「先生、どうか皆の前でほめないで下さい」レビュー
誰かが動画で紹介していたので、面白そうだと思いポチってみました。
大学教授の著者が現代の大学生の生態や心理を解剖した内容です。
文体がおちゃらけていて絶妙に寒く、何度も床に投げつけそうになりましたが、どうでもいいノリツッコミやギャグもどきをスルーできれば、ある程度本書から価値のある情報が得られます。
「Z世代論」というよりは「Z世代大学生・就活生論」という感じ。
あくまで大学生の分析です。
読めば読むほど唖然とし、時に心当たりにドキっとし、最後の方はもう落胆やショックを通り越して絶望感でページが重く感じました。
簡単に言うと今の大学生は、
・いいことでも悪いことでも浮きたくない
・テンプレ、マニュアルがないと動けない
・5~7番目ぐらいを目指す
・一番は絶対嫌
・自発的な行動を避ける
・が、頼まれたらちゃんとやる
・評価されるのが苦手
・意見を求められると固まる
・同年代のゆるい空気が何より大事
・一周回って学歴、コネを重視している
・安定志向がより強くなっている
・「意識高い」とすらもう言わない
・メンタルが保てる仕事がしたい
・親の意見をわりと大事にする
・親(団塊ジュニア)の思考をコピーしているだけ
・失敗しないために何もしない
大体こんな感じらしいです。
もちろん全員ではないでしょうが。
個人的に「あ、あれがそうか!」と思った例があります。
かなり前にギターを教えていた若い子で、僕が「これについてどう思う?」とやや突っ込んだ質問をしました。
するとその子は文字通り固まってしまいました。
すぐに僕は『あーこれは何も出て来ないなー』と思ったものの、意見を引き出したかったので待つことにしました。
1分、
2分、
3分、
こちらも何も言わない、相手も何も言わない、そういう時間が過ぎていき、たぶん10分は完全無言の時間が過ぎました。
そして結局僕が根負けしてその話は流しました。
確かその時「一対一で次自分が話す番だと分かっていてこれだけ長時間黙っているのはおかしいよ」と言った記憶がありますが、こういった接し方を著者は無駄な労力と斬り捨てています。
正にその通りでした。
その他、自分も大学時代そうだったかも?という例もあったり、Z世代だけじゃなく日本人全体の問題と捉えられるような例もありました。
一方で、ギター教室に来ている(来ていた)バリバリZ世代の大学生がわりと昭和っぽい子だったりすることもあるので、一概に「今の若者は」とは言えないことも肌で感じています。
本書では触れていませんでしたが、「そりゃ若者は選挙行かんわな」と納得しました。
TVなどのコメンテーターは「もっと若者に分かりやすい政策を」とか言ってましたが、本書を読むとそれがいかにピントがずれているかが分かります。
自発的な決定を避けて生きてきた子が、突然国を動かす代表を個人の裁量で決めろと言われたら「固まる」に決まってます。
でもなんとなく空気で投票するんじゃない?と思ったりもしますが、恐らく「空気やノリで投票するものでもない」という空気も読めているのではないかと推察します。
また、誰に投票するかを聞いたらいけない空気も察し、その結果空気やノリがわからないまま自分に意思決定を委ねられていることの重圧に「固まって」いるうちに投票日が過ぎていた……というのが若者の選挙に行かない理由かなとこの本を読んで感じました。
本書の趣旨ではないけど、この本に出てくるような若者が日本を動かすぐらいなら、老害と言われている人達がもう10年20年ぐらい頑張ってくれた方がましだと思いました。
一方で、自分を大事に大事に甘やかして生きてきた結果歴史を塗り替えるほどの超天才が生まれるのもZ世代なのですが、たぶんそういう人たちはすぐに海外に逃げるでしょうね。
日本終わりますよ……
わりと本気で海外で残りの人生終えることを考えた一書でした。