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バリュー①1.多文化共生社会の実現やあらゆる社会課題の解決に向けて、多くの人が協働できる仕組みづくりを行う

人とヒトの幸せ開発研究所の事業展開図

 「人とヒトの幸せ開発研究所」のミッション・ビジョンについてお話ししました。今回から3回は、そのビジョン・ミッションに基づき、具体的な活動の方針(バリュー)を3回に分けてつづりたいと思います。1つ目のバリューは「多文化共生社会の実現やあらゆる社会課題の解決に向けて、多くの人が協働できる仕組みづくりを行う」です。


自分の手が届く範囲は小さい。多くの人が支える仕組みを

 大学時代、在日コリアンの人権などを研究していた私にとって、窪塚洋介さん主演の映画「GO」(矢崎充彦監督、2001年)は、頭をガツンと殴られるような衝撃を受けた作品でした。

 その中で、主演の窪塚さん演じる杉原の父親役だったのは、山崎努さん。元ボクサーの父親は、杉原にボクシングを教えながら、このように諭すのでした。

『お前の拳がひいた円の大きさが、大体お前っていう人間の大きさだ』

映画「GO」より

 私も、国際協力、多文化共生などを通じ、様々な支援を行ってきました。災害情報を多言語で発信したり、ウクライナ避難民の受け入れを行ったり、ミャンマーの貧困層に奨学金を届けたり。でも、私の拳で広げられる円の範囲は、狭い。手のひらも、男性にしては小さく、中学時代の野球部でキャッチャーを務めていた時は、ボールを握り変えるのが遅れるのが小さく、多くの盗塁を許してしまうのが、コンプレックスで・・・。

 話がそれました。とにかく、より多くの人を支援したいけど、自分の力では精一杯。そこで考えたのが、同じような志を持つ人が、行動できるような環境をつくること、システムをつくる側に回ることでした。

事業を通じて、SDGsの達成にも貢献していきます

1-1-1.多文化共生のための広域のネットワーキングづくりを進める。

 それは、2021年2月にミャンマーで政変が起きたときでした。「母国の家族と連絡が取れない」「銀行が止まって仕送りができなくなった」「家族も呼び寄せて避難できないか」―。当時、佐賀県のミャンマー人グループの組織化を目指していた私のもとに、ミャンマー人から多くの相談が寄せられました。そこで開いたのが、オンラインの相談会でした。

 この時、「佐賀県のミャンマー人」しか想定していませんでしたが、オンラインだったこともあり、佐賀だけでなく、福岡や大分、熊本のミャンマー人も、うわさを聞きつけて参加してくれました。

 その時感じたのが「このような生活に必要な情報は、県単位に限定しなくてもよいのではないか」ということ。もちろん、その県のみのサービスは別ですが、災害も広域化し、コロナ禍では、感染者情報やワクチン情報、特別給付金の情報など、言語の壁が外国人住民に立ちふさがりました。行政なら対象範囲がありますが、NPOならば、(定款で支援範囲を限定していれば別ですが)県域を越えた支援ができる。そこから、九州広域で外国人支援をしている団体のネットワークなどの構想につながりました。

 ウクライナ支援やコロナ禍の外国人も含めた困窮など、様々な課題があります。支援側のネットワーク化、プラットフォーム化を進めることで、課題を解決できればと考えています。

1-1-2.各地で多文化共生を行政施策、市民団体で進めるためのコンサルティング、アドバイス、提言を行う。

 コロナも5類感染症に移行し、外国人住民の人数は回復傾向にあります。背景にあるのが人口減。多くの地域で、多文化共生施策を進めています。また、今までは子ども支援、フードバンクなどの活動をしていた団体も、外国のルーツを持つ子どもの支援をしたり、外国人住民への物資支援をしたりなど、活動の幅が広がっています。

 私も、タイ人グループ「サワディー佐賀」の活動や、そこからミャンマー、スリランカ人など、少数言語グループへの横展開、そして、ウクライナ避難民の受け入れ事業など、多文化共生の実践を行ってきました。その経験をもとに、コンサルティングやアドバイス、提言などをおこなっていければと思います。

1-1-3.多文化共生社会の実現に向けて、実践事例講演会やワークショップを行う。

 これはまさに言葉通り。ありがたいことに、毎年、1000人以上の方の前で、お話をする機会をいただいています。今後も引き続き、実践から得た学びを話す講演会や、多文化共生について考えてもらうワークショップなどの機会を得られたらと思います。

NPOマネジメントの知識を、多くの現場へ

1-2-1.休眠預金プログラムオフィサーとして、市民活動団体(CSO)が公益活動を実施するサポートをする。

 近年、「休眠預金」という財源に注目をされています。10年以上にわたって取引のない銀行口座の預金を、社会貢献に使える法律ができました。年間1200億円ともいわれる休眠預金を活用し、子どもの貧困や災害などの現場での活動費に助成がされています。

 この仕組みで面白いのが、休眠預金等活用法の指定活用団体である「日本民間公益活動連携機構(JANPIA)」が直接、地域の団体に資金を助成するのではなく、より地域の団体や現場の課題を知る団体を「資金分配団体」として、より現場の声を拾ったうえで資金提供をしている点です。まさに、私が考えてきた、課題解決を多くの人材で取り組める「仕組みづくり」を実践できるシステムです。その「資金分配団体」で、資金を提供するだけでなく、団体と伴走しながら、一緒に課題解決に向けてノウハウを提供するのが、「プログラムオフィサー」という役職です。その役職を務めることで、多くの協働の仕組みをつくっていきたいと考えています。

1-2-2.CSOが持続可能な活動を行うためのファンドレイジングをサポートする。

1-2-3.会員管理、助成金申請などCSOの活動を伴走支援する。

 「NPO=ボランティア」と思っている方がまだまだいらっしゃいます。非営利側の広報不足もありますが、常勤職員ならば、給与や福利厚生もあります。

 ただ、まだまだ手弁当、ボランティアで運営を賄っている団体がいるのも事実です。給与は低いのに労働時間は長く、「男性の寿退社」がはびこる(女性も結婚したら家庭に入る、というのはダイバーシティ的に時代遅れかもしれませんが)世界です。活動費だけでなく、きちんと職員の給与を確保することは重要です。

 ただ、非営利の世界では、団体が「持続可能な活動を続ける=スタッフの人件費を得る」という活動を、支援者さんが認めてくれないパターンもあります。例えば、クラウドファンディングで寄付を集めた際、集まった金額の100%を現地に送ってほしい、と言われることもあります。ただ、資金を現地に送るには、

  • 送金手数料

  • チラシ作成など広報宣伝費

  • 海外に送る場合には、為替差損

  • 銀行に行く場合の交通費

  • クラウドファンディングサイトの手数料

  • 事業に従事する際のスタッフ人件費

―などがかかります。営利企業以上に、マネジメントが必要な場合があります。

 私も、新聞社時代からNPO関係者と交流があり、実際にスタッフとして働き始めてからも、多くのノウハウを身に着ける場に参加する機会を得られました。ファンドレイザーとしても活動しています。寄付を集めたり、助成金・補助金を獲得したり、収益事業を企画したり(NPOはボランティアと勘違いされがちですが、収益を上げて役員報酬を支払ったり、職員に給料や日当を支払うことも可能です)、きちんと対価を払える仕組みもつくることが重要だと考えています。

 ただ、「想い」が先行し、「赤貧を美徳」とする団体もありますが、創業者世代が引退すると、事業が続かない団体も多くあります。九州でも最も老舗な地球市民の会や、NPO活動が盛んな佐賀で学んだ知識を、多くの団体に伝えることが、私の使命と考えています。


サポートをお願いします! ウクライナ避難民の定住化や、終戦後に向けた復興、外国人材受け入れの生活環境整備など、基金として活用させていただきます。