ー未知数、当人の行動次第
    対処ー不可能

 2.症状及び能力の発症

 症状の発症
  現在、症状の発症理由はわかっていないが、考えられる理由は以下の通り。

 精神・心的ストレスによるもの
  後述する”能力”の発症因子に基づく推察
  精神の状態により症状が細分・複雑化されることから

 新型ウイルスによる感染症の可能性
  発症の初期症状として微熱の報告が共通している。不確定要素が多すぎるため要注意。

 能力の発症
  主に薬物の投与によるもの。当薬物の形状は飴玉を模した形形状をしている。合成された薬物の中には致死量に満たない程度の毒物も含まれており、これが脳に作用することにより能力が発症すると見られる。製造元は不明。
 合成されている薬品・毒物は以下の通り
  Fentanyl, Batrachotoxin, Tetrodotoxin, Palytoxin, Maurotoxin, Gaiamin, Woltoxin, etc,etc,etc…未登録の成分・神経毒の確認あり
 また、当薬物にはヒト由来のタンパク質の成分が見られた。詳細は不明。

 3.当薬物について
  成分等は上記の通りである。この項目では流通ルートなどの記録を行う。

 立里アズマーー当人の証言に基づき記載。
 後述の『虚兎商店』で当薬物を入手したのち日本へ輸入。その際どのように国内へ持ち込むかは不明。(加工食品として密輸?)
 都内で無料配布、目的は不明。(当人曰く人助けとのこと)

 虚兎商店ーーー電脳街(旧九龍城砦)中心部に位置する観光客向けギフトショップ。
 梁蓝莓(リャン・ランメイ)、梁草莓(リャン・ツァオメイ)以上2名により経営される個人商店。秘密裏に当薬物を仕入れて販売。製造元を聞き出そうとするも回答不可能とのこと。

 ここからは未だ明らかになっていないことであり、全て我々の推察である。

 疑問
 発症・発現する症状・能力に大きく差異がある理由は何か?
 現在科学的な見当つかず。考えうる事としては以下の通り。

 症状ー当人の身体的状態が関係していると思われる。当人の体質と発症因子が結びついた結果によって症状が変わる?
 能力ー当人の精神的状態が関係していると思われる。全く科学的ではない推察だが、精神状態と当人の潜在的願望に起因するものではないか?

 当薬物の製造方法
 前述の多種の神経毒(未発見・未登録成分有り)を配合。
 ヒト由来のタンパク質などの成分が含まれている事から、人体実験が行われている可能性あり。
 毒物の緩和又は繋ぎとして人体の成分を使用?

 製造の目的
  製造元と共に一切不明。以下、想定される理由
  特殊能力による人為的テロの計画
  国家間の紛争における生体兵器としての運用
  ヒト科の生命体としての進化
  地球外進出・他惑星への移住計画における他環境への順応(これは生命体の進化に含まれるかも)
  偶然の産物(ふざけんな)[#「(ふざけんな)」に取消線]

 以上を踏まえ、我々の取るべき行動
  災害を未然に防げるように能力の解除を粛々と行なっていく。可能であれば国家機関との協力関係を構築するのが望ましいが、製造元の場所・理由の詳細が一切不明なため慎重を期す。


 以上で当案件による途中結果・調査メモは終了とする。



「あー・・・つっかれたー・・・」
 いかると麗麗がメモを纏め終えると、朝焼けが二人を照らしていた。
「うわーもう朝じゃん今日予約なかったら臨時休業にしようかな」
「いいじゃん、もう今日は誰も入れないでおこう?」
「てか・・・途中途中適当書いてない?私の症状のとこだけただの攻略法じゃない?」
「え?そお?まぁいいじゃんそういうの」
「だめだーねっむい・・・」

 二人は再び深い眠りに落ちた。

「おやすみなさいお二人さん」

 眠ってる二人を尻目に作業用PCを作業する鶴野の姿があった。
「ちょっとこの資料持ち帰らせていただきますよ」
 鶴野はファイルを自身のカードにコピーし、シンリョウジョを後にした。

「もしもしもしもし?今資料送ったから見といてね〜」

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