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ボクと魔王 感想記事~箱庭の世界と自由とボクと~

割引あり

先日ボクと魔王というちょっと懐かしなゲームをクリアしました
素晴らしいエンディングを迎えたのですが
今回の記事はその感想会です


あらすじ

 主人公は平凡だけどやたら影が薄いのが特徴の少年
 ある日、街にやってきてパレードの日の夜、妹が魔物に襲われてしまい呪いをかけられてしまう
 そんな妹を救うために父が先日拾ってきた奇妙な壺を使おうと言い出した
 なんでもその壺は人の運命を変えられるという伝説の「ポラックの壺」とそっくりらしい
 あからさまに怪しい代物だが、既に医者からは手の施しようがないと言われており縋れるものはこればかり
 仕方なく壺の力を引き出す儀式を行うも…
 中にいたのは自身をかつてこの世界を恐怖の底に叩き落し、当時の勇者ホプキンスによって倒された大魔王ゴーマの生まれ変わりだというスタンという魔王
 まあこの際魔王でもいいからと妹を助けるようお願いすると、代わりに家族のだれか、魔王と適合するものを僕として使えさせないといけないと言い出す
 と言っても適合するのは主人公のみなので実質強制的に主人公は妹のために魔王の僕にならざるを得なかった
 家族からの凄まじい圧力もありこれを承諾した主人公は妹こそ助けてもらえるがスタンの僕となってしまう
 しかし肝心のこの魔王スタン
 主人公の影の中に入り込んでいないと居場所を保てない程に弱っている
 大魔王の生まれ変わりの名が泣いているわ
 といった感じだがなんでも封印されている間に魔王の力が散らばってしまいその力を勝手に利用してるニセ魔王が各地に現れているとか
 そのせいでスタンは弱体化しているのだと
 こうして主人公はスタンに命じられるままニセ魔王退治の旅へと旅立つのであった
 旅先では勇者でありながら下手打って影がピンクになってしまい世間の笑いものになってしまった女勇者ロザリーや
 様々な研究を行い学会のみならず世界的にもその名を知られている偉大な人物だが一方で他人の話を聞かずに持論を長々と展開しだしたり、少々変態趣味があったりする残念博士キスリング
 王女でありながら活発過ぎてその役目から逃げて冒険したいなんて言い出していつの間にかスタン一行のリーダー格に収まっちゃう王女マルレイン
 など様々な個性豊かな人物たちと出会い
 彼らとの交流を通して世界を知りそして…
 役割とは何か
 世界とは何か
 どこか奇妙な世界で織りなす主人公たちの物語は
 ただの魔王退治から大きく変わっていくことになる…

感想

 あらすじからはイマイチ世界観とかわかんないと思うんですけども
 簡単に言えばこの世界
 どこか変なんです
 キャラクターは人形劇の人形のようにデフォルメが強くというより人形のようにデザインされ
 「分類」と呼ばれる属性がすべての人に当たり前のように存在している
(魔王とか勇者とか学者とかそういう職業レベルまで分類で定められている)
 勇者は勇者学校で育成されて排出されるし、そんな勇者のエリートでも王女の住む城の所在も知らない
 どこかで”物語”に粗と穴があるアンバランスな世界なんです
 かわいらしいデザインや勇者と魔王の戦いという物語性を重視するなら「分類」のようなシステム性は排除すべきだし
 一方でシステム性を強めるなら、ちょっと間抜けなお笑い魔王やかわいらしいデザインは不要
 かといってこれらが綺麗に両立しているのかと言えばそうでもない非常にアンバランスな世界
 まるで誰かに、しかもおそらく修正したりしてくれるような他人の介在がなく作られたかのように
 素人が作る物語ってこうなりがちですよね
 作り手に便利なシステムと物語の魅力がアンバランスになる感じ
 そしてこのボクと魔王はわざとそのアンバランスな世界が出力されているわけです。
 そしてそんな世界が
 1人の男から
 しかもその男が自分の娘を遊ばせるためだけに作られたと知ったら
 ましてその世界が思い通りにならなければあっさりと気に入らないものを消そうとするそんな恐ろしい真実が隠されていたら…
 あなたはどうするだろうか
 与えられた役割に従って忠実に生きていくのか
 それとも広がる世界
 無限の可能性を求めて手を伸ばすのだろうか?
 このゲームの本質はそこにあるのではないかなんて思ったりもします
 主人公は結局分類にあらがう選択を取ります
 冒険を通してお互いに惹かれ合っていたマルレインと主人公
 そんな二人をこの世界の創造主であるベーロンはよしとしなかった
 もとより分類を何故か持たないという特異体質の主人公、彼は世界のイレギュラーだった。ベーロンはこれによって自分の世界が滅んでしまうのではと恐れていた
 なぜ世界の崩壊を恐れたかと言えばこの世界はベーロンが娘のマルレインの為に、彼女が遊ぶために作った世界なのだから
 そしてこの世界のどこかにマルレインが消えてしまっているのだから
 そう今主人公たちの前に立つマルレインはベーロンが作り出した人形に過ぎない
 元々この世界はマルレインのおままごとの為につくられこの世界にいる限り二人の命は永遠であり、マルレインはベーロンから様々な役を与えられその世界を楽しんで暮らしていた
 しかしバカで間抜けなベーロンは世界の片隅で彼女が眠っているのに気づかずにマルレインが消えてしまったと大騒ぎ
 そのまま彼女を探しながらもあろうことかただの人形にマルレインという分類を与えて”マルレインとともに暮らす自分”という存在を保っていた
 結果的に”マルレイン”という分類を人形に奪われてしまった本物マルレインは存在を失ってしまい”何物でもない”存在になってしまった
 そしてこの箱庭の世界のどこかにいるマルレインを見つけるためにこの世界が分類が崩壊するのをベーロンは恐れていた
 しかし分類を持たない主人公が現れていよいよ世界は不安定になり始めていた
 もはやマルレインを探すことより世界の安定ばかり気にし始めていたベーロンは主人公たちの前でマルレインの名を与えられた人形を破壊してしまう
 一緒に旅をした仲間が人形でしかもこの世界も作り物そんな真実を前に驚愕する一行…でもそれ以上に大切な仲間だったマルレインを偽物と切り捨てて破壊したベーロンへの怒り
 私も終盤エンディング直前までベーロンへの怒りでいっぱいでした
 でもな…最後の最後に彼は結局マルレインのことを考えていて、自分の世界が壊れてもなお外の世界でマルレインを探そうとよろよろと歩き出すその姿はちょっと悲しい気持ちになりました
 そして感動のエンディング
 みんな分類から外れる世界を目指したのに案外そんなに分類から外れない生活に戻っていくところもまたなんだか不思議な感じですよね
 まあそれに対しては分類なんか関係ない!ってセリフをスタンやロザリーから聞けるんですけどね
 最期までテーマ性も世界観も素晴らしい作品でした

気になるところ

 世界観に対してガチのゲームシステムがあまりにも粗と穴だらけ
 こっちは狙ってない粗と穴
 まずシンボルエンカウントシステムなのにうじゃうじゃシンボルが湧いて囲まれていまい強性的に戦闘に巻き込まれるのでこれランダムエンカウントと何も変わりません
 しかもそれでもなんとか回避を続けていてもそのうち主人公の足より速いシンボルが追いかけてくるのでもう逃げようがありません
 しかもこのシンボル動いてなくても関係なく虚無から湧いてまっすぐに主人公に迫って来るのでマップ探索の一瞬のスキが命取りなんですよね
 MAP内の美しいビジュアルのアレコレをゆっくり見る余裕もない
 次に視点
 もうこの視点があまりにもひど過ぎる
 大体壁が画面いっぱいに映ったりして何も見えないみたいなのがそこらじゅうで発生するし死角に敵のシンボルが湧いたりするのでひたすらストレスが溜まります
 さらにそんなストレスの中ダンジョンのギミックも非常に乏しい
 基本的に特定の敵を倒す・スイッチを押すの二つしかギミックがなく探索がかなり作業になっています。
 ダンジョン攻略が楽しいかと言われると前述のシンボルエンカウントもあってぶっちゃけ苦行に近いです
 幸いなのがレベル上げ自体はそこまで理不尽じゃない点
 ちゃんと適正レベルに上げれば普通に攻撃通るし、少しレベルが低くてもちょっと頑張る程度で倒せるし経験値の入手量も格上相手だとかなり多いのですぐ適正レベルに上がれます
 まあそのレベル上げのさなか所持金を3割ぐらい強奪して即逃げるみたいなスリの銀次みたいな敵が出てきて普通にストレスマッハになるんですけどね初見さん
 あとはダンジョンマップが一度ダンジョンの外に出ると記載内容がリセットされたり一部障害物はマップに記載されないため難易度ぶっちぎりの迷路になったりとまあマップ関連は非常に欠点が多い
 ただこれ一つ擁護するとこのゲームPS2のRPGとしてはかなり早い段階のゲームでしてキングダムハーツやFF10などはこの後
 視点移動の技術もかなり黎明期だったらしいです
 このゲームがあったからこそのちのゲームがなんていう人もいるくらいなのでまだまだ当時の意欲作的な立ち位置だったと考えられます

総評

 問題点とか関係ないんだよ!
 やれる環境ならば君はやるべきだ!!!
 この小さな世界の大きな物語を君も!!!

 ということで今回はここまで
 決して無敵で完璧な神ゲーではないけども
 遊んだ人の心に深く刻まれるそんなゲーム
 ボクと魔王は素晴らしいゲームなのでした
 だからソニーさんリメイク的なの出して

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