研究書評「財政とスポーツ産業の可能性」
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今回、何が現在のスポーツDXを行う上で、問題となっているのかという点についてブラッシュアップしていきたい。その中で、その課題が今後解決していけるのか、また、スポーツ産業の可能性の見込みという部分も検討しながら考察していきたい。
まず、日本のスポーツビジネスにおける課題として、
〇市場規模が国内にとどまっている
〇優秀な人材が不足している
〇イノベーション不足とスピード不足
の3点が主に挙げられる。
市場規模が国内に留まっている
日本と世界のスポーツビジネスの売上高が10倍以上も違うのは、グローバル展開ができているかどうかによるもの。日本国内では人気の高いスポーツであっても、地球規模でファンを獲得する段階には至っていなければ、その分、市場は小規模になってしまう。実際に試合を見に行けなくても、テレビで試合を観戦したり、グッズを買いたいと思ってくれるファンを作ることが今後の課題である。
優秀な人材が業界に不足している
FC バルセロナなどの世界的なビッグクラブは、世界のトップ企業出身のビジネスマンなどがヘッドハンティングされて集結している。優秀な人材が集まる秘訣は、責任感と面白みのある仕事ができて、多くの収入が保証されているため。それに比べ、日本のスポーツビジネスは、まだまだ魅力的な職場だとは認識されていないよう。グローバルな展開を目指すなら、国際的に活躍してきた社員や外国人社員を採用する方法も有効だが、日本のプロ野球界では、社員の多くがオーナー企業からの出向であるなど、人材採用に消極的である。このような現状を打破することが、日本のスポーツビジネスの成長につながるかもしれない。
イノベーション不足とスピード不足
スポーツビジネスには、状況に応じてスピーディに対応する力が必要であり、Jリーグにおいては、時代に合わせてテレビ中継から動画配信サービスへ移行したことで、その経営が大きく改善した。その点、プロ野球などは旧態依然とした状況からまだ抜け出せていないように見え、放映権においても、地上波から有料テレビ、テレコム、インターネットへと移行してきた。そして、ヨーロッパのサッカービジネスや、MLB、NBA、NFLなどのプロスポーツビジネスが、瞬時にそれに対応し、結果的に急成長を遂げた。
この中で、私が考える主な要因は、一つ目と二つ目であると考える。日本国内においてのスポーツの規模は世界的に見て小さいと言える。今後の新たな可能性として、カレッジスポーツも一つであると考える。アメリカのスポーツビジネスを支えているのは、カレッジスポーツといっても過言ではないでしょう。全米大学体育協会(NCAA [National Collegiate Athletic Association])は、大学スポーツを統括し、各種競技大会の運営管理や大学・学生アスリートの管理・指導・支援などを行っている。NCAAの市場規模は、アメリカ国内だけであるにもかかわらず、約8000億円。年間約1000億円の収益を生むなど、脅威的な規模を誇る。日本国内で注目を集めるスポーツ大会の1つである正月の箱根駅伝もカレッジスポーツであるが、今後の日本スポーツビジネスのテーマとして、グローバルに目を向け、時代の流れに素早く対応するとともに、国内のカレッジスポーツの開発に力を注ぐことが挙げられる。
~参考文献~
「スポーツビジネス」日本の現状と課題と、新たな可能性を紹介│HALF TIMEマガジン (halftime-media.com)
「なぜ日本のスポーツの“産業化”は欧米から遅れたのか」立ちふさがる賭博罪の壁 フジテレビ解説委員 鈴木款|FNNプライムオンライン
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今回取り上げる文献は、スポーツDXのポイントなどが主にまとめられた記事である。スポーツビジネスにおいて、実現していく上で懸念となる点や今後の重要となる部分にスポットライトを当てて記述されている。
まず、国内におけるプロスポーツの収益構造については、大きく4つの収益源で成り立っている。ただ、コロナ禍で無観客や人数制限を強いられるなど大きな影響を受け、中期的には広告や放映権にも影響が出る可能性がある。リアルの感動体験が他の娯楽にスイッチする「スタジアム離れ」も始まっていうという。目先の対策としてライブ配信を始めているプロチームもあるが、収益源を補えるのは上位チームにとどまっており、下位チームや二部リーグの場合にはなかなか根本的な対策になっていないのが現状である。その一因には、視聴プラットフォームの共通化がある。高度なプレーを見たいというユーザーは、上位リーグや海外名門チームを視聴する傾向にあるため、同じ視聴プラットフォームにある下位チームや二部リーグのコンテンツは埋もれがちになる。同じサイバー空間で勝負するというのは非常に難しい。そのため、試合以外で+αの価値や体験を提供する必要がある。
そこで、ファン満足度を向上させるためには何が必要か。スタジアム運営においては、そもそもの機能を見直す必要がある。例えば、ニューヨーク市の歴史あるスポーツアリーナ「マジソン・スクエア・ガーデン」では、年400回以上の興行を行っており、1日に2回の興行も稀ではない。これを可能にしているのは、「ワンボタン」でアイスアリーナとバスケットコートを簡単に切り替えられる設備にある。また、コンサートにも対応できる高音質な音響システムを常設しているため、異業種とのコラボライブイベントもできる。このようにスポーツ以外で価値・体験を提供することでファン満足度を向上させている。
また、コロナ禍の無観客開催にも関わらず売上アップを達成したスポーツとして競馬が挙げられる。コロナ禍で場外馬券の販売が中止されたことを受け、JRA(日本中央競馬会)のインターネット投票会員サービス「即PAT」にアクセスが集中。その結果、新規の加入者数90万人が超え、売上も前年比36%アップしたという。
日本ではあまり馴染みがないベッティングシステムだが、海外では非常に注目されているビジネスで、スポーツの純粋な興行収入より、ベッティングで動くお金の方が圧倒的に大きい事が北米で証明されている。日本においても2024年の合法化に向けた検討が始まっており、DXを考える際には「ベッティングシステム」を組み込んだビジネスモデルを検討すべきと考えている。
地方創生×スポーツは、スポーツ施設をハブとして社会課題を解決しようという取り組みで、代表的な例は、プロ野球の福岡ソフトバンクホークスの本拠地であるPayPayドームである。ここでは、座席が地方のスポンサーによってデザインされていたり、併設ホテルや交通機関と連携したりとドーム周辺が常に賑わうような仕組みも企画されている。このように、隣接ビジネスとデータ連携をしながらサービスの革新を図ることで、ファンを満足させようとしているのである。
また、アフターコロナを視野に「スポーツツーリズム」の仕組みづくりも活発に動いているほか、eスポーツやパラスポーツとの連携も加速している。もう一つ活発な動きを見せいているのは、エデュケーション(教育)領域で、特にアスリート向けには、VRシミュレーターなどデジタルデータを活用したスポーツサイエンスの実践適応が進んでいる。
このように、DXによってスポーツ領域に革新が起きており、テクノロジーが進歩すればするほど、スポーツサイエンスが発展し、デジタルを使った取り組みにより、ファンにも試合観戦+αの価値・体験を提供できるようになると考えられる。その実現性の部分を今後の研究で進めていきたい。
~参考文献~
すでに始まっている「スポーツDX」 テクノロジーと科学で進化するスポーツの現在地と未来 - DX事業 - マクニカ (macnica.co.jp)
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今回の記事では、スポーツNFTの市場規模や活用拡大に向けた展望の可能性についての記事を選択した。PwC米国では、2022年3月に公表した「Sports Industry Outlook 20227」において、メタバースとデジタル資産を組み合わせることで、より多くのファン層に対して新たな市場を生み出すと述べている。PwCコンサルティング合同会社が4月に実施したサーベイ(以下、本サーベイ)において、スポーツNFTに対する認知・関心度や購入実態などを聴取したところ、スポーツNFTに関心がある人は全体の5.8%、スポーツNFTを購入したことがある人は全体の2.0%であることが分かった。この結果を踏まえて市場規模を算出したところ、スポーツNFTの市場規模は1,100億円程度と見込まれます。スポーツNFTに似たジャンルとして挙げられるトレーディングカード市場は1,222億円と言われていることから、おおむね同水準と考えられる。
① 「戦略的にお金を増やしたい」投機に興味がある人
投機に興味がある人が抱える課題として、NFTの購入場所や手順が分からないことが挙げられていたことから、このセグメントにとってNFTに関する主な情報源であるスポーツ団体・組織のウェブサイト等において、NFTの購入場所や手順について発信することが、さらにスポーツNFTを購入するきっかけにつながると考えられる。
②「流行や新テクノロジー大好き」新技術に興味がある人
新技術に興味がある人は、正規ルートだけではなく二次流通・転売等を含めて購入したいと考える人が多いという特徴があることから、法律・税制面のグレーゾーンを解消し、スポーツNFTの二次流通や転売等のプラットフォームを整備していくことが重要と考えられる。
③「集めて楽しみたい」NFTの収集に興味がある人
NFTの収集に興味がある人は、特定のNFTを購入したい割合が高く、他のセグメントに比べてランダムパックで購入したい割合が低いという特徴がある。自分が好きなスポーツ団体・組織や選手のNFTを収集したいと考えることから、このセグメントに対しては、特定のNFTを販売していくことが、NFTをさらに購入するきっかけになると考えられる。
④「娯楽大好き」スポーツ・アート・ゲームに興味がある人
スポーツ・アート・ゲームに興味がある人は、スポーツNFTの年間購入金額が他のセグメントに比べて低いという特徴がある。前述したとおり、1回でも購入した経験があれば、今後の購入意向が高くなることから、このセグメントには、初回の購入を促すような施策が重要である。例えば、投機に興味がある人と同じようにNFTの購入場所や手順について発信したり、金額が低いNFTパックを販売したりすることが考えられる。
また、このセグメントでは、購入したいスポーツNFTとして、試合中のハイライト映像の他、SNSでの二次利用・チケット機能等の付帯機能を持つものを回答する割合が高かったことから、スポーツNFTに付帯機能を持たせていくことも有効と考えられる。
~参考文献~
スポーツNFT市場の現状と国内における活用拡大に向けた展望―コンテンツビジネスからファンエンゲージメント戦略へ― | PwC Japanグループ
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今回は、前回取り上げたスポーツDXのデジタル資産について、理解と整理を進めていきたいと考える。その中で、ブロックチェーン技術が発展・拡大しており、スポーツでも、そのコンテンツ力をブロックチェーン上のデジタル資産とすることで、ファンエンゲージメントの手段とするサービスが広がっている。まず、ブロックチェーンとは、簡単に説明すると「取引履歴を暗号技術によって過去から1本の鎖のようにつなげるかたちで記録する」仕組みである。各取引の記録は、その取引の記録と、各ブロックを接続させるための情報(前の取引の情報など)で1つの塊(ブロック)として構成され、ブロックチェーンとは、このブロックが複数連結されたものを指す。
参考文献
ブロックチェーンとは?仕組みやメリットをわかりやすく徹底解説|気になるお金のアレコレ:三菱UFJ信託銀行 (mufg.jp)
20221207_2.pdf (meti.go.jp)
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今回はスポーツDXについて、スポーツ庁の「スポーツDXレポート」を参考に資料をまとめ、自身の理解を深めて整理していこうと思い、この文献を選択した。そして、スポーツDXがもたらす可能性についても検討しながら、財源確保のレベルでの収益を上げられるのかについても考えながら研究していきたい。
まず、一般的に「スポーツDX」と聞いて頭に思いつくのはDAZNなどのリアル中継型の有料TVなどである。他には、データビジネスというファンタジースポーツや海外スポーツベッティングなどがある。そして、デジタル資産などのスポーツトークンなどである。
1つずつ整理していくと、放送・配信などのビジネス状況は、リアルタイム視聴に価値をもつ映像コンテンツとして評価額が高騰している。しかし、放映権の販売や映像制作をどのようにするのかによってビジネス展開の幅が決まってくるのではないかと考えられる。
次に、スポーツにおけるデータ活用については、ビックデータやAIの活用が進む中で、「スタッツデータ」と呼ばれる試合に関するデータや機器を使って取得する詳細なプレーに関するデータなど様々なデータの活用が進んでいる。「スタッツデータ」は、リーグやチームが選手強化や戦術に利用するのみならず、メディアやゲーム会社など、様々な主体がそれぞれの方法で活用している。また、ファンタジースポーツの運営会社は、コンテンツホルダーであるリーグやクラブと、画像や映像の使用権・試合に関するデータ等に係るライセンス契約を結んだうえで、データ分析・加工を行うデータプロバイダーを通じるなどしてデータ等を入手し、アプリ等を介してサービスを展開しているのである。最近では、NFTトレーディングカードを用いて行うファンタジースポーツも登場している。
そして、デジタル資産に関してはNFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)とは、「偽造不可な鑑定書・所有証明書付きのデジタルデータ」のことであり、ブロックチェーンの技術を用いて発展したものである。従来、容易にコピー・改ざんができるため、資産価値を持ち難かったデジタルデータに、資産価値を持たせることが可能になり、アートやゲーム、スポーツなどの幅広いカテゴリーにおいて活用されている。スポーツでは、スポーツの持つコンテンツ価値の商品化手段が広がるという利点のみならず、ブロックチェーン技術で可能になるスマートコントラクトを活用することで、コンテンツホルダーであるリーグやクラブ、選手等への収益還元が容易になるという点も利点といえる。
このように大まかではあるがスポーツDXについて今回軽く整理したが、基本的にはテクノロジーの発展に伴う現代の技術の有効活用であり、過去にはできなかったものばかりであるため新たな収益につながる可能性は十分あると考えられる。そのうえで、どのようにして日本の国の財源として、政策として行っていくのかがカギになってくると考えられるため、その点について今後の研究で掘り下げていきたい。
参考文献
20221207_2.pdf (meti.go.jp)