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君はRadiate Recordsを知っているか?

 ニューロックも遠い過去となり英米でパンク・ムーブメントが吹き荒れた後、パンクの持つDo It Yourselfと剥き出しのスピリットから続くニューウェーヴ旋風は、日本にも数年遅れ到着し東京ロッカーズを中心にインディーズ・シーンが活性化し80年代の日本のアンダーグラウンド・ロックシーンの最盛繋がり、ナゴム、キャプテンなどのインディーブームを産んだが、パンクスピリットこそ共通点はあるものの、これらのインディーズブームは一線を画し、1977年デビューしたThe Jam、1979年公開の映画「さらば青春の光」を触媒にイギリスに出現したモッズ・リバイバルと呼応した東京版モッズ・リバイバルから生まれたインディー・レーベル、Radiate Recordsを君は知っているか?

 前述の通りイギリスのモッズムーブメントと同じくThe Jamや「さらば青春の光」の影響を大きくうけた東京のモッズ・ムーブメント、今は無き新宿JAMを中心にライブハウスカルチャーの1つとして現れ、後にイギリスのモッズと同じようにクラブ・カルチャーへ発展し現在まで規模世代を超え、2021年現在コロナ渦でもその灯火をつないているが、そのムーブメントごく初期、現在でも続く東京のモッズの中心的なイベントであるモッズ・メーデーを主催する黒田マナブ氏が1984年に設立した東京初のモッズ専門レーベルがRadiate Recordsです。

 1984年から90年までにアナログ・レコード、7、12インチ、LPそしてソノシートを6作品、カセットテープ4作品をリリースした後、黒田氏が92年に新レーベル「Lovin' Circle」をFile Records傘下で始動するとRadiate Recordsの動きは止まるが、そのモッド・スピリットはLovin' Circleへ受け継がれ様々な音楽スタイルと共に発展し東京のクラブカルチャーへの影響を与え、後に語られる所謂「渋谷系」と呼ばれる様なアーティストや作品へ繋がる形も見せるが、ここでは東京のモッズ族の中から現れたバンド達のプリミティブな魅力が発揮されたアナログ・レコード作品を紹介したいと思う。


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FACE 001 LES ENFANTS TERRIBLES V.A (7インチEP) 1984年
A1. Be My Girl Friend / The Page Three
A2. One Way Street / The Brooks
B1. Hello My Friend / The London Times
B2. Girl In The Dream / The Standards

 Radiate Records記念すべき最初の作品は、黒田マナブ率いるThe Page Three、後にHigh Styleへ発展する真島"卍"正則が率いるThe Brooks、フレデリックとしてメジャーデビューも果たす片岡健一率いるThe London Times、東京のThe Jam的な存在で映像作家の北岡一哉氏なども参加していた東京モッズの顔役が結成したスクーターチーム「Numbers」のエースであった白男川元率いるThe Standardsの4バンドが収録されているスプリット7インチです。

 どのバンドも80年代のハイファイな機材に対抗するようなロウファイ録音といったサウンドになっており、その下敷きになっているのがThe Jamをはじめとするモッズ・リバイバルグループのレコードというのは言わずものがな。

 シャープなギター・カッティングのイントロから目当てのガールを追いかけスクーターで駆け抜けるモッズの情緒詩が歌われるThe Page Threeの「Be My Girl Friend」は80年代的なビートロックですが、コーラスワークやギターのアルペジオに60年代のビート音楽の匂いを感じる切ないラブソングです。
続く、The Brooksの「One Way Street」で展開される世界はその後のHigh Styleと通づるPOPセンスに溢れるメロディアスな楽曲です。イントロのドリーミーなアレンジ、ラララコーラスのキャッチーさコードワークはフォークロック的でもあります。

レコードをひっくり返B面を聞いてみましょう、The London Timesの「Hello My Friend」はシンセサイザーが導入され「シンプルなビートにのって」の歌詞と反して凝ったビートの展開がトリッキーであったりサイケデリックな雰囲気もありヴォーカルの悲痛な歌声が非常にエモーショナルです。このテイクでは後に Page Three/The I-Spyに参加する国本ユミがキーボードを担当。
The WhoやThe Jamと通じるジャカジャーンギターのイントロから切ない思いをメロウに歌うパワーポップナンバーThe Standardsの「Girl In The Dream」。疾走感とメロウが上手く同居しラララコーラスと共にティーンのモヤモヤとした感覚が風の様に駆け抜けます。


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FACE 002 THE SONG FOR DINOSAUR! The Bike (ソノシート) 1985年5月
A1. 僕は問題児
A2. 僕は恐竜
B1. 恋のカレードスコープ
B2. Too Much Romantic!

 4バンド収録の1st EPに続くリリースは、83年と84年のモッズメーデーの様子を録音したカセットテープのリリースを挟みソノシートながらも1バンド単独のレコードリリースとなった。1980年に結成され84年ごろ東京モッズのライブイベントに登場した埼玉の3ピースモッズバンドThe Bike、ベース・ボーカルの加藤ひさしのソングライティングや歌声はインディーズには収まりきらないメジャー感のあるスケール感を持ち、後にThe Bikeは発展解消的解散。加藤ひさしはthe Collectorsを結成しメジャーデビューを果たし2021年現在結成35周年を迎えるバンドになります。このソノシートではThe Collectorsでのメジャーデビュー後にも録音され今でも歌われる曲が収録されているも、The Bikeというモッズビートバンドとしての荒削りな演奏と歌声により後に続く才能の片鱗を見せる貴重な瞬間を切り取った作品となっている。加藤ひさしのペンによるリリックの少年のロマンティシズムとSF的世界観については、様々な媒体で多く語られているので、ここではあまり書きませんが、この時点でその世界観は完成されております。

 ゲームセンターの騒音SEを導入に始まる「僕は問題児」はこの後リリースされるものよりもパンキッシュでイントロのパンチ力も強いものになっています。また歌詞もThe Collectorsでの録音と一部違うものになっています。パーカ姿のモッズを恐竜に見立てたセンチメンタルな「僕は恐竜」のここでのテイクは、3ピースバンドが歌うロックバラード的な色合いが強くビートの効いた演奏が憧れの時代への思いを伝えます。

 跳ねたビートが心地よいダンスナンバーの「恋のカレードスコープ」も後の録音よりもモノクロームな空気感と重さが非常にブリティッシュ・ロック的です。ダビングされたタンバリンがモータウン的なキャラクターを色濃く印象付けます。現在のThe Collectorsでも代表曲的な扱いとなっている「Too Much Romantic!」のオリジナルテイクがこのソノシートに収録されています。The COATSの「No! No! No!」にインスパイアされたミドルテンポのビートナンバーですが、この後には聴かれないパーカッションのアレンジが非常に興味深いリズムの遊びになっています。

 全曲を通して楽曲の完成度が高く、この時点で後に古市コータローが演奏するギターフレーズが完成されているところに驚かされます。
そしてモッズという範囲では語りきれない充実した作品です。またThe Bikeはこのソノシートリリースと同時期に『誰が殺したタマゴ男?』 the BIKE live at Egg-man! というライブ盤をRadiate Recordsからカセットでリリースしています。


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GO-GO 001 DANCE! APPROVED STREETS V.A. (LP) 1987年3月21日
A1. Red Shadow / Page Three
A2. Baby Don't You Know / The Hair
A3. It Keeps Me On Harpin' / Mersey Beat
A4. Nick! Nick! Nick! / The Collectors
A5. Dancing Doll / High Style
A6. Teenage Gangs / The Standards
B1. London In The Mist / High Style
B2. 空 / Page Three
B3. That's What I Like / The Hair
B4. Comeback To Me Baby / The Standards
B5. It's A Fridai Night / Mersey Beat
B6. 僕のタイムマシーン / The Collectors

 85年にはThe BikeのリリースやカセットブックDear FaceをリリースしたRadiate Recordsだったが、86年はThe Brooksから発展したHigh Styleが自身のレーベルからEPをリリースなどのトピックがあったもののリリースがなかった。翌年87年に全6バンドを2曲づつ収録したLPがリリースされ、LES ENFANTS TERRIBLESから始まった東京のモッズバンドシーンは、3年でバンドの質や楽曲が大きく飛躍しThe Jamを始めとるするパンク的であったイギリスのモッズ・リバイバルグループの影響の先へ、イギリス本国のモッズ・リバイバルと同じ様に60年代のオリジナルモッズが好んだR&Bやソウルの影響がバンドやバンドサウンドに現れ録音のクオリティも上がったことで大変充実感のあるLPとなっている。

 オルガンに国本ユミを加えた黒田マナブのPage Threeの「Red Shadow」で幕を開けるこのLP、夜な夜な都市を疾走するスクーターを歌う影を描く歌詞が印象的で、オルガンと男女ツインボーカルとR&BライクなビートがMakin' Timeを思い起こさずにはいられません。「空」ではドアーズを感じるサイケデリックなオルガンと空気と自由を哲学的に歌うリリックが大変に心を打つナンバーでコーラスワークやアレンジメントは1つ抜き出たものがあります。

 ビートバンド的な東京のモッズバンドが多かったところに黒人音楽、R&B、ブルースの影響が色濃いThe Hairが登場。後にモッズ/和モノシーン両輪でギタリストとしてアンダーグラウンドのカリスマ的な存在感を放つアイ佐藤がここではシンガーを担当、東京スカパラダイスオーケストラでデビューするマーク林がギターを勤めHigh Styleの卍がベースを演奏する初期のメンバーでの録音が記録されています。非常に攻撃的でラフでロウファイなR&Bである「Baby Don't You Know」初期のRolling Stonesよりも凶悪に響きボーカルの歌詞の不鮮明さも相まりただならぬものを感じます。Eddie HollandのLeaving Hereを思い起こさせる疾走感溢れるガレージR&B「That's What I Like」ではより歌詞は明確に聴こえますが猥雑さと暴力性を孕んだ内相的なR&Bで興奮を抑えるのは難しいでしょう。

 Mersey Beatは大阪から参加のモッズ・グループ。「It Keeps Me On Harpin'」初期のSmall Facesの影響を受けた様なパンキッシュなR&Bビートとブルースハープのプレーがパブロック的な空気を持っています。ライブハウス独特のライン録音がもったいないですが熱のこもった演奏は熱くならずにはいられません。打って変わり「It's A Fridai Night」ではThe Jamの影響が大きなパンキッシュなナンバーとなっています。しかし、もう少し良い録音であればよりバンドの良さが伝わったのではと思います。

 The Collectorsとして最初期の録音がこのアルバムには収録され、Dance!リリースの4ヶ月後にミントサウンドからリリースさるインディー盤「ようこそお花畑とマッシュルーム王国へ」と同一テイクの「Nick! Nick! Nick!」、このアルバムにのみ収録された「僕のタイムマシーン」の二曲ですが、The Whoの影響下にあるビートバンド的な色の濃い二曲です。Dance!の1ヶ月後にリリースされたネオGSコンピ「Attack of... Mushroom People!」やインディー盤で聴かれるサイケデリックサウンドはあまりなく、熱く力強い演奏と歌を堪能できます。

 82〜86年のThe Timesや60'sテイストの色濃かったSquireと同じ世界観を共有し卍のポップワールドが全開となったHigh Style、キーボード以外を全て卍が演奏するというポップマエストロっぷりを発揮しており12弦ギター煌びやかで非常にキュートで60'sのファニーフェイス達の情景を感じる「Dancing Doll」でのベースが半音で下るコードワークなどはソングライター、ポップ作家として才能を強く感じますし、全てのロンドンモッズへの憧れを持つ者達のアンセム「London In The Mist」は東京のモッズだけでなく日本を代表するポップ・アート・ソングと言っても差し支えないナンバーです。こちら煌びやかなリッケンバッカーの12弦サウンドはもちろん、テープコラージュ的な間奏、小粋なビートサウンドは、憧れのロンドンの香りたっぷりで、マイナー・キーを上手く使ったメロディラインは心に情景を描きます。

 東京モッズのエースThe Standardsはこのアルバムでソリッドで硬派なサウンドを提供しています。パンキッシュな「Teenage Gangs」では、ティーンから大人へのツーフィンガーメッセージをカミソリの様なギターサウンドに乗せて歌います。手数の多いベースとステディなドラムが気持ちを熱くさせ、2分17秒という長さも潔さを感じます。一方「Comeback To Me Baby」ではアコースティックギターを導入しサウンドの幅を広げ失恋の切なさを硬派なビートに乗せて歌います。同時期にイギリス北部から現れたアコースティックギターでパンクロックを奏でたAztec Cameraの様なバンドと同種の青白い炎を灯しているフィーリングを覚えます。


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FACE 003 WHY DON'T YOU GET SMART? V.A (7インチEP) 1988年5月
A1. Gimme Gimme Gimme Some Good Good Lovin' / The Hair
A2. Mod About Town / High Style
B1. This Oval Walnut / The Maybels
B2. Here Today / The I-Spy

80年代も終盤へ、さらに音楽的な変化が見られる様になったモッズバンドたち、この4バンドが7インチEPではその後の90年代モッズシーンへの橋渡しを感じるEPになった。音楽やスタイルは細分化されていくが、モッズというカルチャーの元での音楽表現をそれぞれが明確に提示しそれぞれのスタイルを強く打ち出している様に聴こえます。

 未だこの時期のラインナップをベストと挙げる人も多く90年代以降の東京のモッズシーンに大きな大きな影響を与えることになるThe Hair。このEP冒頭で過去も未来も無い時間の概念すらも超越する「Gimme Gimme Gimme Some Good Good Lovin'」を提供しています。猥雑なグルーヴは50's、Early 60'sのブラックミュージックに理屈でなく体感で肉薄し、軽薄なマインドを汚しを入れたグルーヴで不鮮明に歌い、ギターフィードバックは聴く者の固定概念を破壊します。

 マーク林がベースに加入し鍵盤奏者が抜けたHigh Styleの「Mod About Town」、シンプルなサウンドと跳ねた踊れるビートを軸に60'sビートナンバー的な遊びを余裕で披露しています。Modの哀愁を綴ったリリックと12弦ギターのアルペジオのリンク、アウトロでのサイケデリックなテープコラージュ、London In The Mistのリフが挟みこまれ町の喧噪とカオスがポップアート的に描かれています。

 The WinkSというビートバンドを前身としてモッズイベントでライブをしていたThe Maybels。収録された「This Oval Walnut」は、フォーク・ロック、ラグタイム、オールドタイマーな手触りとビート詩人的なリリックが同じアコースティックでもパンクロックを始祖としたネオアコースティックと一線を画す印象です。記号化されたモッズを後ろに、さらに先にサウンドや言葉を推し進めたところで音楽を創造しているバンドに聴こえ、このバンド、曲がこのEPに収録されている事はとても大きな意味があると思います。

 Page ThreeがメンバーチェンジしThe I-Spyに発展、非常にこの時この時点という今を感じるEPに収録したナンバーは、東京のフェイスである黒田マナブのペンによる「Here Today」です。Page Three時代よりもよりポップに垢抜けた印象です。軽快なリズムはダンスフロアへの意識が現れ、重厚なオルガンとピアノサウンド、男女ツインボーカルと力強いサビのメロディーは、今からそして未来への幕開けを強く感じさせます。


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GO-GO 002 MOVE ON UP The I-Spy (12インチ) 1989年
A1. Move On Up
A2. One Fine Day
A3. Love A Go Go
B1. I Do
B2. Soul Deep Soul

 85年のthe Bike以来の単独アーティストリリースとなった黒田マナブ率いるThe I-Spyの12インチEP、今で言うところのミニアルバムは5曲ながらもソングライティングや篠原太郎を共同プロデュースに迎え、よりプロフェッショナルなサウンドメイキングとなり充実の作品となった。
また、ホーンセクションが加わりソウル・ミュージックへのアプローチが顕著となり90年代前半オリジナル・ラブやフライング・キッズらがソウル・ミュージックの影響を受けたサウンドを展開していたがそれらよりもレア・グルーヴ的な視点が一早いものとなった。

 カーティス・メイフィールドと同名の曲をオープニングトラックにする所にモッズ的なセンスを感じる、ファンクリズムのノーザン・ソウルチューン「Move On Up」クラブに足を運ぶモッドの一時のカットアップはフロア向けのビートが心地よく響きます。続く「One Fine Day」はオルガンの国本ユミがメインボーカルをとるモータウンライクな曲です。モッズ・メーデーにも出演したThe Scootersと同じセンスでロックコンボが演奏することでよりソリッドにサウンドが響きます。

 パンクソウル的にアレンジされた60's Stevie Wonderのカバー「Love A Go Go」でのオルガンプレイのかっこよさは目を見張るものがあります。歌に絡み歌を盛り上げカバーセンスの面白さを発揮。B面冒頭メロウなモータウンテイストの「I Do」では、移りゆく情景を哀愁をもって歌いますが、ビートはダンサブルでピート・タウンゼントの言う「悩ませたまま踊る」というフィールを強く感じます。

 アルバム最後を飾る「Soul Deep Soul」は、ハードボイルドな詞世界と力強い歌声と空気感はAcid Jazzへも繋がるシャープなジャジーR&Bです。また、Lovin' CircleでリリースされるThe FAVE RAVES、COOL SPOON、SOUL MISSION、Oriental cromagnonと言ったファンク/ソウル色の濃いグループへの目配せとも聴こえます。


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GO-GO 003 THE HAIR SINGS MAXIMUM R&B The Hair (12インチ) 1990年
A1. King Bee
A2. I Can Tell
A3. Batman
B1. Scratch My Back

 Radiate Records最後のリリースは90年のThe Hairの12インチEPです。この年The Hairは1982年に神楽坂に開店したライヴ・ハウス「エクスプロージョン」(後に神楽坂TRASH-UP!!に名前を変え2018年に閉店した、初期はハードコアパンク後にスラッシュメタル箱として80年代中期にはXも出演していた。)のオーナー藤沢秀樹氏により設立されたレーベルEXPLOSIONの傘下レーベルElephant Recordsから1stフルアルバム「Out Of Our Hair」をリリースしますが、同時期にRadiate RecordsからリリースされたカバーEPがこのTHE HAIR SINGS MAXIMUM R&Bです。

Out Of Our Hairよりも凶暴さと猥雑さが増しているこのEP、Rolling StonesもカバしたーSlim Harpoの「King Bee」太々しいボーカルとラウドでやかましいドラム、狂った様なブルースギターがワン&オンリーの魅力を放ち、Bo DiddleyのR&B「I Can Tell」は音が大きすぎて過入力状態の歪みがトゲトゲしく、暴力的なR&Bとしてまさにマキシマムでラウドで60年代のThe Whoをリマインドさせます。

 The Who、The Kinks、The Jamといったレジェンド・モッズバンド的なポップアート解釈に続き破壊し超えているのがこの「Batman」です。全てを破壊し尽くそうなギターとドラムの対決とでも言える様な部分もありますが、往年の本牧のthe Golden Cups的な不良性をこのEPで感じるナンバーです。

 B面全てに収録されている同じくSlim Harpoの「Scratch My Back」は長尺のブルースナンバーですが、インプロビゼーションが退屈なブルースロックなんてことはなく、気だるいハープとノイジーなビートながらダンサブルなスウィング感を持ったドラムとベースのグルーヴthe Whoを超えVelvet underground的とも言えるギター・ノイズ、フィードバックがひたすら心地の良い7分17秒となっています。ブルースを演奏するという表現数あれどサイケデリックでフリーキーなこのスタイルは他にはありませんし、この時代の東京にthe Hairが出現してこの録音を残したことは奇跡的なことだと思います。



 ミュージック・フリーク、レコードコレクターとして入手したRadiate RecordsそれからLovin' Circleの作品を十数年楽しんでいたことに加え、ここに収録されたバンドのメンバーと個人的な交流やバンド演奏などをする機会があり、一度まとまった文章として音盤に刻まれた若者の美しい魂の形とも言える音楽を残しておくべきだと考え、上記のレビューを執筆いたしました。現役のバンドマンとして活動し、今の音を鳴らし心を掴んでいるミュージシャンもいますが、それと別として過去の作品をこの様に扱う必要もあるのではないかと思います。筆者の主観も多くございますが、楽しんでいただき、配信サービスなどで一部聴くことができる過去の芸術に触れてもらえると幸いです。

なおこの文章を書くにあたり、下記書籍から多く参考にいたしました。
-写真集 TOKYO MODS GRAFFITI 1981‐2005
-DOLL No.214 2005年6月号
-まるごとモッズがわかる本―Music & culture style magazine

そして失礼を承知で文中一部敬称略とさせていただきました。
書籍からの情報以外に当人から聞いた話などもありますので、事実誤認やご意見などございましたら下記noteコメント欄やTwitterのDMでご意見いただければと思います。


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