小説「私を知らないで」を再読して思ったこと
コロナウイルスの影響で近所の本屋さんが閉まってしまいました。
積読本を読むのもいいかなと思ったのですが、以前読んでおもしろかった本を、また、読み返してみました。
その本がこちら。
「私を知らないで」白河三兎(集英社文庫)
あらすじ
中2の夏の終わり、転校生の「僕」は不思議な少女と出会った。誰よりも美しい彼女は、なぜか「キヨコ」と呼ばれてクラス中から無視されている。「僕」はキヨコの存在が気になり、あとを尾行するが…。少年時代のひたむきな想いと、ままならない「僕」の現在。そして、向日葵のように強くしなやかな少女が、心に抱えた秘密とは―。メフィスト賞受賞の著者による書き下ろし。心に刺さる、青春の物語。【「BOOK」データベースより】
3日くらいで読み終わりました。読みやすいだけでなく、面白かったからすぐに読み終わったのだと思います。おもしろかったポイントは2つあります。
1つ目は主人公が「変に」達観しているところです。銀行員の親を持つ主人公は転校に慣れっこで、「どうせすぐ引っ越す」思って、うまくやり過ごすことばかり考えます。転校してすぐクラスのボスを探る嗅覚があり、クラスの人間関係を俯瞰的みる視野を持っているなど「無難に」過ごそうとしてるが、2人目の転校生「高野」がかき乱します。この展開と高野との会話にくすっと笑ってしまいました。
2つ目はクラスで浮いている「キヨコ」が気になってしまうところです。「キヨコ」は祖母と二人暮らしで、優しくするクラスメイトに「偽善者」と言い放つような女の子です。秘密を抱えながらも、「普通に生きたい」と強く思っています。どうして「普通」にこだわるのか、どうして「強く」生きているのか、その秘密が気になってしまいました。サクサクページが進みました。
再読して思ったこと
はじめて読んだときから、2年くらい経つのですが、最後の「オチ」を覚えていなかったことに驚きました。読んでおもしろかったこと・キヨコというキャラのたつ女の子がいたこと・主人公が達観していたことくらいは覚えていたのですが、終わり方を覚えていませんでした。
終わり方を覚えていなかったので、再読でも、最後のオチは新しい感動でした。「冷たい主人公が平等にやさしくしない理由」と「キヨコの覚悟と普通への憧憬」が物語に引き込ませたと思います。たぶん、最初に読んだときも同じような感動があったと思います。2年という時間がそれを「おもしろかった」という記憶に変えてしまったでしょうか。
だとすると、時間ってずるいですよね。
時間が経つと記憶は薄れます。この「私を知らないで」から生まれた感動も別の感動で、頭の中の遠いところに行ってしまいます。時間のせいです。
おもしろかった記憶はあるけど、内容は細かく覚えていない。
特に終わり方やオチは忘れてる。
そんな本には、再読でも、「新しい感動」があるって知れたいい読書でした。
最後まで読んでいただいた方、ありがとうございました。