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『印象・日の出』の感動体験
今がたまたまなのか、それともずっとそうなのか。パリの空は来る日も来る日も曇り空だった。
1週間に及ぶパリでの滞在の最終日も、当たり前のように空は厚い雲で覆われていた。
ホテルを出発し、もう日常になったパリの風景を進み、メトロに乗りこんだ。
今回向かったのは、マルモッタン・モネ美術館。旧マルモッタン邸を改築して作られた美術館には、パリを代表する画家クロード・モネの作品が多く展示されている。
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僕がこの美術館に来た理由はひとつ。
以前の投稿にも書いた通り、モネの代表作のひとつ「印象・日の出」を見るためです。
この作品はモネやルノワールなど、のちに美術史に名を残す画家を多く抱えた「印象派」の名前の由来になっていることで知られています。この作品を皮切りに美術史は新時代に突入したとも言われています。
ぼんやりと知っていたこの作品も、調べていくうちにどんどんハマっていき、パリに行くなら絶対に見ておきたかったものとなりました。ついにこの瞬間を迎えられて背筋が伸びる思いでした。
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朝10時過ぎ、寒空の中、決して安くない14ユーロの入場料を払って美術館に入ります。
美術館は名前に「モネ」を冠しているものの、モネに限らず、印象派画家のさまざまな作品が展示されていました。それらをじっくり見て、気持ちを高めていきます。
「印象派」と一言で言っても、画家によって作風は大きく異なります。うまく言葉では表せないけれど、画家それぞれに味があって、どの作品もその画家の味に乗っています。
絵を見て自分がどう思ったか頭の中で深ぼっていったり、その作品や画家のエピソードを関連づけて、作品をより深く理解します。これらを重ねていく時間がとても楽しい。
ある程度を見ていった先に日の出に関する作品を並べた特設展があります。解説文を読んでいくと、この中にあの作品があるようでした。
「印象・日の出」が世に出る前から、この世には日の出を描いた作品はいくつも存在していました。大自然の美しさを鮮明に描いた作品は、人々の心に深く刺さり、日の出というこれからの躍動を期待する気持ちも連想されます。
それらの作品たちを見ていくうちに突然目の前に現れました。
印象・日の出
Impression, soleil levant
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ぼんやりとしたピンク、青、緑などの淡い色で描かれた海と空、そして港の工場群。その向こうに見えるオレンジ色に輝く太陽。
フランス北西部の都市、ルアーブルで過ごしていたモネがふと東の空に見た日の出の瞬間を捉えた作品は、のちに美術史に大きな影響を及ぼすことになります。
朝方のぼんやりとした時間は優雅でのどかな気持ちとなり、この抽象的な絵にもその気持ちが表れています。モネが表現したかった心の中の自然の姿を見事に描いた作品は、当時の批評家から「印象的だ」と非難を受けてしまいます。
そこからインスパイアを受け、作品名が決まり、そして一派の名前にもなりました。
歴史を変えた一枚を前に、僕の気持ちは大きく揺れ動きました。
それまでの時代に主流だった貴族を描いた高貴さはないものの、気持ちの中にすっと入り込んでくる優しいタッチ。加えて、直近で見たり、角度を変えることで、見え方がいろいろと変わっていく独特のタッチ。
それらが重なってこの作品の良さをじわじわと認識していきます。
想像を裕に超えてきました。震える気持ちでした。
アートを好きになってから、僕の中での美術への関心は日に日に高まっていっています。特にモネの絵は、僕の気持ちを揺さぶっていきます。
この体験ができただけで、僕はパリに来た意味をひとつ見出せたと思っています。
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モネの作品をたくさん見て改めて僕はモネが好きだと感じました。自然の壮大さを描いた作品たちはどれも美しく見えます。
特に、水を使い、水面に反射した様子を捉えた着眼点には、斬新さと美しさを感じます。連作「睡蓮」では、時を追うごとに睡蓮と橋から水面へフォーカスが移動しています。
「印象・日の出」では、空の広大さではなく、水面に映った太陽がメインに描かれています。そうしたところからも、この作品が及ぼした影響を見ることができます。
見たかった絵を見た時に感じたあの感覚は、1枚の作品で1回しか訪れないでしょう。だから、こういった感動には限界があるのかもしれません
でも、ここで感動を味わえたことが嬉しいし、夢を叶えることでまた違った夢が出てくるものだと思います。
僕にとって日の出とは、ひとつ今後を決める重要ワード。この感動体験をきっかけに、また深く考えていこうと思います。
自分らしい人生を歩んでいきたいという気持ちがまた芽生え始めました。
僕のことは以下の記事で紹介しています。
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それでは、また明日お会いしましょう!