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Vol.25 想像力の欠如例 その1

前回の「Vol.24 風土変革もビジョンドリブンで!」の最後に、コンサバで変わろうとしない風土の根本要因は「想像力の欠如」だと書きました。
そのような組織では、かなり異状なことでも、そんなに悪い状態ではないという空気になっています
今回は過去にそう感じた事例を書きます。


いまだにガラケーという異状

私がいた会社では、社員はいまだにパカパカ携帯(ガラケー)を与えられています。部門により差はありますが、その部門では、社用スマホは課長以上に限定されていました。
では個人スマホはOKかというと、情報セキュリティの観点から禁止です。

これは明らかに時代遅れです。それどころか異状なことです。
日常生活はほぼ100%スマホです。ガラケーを使っていたのは遠い昔です。
スピードや効率が雲泥の差であることは明らかです。
それが、平日は家にいるより長い会社生活が、10年以上前の時代と同じ状態にあるのです。
とても正常とは言えません。(どちらが幸せなのかというのは置いといて。)

スマホは業務効率向上に大きな役割を果たします。
しかも今やスマホは、ガラケーより月額で1,000円ほど高いだけです。
特に近年はチャットツールが浸透し、通話するのは来客時ぐらいです。
ほとんど使わないガラケーを持つぐらいなら、1,000円アップでスマホを持つ方がはるかに有用です。
明らかです。容易に想像できます。

残念な発言

そういう状態に危機感があり、私はスマホ所有者を増やすよう部長に進言したことがあります。業務効率の向上についても説明しました。
以下はその時の部長の言葉です。

「社員がスマホを使うと、業務管理が難しくなる。
  サービス残業を増やすリスクもある。」
➁「スマホは事業部長決済だ。必要性の説明ができない。」
③「自分はスマホを使っていて良いと思ったことがない。
  むしろガラケーに戻して欲しいぐらいだ。」
④「1,000円の価値があるのかわからない。」


やらない理由を並び立てる典型的な例です。
営業など他の部門では部課長以外も社用スマホを持っていたので、そもそも①や➁は理由になっていません。

でもそれ以上に、③や④の会話がかみ合わず、恐ろしいほど「想像力が欠如」していると感じました。

直感的な話

難しい話ではなく、シンプルに、直感的に考えても簡単なことです。
ある程度の年齢の方であれば、日常生活では、この15年ぐらいの間に、パカパカ携帯の時代を経て、スマホを使うようになっていると思います。
そしてその便利さを身をもって享受しています。

明日からガラケーに戻してくださいと言われて、喜んで戻す人はほぼいないでしょう。

なのに会社ではガラケーでよいなんて、とても理解できません。

スマホがない世界

スマホの効力は絶大です。典型例が写真や動画です。

スマホがないと、業務でちょっと手元の写真を撮っておきたいときや、ホワイトボードの写真を撮りたいとき、以下の手順となります。

 ①ダイヤルキー付きの管理箱からロッカーの鍵を持ってくる
 ➁ロッカーに管理しているデジカメを、帳票に記名して借りる
 ③ロッカーに管理しているSDカードを、帳票に記名して借りる
 ④写真を撮る
 ⑤PCに写真を取り込む
 ⑥デジカメとSDカードを返却する

会社では備品やメモリの管理が非常に厳しいので、家よりもさらにメチャメチャ不便です。
結果、面倒なので写真や動画を撮らなくなります
そうなると、ホワイトボードは改めてメモにおこさねばならないですが、写真を撮るのと同じぐらい非効率です。
また、業務の写真や動画が減ると、報告など情報の質が大幅に低下します。
なによりも、社員のストレスが増大します。
これは、組織運営にとって大きなマイナスです。

さらに、この不便が改善されない限り、禁止してもイタチごっこになるし、徹底すればするほど社員のストレスが増えます

部門長なら、これはさすがに放っておけないという考えに至って、重い腰でも上げてほしいものです。

スマホを持つべきはむしろ若手

この時の会話で気づいたことがあります。
逆に部長はガラケーで十分で、若手社員にこそ社用スマホを持たせたらよいのではということです。

③や④のような発言が出るということは、つまりスマホを使いこなしていないということです。それどころか、いつでもメールやチャットが見れて会議ができるということも面倒だと思っているわけです。
そういう人は、社内で写真や動画を撮る機会が少なく、活用も限定的です。
スマホの価値を十分に発揮できません。

これは仕方がないことです。
一般的には役職が上であるほど年齢も高くなります。
スマホは若い人ほど使いこなしています。

なので、若い世代がスマホを持つ方がよっぽど価値があります
思い返すと、スマホを持ち始めたときや、チャットが導入されたときに、若い課長達が、どんどん新しい使い方を試す、ということが起こっていました。

若い人の方が、チャットや会議をスマートにこなしてくれるでしょう。
そういえば、ITベンチャーとの連携作業で、スマホでTeamsをトランシーバーのように使っている中で、うちの社員だけがノートPCを抱えて走り回っていて惨めだったことがありました。

写真や動画も、タイムリーに共有してくれるでしょう。出張でもライブ配信が当たり前になるでしょう。
そういえば、海外の展示会出張で、スマホ比率が高い部門はリアルタイムに写真をアップしてQ&A対応していたのに対し、うちの部門は帰国1週間後にパワポの出張報告が回ってくるという残念な状態でした。

心理的安全性の視点

ついでに「Vol.9 風土改革は「心理的安全性の確保」で一点突破」に書いた通り、提案に対する冒頭のような回答は、心理的安全性の観点からも好ましくありません。
社員のモチベーションを著しく低下させるということも想像してほしいところです。

まとめ

今回はスマホを例に、想像力の欠如とはどういうことかを書きました。
スマホについては、もう一つ事例があるので、次回紹介します。
私は最近、この想像力の欠如が組織を硬直化させて進化を妨げている真因ではないかと強く思うようになっているので、しばらくこのネタが続くかもしれません。


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