スタッフ50人までの小さな会社のための実践的“ビジョンを実現する「人財育成の仕組み」④
0.ごあいさつ
こんにちは。いつもnoteを読んでいただきありがとうございます!
(株)クルージズ・テクノロジーズ 代表取締役の牟田健登と申します。
弊社は、「人や企業の夢やビジョンというゴールまでの航海」を「航海」という意味の英語のクルーズ(cruise)に複数形の「s」をつけて、クルージズというし、その航海を、テクノロジーの力を使って再現性あり、簡便な方法で支援する、という想いで社名を名付けました。
特に、小さい企業の経営理念づくりや、経営計画の実現のための制度づくりとその活用を通じて、ご支援しております。
そのご支援の経験を活かし、この度、『スタッフ50人までの小さな会社のための実践的“ビジョンを実現する「人財育成の仕組み」』というテーマで全7回に分けて、執筆させていただきます。
今回はその第4弾となります。
第1弾はコチラ :「小さな会社の定義」
第2弾はコチラ : 「5つの悩みと目指すこと」
第3弾はコチラ : 「解決出来ない経営者の共通点」
4.目指すべき「人財育成の仕組み」:クルージズサイクル
前回の振り返り
つまづいてしまう経営者さまの共通点はこちらの5つでした。
①経営理念や行動指針などがない
②あったとしても、言わなくても分かると信じている
③昨対など、過去から考えた目標設定をしている
④人財育成の仕組みや、頑張りを報いる仕組みがない
⑤制度を作っただけで満足している
これら5つが、つまづいてしまう経営者さまの共通点です。これらの課題があるままでは中々悩みを解決し、 経営者自身の自己実現や、社員の幸せ、 会社や事業の維持・継続・成長を実現することは難しいでしょう。
またこれらの課題が解決なされないままに、採用活動を進めてしまうと、組織の規模が大きくなり、目が届かなくなり、声が届かなくなり、状況を把握することも難しくなり、より課題解決が難しくなります。
目指すべき人財育成の仕組み
従業員の規模が大きくない、小さな会社のうちに、目が届かなくなる前に、声が届かなくなる前に、課題解決へのスピード感が遅くなる前に、目指す 理念や経営計画と育成の仕組みを早期に整えていきましょう!
実際に小さな会社で大きな成果を出し、理念の実現がなされている企業に共通する仕組みをシンプルにまとめたものです。
こちらは、従業員の規模が小さいと出来ない難しく複雑なことではなく、小さな会社だからこそ出来るシンプルかつ効果的な仕組みです。
このnoteでは、弊社のこれまでの実績やノウハウ、から、この仕組みをつくり、活用する方法を後半で述べていきます。なお、これらの書籍などからも近しい内容を学べますので、このnoteを読み終わった後、併せてご覧になってみてください。
①『小さな会社は経営計画で人を育てなさい!』
山元浩二 (著)
②「新版 経営計画は1冊の手帳にまとめなさい」
小山 昇 (著)
③『1000人の経営者を救ってきた コンサルタントが教える 社長の基本』
三條慶八 (著)
この人財育成の仕組みを効果的に導入し、活用するためのステップとして3段階あります。
①理念とMVVを明示し、継続する
②シンプルな経営計画書を作成する
③経営計画書と連動した人事制度を整え、活用する。
このからは、この3つについて、より詳しく説明を加えます。
①理念とMVVの明示とその継続
(1)理念やミッション・ビジョン・バリューをつくること
理念とは、経営理念です。MVVとは、ミッション(Mission)、ビジョン(Vision)、バリュー(Value)、これら3つの略です。創業オーナーの経営者であれば、何かしらの自身の強い想いや、アイデア、ポリシーなどをもとに会社を起業したはずです。特に、企業理念とは「経営者の強く熱い想い」です。起業された際には「いかにして商品をつくり、集客し、販売するか」から始まり、いかにして従業員を採用するか、などを考えられたことだと思います。
(2)ミッション
そして、「なぜ」それをやるのか、ということの答えが「ミッション」や「理念」となります。「ミッション」とはつまり、「目的、使命、存在意義、役割」です。「働く理由」とも言えます。これが無いとただの「お金もうけのため」となり、これが理由では、ほとんどの場合、長続きしないでしょう。もしくはそもそも1つも売れない、(お金をいただけない)かもしれません。「働く理由」が明確になっていれば、事業を起こす際の起業家が起業する理由になります。そしてそれをしっかり伝える事が出来れば、従業員にとっても「働く理由」になるでしょう。
具体例を見てみましょう。世界トップの企業の1つ、Google社のミッションはこうです。
これがGoogleのミッション(働く理由)であり、実際に商品・サービスもこれを実現するためにあると感じられると思います。「ミッション」が組織のメンバー全員に共有され、同じ言葉が言えるようになると全員が同じ理由で働くようになります
(3)ビジョン
そして、その働いたその先にあるものが「ビジョン」です。「理想像、未来像、見通し」と言うのが直訳ですが、「ビジョン」とは「働いたその先にある実現したい未来」と言えるでしょう。
「働く理由」が明確になるだけでは、その働き切ったその先にどんな未来があるのか、イメージすることが出来ません。もしかしたら、途中で挫折するかもしれません。ワクワクしないかもしれません。働き切ったその先にどんな未来があるのか、イメージしたらワクワクするようなゴールがビジョンとして表現されることが望ましいでしょう。
(4)バリュー
そのゴールへと進む日々の中で、右へ行くべきか、左へ行くべきか、進路に迷うことが多々起きます。例えば、商品の作り方、商品の原材料、商品のネーミングやPR方法、営業時の提案方法、お客様を前にした際の言葉遣い、身だしなみ、チームのメンバーとのコミュニケーション、取引先の選定など、「働き方」全てを決める基準、つまり価値観を「バリュー」と呼びます。人が物事の判断をする「価値観」が重要な判断材料となります。
では、再度、Googleを例に挙げます。Googleの「バリュー」はこうです。
バリューは、ミッションやビジョンというゴールへと進む日々の中で、右へ行くべきか、左へ行くべきか、進路に迷ったときの判断軸となります。「こっちへ行くべきだ」という羅針盤になるわけです。なお、「働き方」なので、ミッション・ビジョン・バリューの作り方として、「バリュー」が先に生まれるということもあり得ます。つまり「このような働き方をする」と決め、それを叶えるため、もしくは、その働き方を続けた先にある理念やミッション・ビジョンが見えてくるためです。
明示し、継続する
ただし、こういった経営理念やミッション・ビジョン・バリューはつくるだけでは意味がありません。具体的な言葉にするのは当然、そして、経営者の中に留めることなく、全社員に共有することが必須です。「共有する」といっても年に一度の社員総会などで共有するだけでなく、毎日のように共有し続けましょう。
特に、弊社として現在もっとも大事だと考えているのが、「バリュー」です。バリューは日々の働き方、全ての基準となります。そのため、日々、右へ行くべきか、左へ行くべきか、進路に迷うことが発生しえます。例えば、挨拶、身だしなみ、言葉づかいなどです。この基本となることから、あるべき姿を示すことが非常に重要となります。もし、あるべき姿と異なることが発生したら適宜、指摘して伝えないと、基本となるマインドや行動の部分から、組織がバラバラになってしまうからです。
これを何度も何度も継続していくことで、組織のみんなが同じ方向に向かっていけるようになり、「人財育成の仕組み」の基礎が出来ていく、というわけです。
②シンプルな経営計画書の作成
ミッションビジョン・バリューなどを実現するために、どうすればよいか、経営計画書に落とし込んでおくことも合わせて必須です。
共有するための方法として、よく全社員で「毎日、唱和する」などよく取り組まれていることがよくあります。そうすれば、確かに、覚えることは出来るかもしれません。ただし、大事なことはテストのように覚えるのではなくて、実行することや実現することのはずですので、それだけでは足りないのです。
経営計画書というのは、いわゆる銀行から融資を受けるための数値的な事業計画書ではありません。もちろんそれも大切なことです。しかし、従業員に経営理念やミッション・ビジョン・バリューなど、会社の方向性を示し、その実現のためにと動いてもらうための経営計画書が必要です。それこそ、「毎日、確認する」ことが出来るものです。
経営理念やミッション・ビジョン・バリューも、言葉だけではただの机上の空論、絵空事になってしまいます。それをいかにして叶えるか、体現するか、具体的な数字、戦略戦術を持って示しておくことが大切です。
理念やビジョンなどは数年で叶えられるものは無いでしょう。また、人間の性質上、あまりに短い期間での目標やビジョンだと、未来にワクワクすることが出来ません。そのため、最低でも5年先までの経営計画があると、従業員側としても、「今、頑張った先にこんな未来が待っている」と、ワクワクすることになるでしょう。
新型コロナウイルス、ロシアによるウクライナ侵略、テクノロジーの進化、人口減少など、様々な外部要因、社会の変化があり、「5年先なんてわからない」から、「5年先までの経営計画なんてつくれない」と考える方もいるかもしれません。ですが、そういった社会状況、時代を知り、未来を考えた上で、「自らこうありたい」と宣言することは出来るはずです。雇用する社員、そしてその家族の生活を守っていく経営者が未来なんてわからない、と言っていたら、社員や社員の家族も不安になってしまいます。「こんな社会の状況だからこそ、我々はこうありたい、こうあるべきだ」と示していかないとなりません。
また、その経営計画書は何百ページにも及ぶ、非常に複雑で難しいものにする必要はありません。経営計画の目的は、「会社の発展と、会社を担う人財育成」であり、大事なことは、その内容を理解し、実行していくことです。あまりに難しかったり、複雑だったり、長文だと覚えられない、意識出来ない、となってしまいますので、極力シンプルなものでよいでしょう。
経営計画に入れておくべき内容は以下の通りです。
①経営理念とミッション・ビジョン・バリュー
会社がなんのためにあるか、何を目指しているか、どう目指すか
②人事理念、方針
その理念などを叶えるために、あるべき人材の姿、育成方針など
③5ヵ年事業計画
理念を叶えるために必要な利益、売上、投資(コスト)の計画
④現状の課題と解決し、事業計画を達成していくための具体的な戦略戦術
未来の結果だけでなく、その未来と現状の乖離、そしてそれの課題を解決していくための具体的な行動の内容
この4点がそろっていれば、全体で同じベクトルを向いて動いていけるでしょう。経営理念やミッション・ビジョン・バリューは覚えるものではなく、実行していくもの、そして、実現すべきものです。それを達成していくための計画が出来たら、今度はさらに人事制度までにも繋げていきましょう。
こちらは弊社クライアント様の経営計画書をコンパクトにまとめたものです。千葉県のとある焼き肉店様です。(特定出来ないように伏せている部分がございますがご了承ください。)
理念やビジョン、価値観を示すだけでなく、その実現のための中期ビジョンまでを示されていらっしゃいます。このような経営計画と同時に、人事制度の構築も非常に大事なことです。
③経営計画書と連動した人事制度の構築
突然ですが、「大企業にあるけど、中小企業にない部門」って何だとおもいますか?本当に大きな企業だと、法務やIR、情報システム部など様々ありますが、その中でも最も重要な部門が「人事部」だと考えます。
というのも、人事とは「人をもって事を成す」ということだからです。「事(こと)」とは、事業のことです。
人事の役割を最小限にまとめると「採用」・「教育」・「評価」の3つです。しかし、多くの場合は、「総務部」や「事務」という部門(部門としても定義されていないことが多いです)の方がその役割を任されています。その方々はその他に、財務経理や労務などの業務も担っており、「事を成すため」に非常に重要な役割であるはずの人事の業務が片手間で行われているのがほとんどなのです。
これでは、どれだけ時間や労力をかけて経営計画を作ってもに、それを叶えるため、達成するために必要な人材の採用も出来ないし、より成果を出してもらうための教育も出来なければ、頑張ってくれたスタッフを評価してさしあげることも出来ません。会社に合わない人が採用されたり、そもそも採用が出来ない、応募も来ない、教育が現場のマネージャー(管理者)任せになって現場に負担がかかったり、時間をかけて育てても、すぐに辞めたり、という悪循環がおきてしまいます。
そういったことを起こさず、「人財育成の仕組み」づくりとその目的である理念やビジョンなどの実現のためにも、人事の理念や方針を定め、人事部をつくっていくことが非常に有効です。
人事理念や方針の中でも、特にこのようなことを定めておくとよいでしょう。
(1)自社の社員はどんな人材であるべきか
経営理念や計画を叶えるためにも、社会人として、ビジネスパーソンとして目指してほしい人物像
(2)社員にはどんな状態になってほしいか
そんな人物像に近づいた先に、どんな暮らしや幸せが待っているか
(3)あるべき人材像と現在の人材像との差は何か
現在の人材における課題
(4)その課題を解決するために、会社として取り組んでいく人事戦略
例えば研修や制度などどんなことに取り組んでいくか
(5)具体的なプロジェクトスケジュール
いつどんなことを実行していくかの具体的なステップを示した工程表のようなもの
これらがあることで、机上の空論、絵に描いた餅ではなく、具体的な実行までが明確になり、現実性も増します。これらを取り組んでいくことで「人材」ではなく「人財」に変わるまさに、「人財育成の仕組み」となり得ます。