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四間飛車が初心者向けかどうかという話

はじめに

個々にカスタマイズされたものだと思うが、Twitterのトレンドに「四間飛車」が上がっていた。

トレンドに上がる「四間飛車」

見ると四間飛車が初心者向けかどうかで揉めている。昔から定期的に上がる話題だが、四間飛車を貶しながら「四間飛車は初心者におススメできない」という意見を見ると悲しくなってくる。四間飛車の魅力を多くの人に知ってもらわないといけない。

四間飛車は初心者向けの戦法だ

四間飛車は間違いなく初心者にもおススメできる戦法だ。

角道を止める。四間飛車に振る。美濃囲いに囲う。これを覚えるだけで、いつでもどこでも四間飛車を指せ、囲いという概念を手に入れることができる。左辺で攻めの形を作り、右辺で守りを固める。初心者でありながら本格的な形を指している。この大きなメリットは決して無視できない。なにより美濃囲いは美しい。

藤井猛九段は言う。

「(略)以前、島さんが何かの原稿に〝振り飛車は相手が何をやってくるかわからないから自分は指す気がしない〟とお書きになっているのを読んで、ホーッ、居飛車の人はそういう考え方をするのかと驚いたことがあるんです。
 なぜなら僕は四間飛車を、よほどのことがないかぎり指せるわけです。相振りとかを別にすれば。でも居飛車党は、自分が先手のときは矢倉しかやらない人でも、後手のときは相手が☗2六歩としたら☖8四歩と相がかりにする。絶対に勝ちたい将棋でふだんやらない戦法をやるほうが僕には不思議でならないですよ」

山岸浩史「盤上のトリビア」/『将棋世界』2004年5月号

いったん四間飛車と美濃囲いを覚えれば、初心者の人でもいつでもそれを指すことができる。最初の内は定跡も何も関係なく、美濃囲いに組んで左辺からわちゃわちゃ好きなように楽しく指せば良い。居玉でわちゃわちゃ指すより勝ちやすいはずだ。

そして藤井九段は四間飛車を突き詰め、竜王位を獲得した。四間飛車は初心者から竜王まで、誰が指しても良い戦法だ。初心者でも竜王と同じ形を指せるのだ。

棒銀(急戦)につぶされる?

四間飛車を初心者におススメしない人は言う。

「対棒銀(対急戦)の定跡を覚えないとつぶされる」
「カウンターの概念が難しい」

棒銀(急戦)をやってくる相手と指すのはそもそも初心者の域を超え、級位者以上の話だ。相手が急戦定跡を勉強しているなら、こちらも定跡や手筋を勉強する必要が出てくる。

定跡として見たとき、四間飛車は「受け」の立場であり、カウンターを狙う戦法と言われる。それが級位者には難しいのではないかと言われる。

藤井猛九段がいる

四間飛車党は幸せだ。藤井猛九段がいる。

四間飛車を指しこなす本 第1巻』(河出書房新社)

四間飛車党にはバイブル『四間飛車を指しこなす本 第1巻』がある。この本は「先手が四間飛車に振るにはどう指しますか」という問題から始まる。初心者から読める本だ。

四間飛車は、対棒銀をはじめ様々な対急戦の定跡(対応パターン)を、確かにいくつか覚えなければならない。でも何かしらの形や手筋を覚えなければならないのはどんな戦型でも同じことだ。幸いなことに四間飛車党は『四間飛車を指しこなす本 第1巻』を読むだけでその対応パターンを身に付けることができる。たった1冊だけで良い。この本には四間飛車の対応パターンのエッセンスが詰まっている。覚えた対応パターンは色々な対急戦に応用できる。『四間飛車を指しこなす本 第1巻』は古くなってしまった変化もあるという人もいるが、この本の意義は、厳密な変化を研究するものではなく、対急戦の本質的な対応パターンを身に付けることにある。そして最も大事なことは、どんなパターンであっても、四間飛車と美濃囲いを指せているということだ。

「カウンター」の概念が難しいという人は、手始めにこの動画を見れば良い。

別に「カウンター」という言葉にこだわらなくても良い。急戦で攻められた時、対応パターンを覚えておけば、必然的に手駒が良い感じに増え、逆に攻めることができるようになる。それだけで「カウンター」や「捌き」を実現できている。その具体的な手段が『四間飛車を指しこなす本 第1巻』に詰まっている。四間飛車党は居飛車急戦に感謝しながら受けるようになるのだ。

こうした概念は『四間飛車上達法』でも学ぶことができる。こちらも初心者の方にもおススメだ。

四間飛車上達法』(浅川書房)

居飛車穴熊が倒せない?

四間飛車を初心者におススメしない人は言う。

「振り飛車って居飛車穴熊にされるとツラい」

藤井猛九段がいる

四間飛車党は幸せだ。藤井猛九段がいる。

四間飛車を指しこなす本 第2巻』(河出書房新社)

「振り飛車は居飛車穴熊にされると苦しい」という先入観が強い層にはあまり知られていないかもしれないが、四間飛車の対穴熊向けの作戦はいくつもある。『四間飛車を指しこなす本 第2巻』には以下の作戦が解説されている。

  • 角交換挑戦型

  • 5六銀速攻作戦

  • 6六銀型四間飛車

  • 4八飛戦法

  • 藤井システム基礎編

四間飛車を指しこなす本 第2巻』を読むだけで、実に5パターンの居飛車穴熊対策を身に付けることができる。

また、最近では『藤井猛全局集 竜王三連覇とA級の激闘』に「振り飛車党のバイブル —藤井九段が明かす対居飛車穴熊必勝法講座—」が収録された。

  • 急戦向かい飛車

  • ☗5八金型向かい飛車

  • ☗6五歩ポン戦法

  • ☗6七銀型☗6五歩ポン戦法

「向かい飛車」とあるが、始まりは四間飛車だ。始まりが四間飛車が良い理由もちゃんとある。四間飛車の居飛車穴熊対策はこれほど多岐に渡る。もちろんこれ以外の作戦もある。「これらにすべて対応できます」と自信を持って言える居飛車党はそういない。

わざわざ超高難度の「藤井システム」を持ち出して「四間飛車は難しい」と言う人もいるが、『四間飛車を指しこなす本 第2巻』や「振り飛車党のバイブル —藤井九段が明かす対居飛車穴熊必勝法講座—」で多くの作戦を知って欲しい。居飛車穴熊対策は何も藤井システムだけではない。これらは間違いなく四間飛車党の強力な武器だ。それに藤井システムだって、級位者の人でも好きに指したって良い。どの道簡単に勝てる戦法なんてない。それなら楽しんだもん勝ちだ。アマチュア将棋は自由だ。

結論

これまで書いてきたように、四間飛車に関する様々な不安は藤井猛九段が解消してくれる。四間飛車党は幸せだ。定跡を覚えたいと思えば藤井九段の書籍を買って読めば良い。上達するに従って『四間飛車上達法』→『四間飛車を指しこなす本』→『四間飛車の急所』と読む本をステップアップしていくような道が整っている。四間飛車の棋譜並べをしたいと思えば『藤井猛全局集』を買って並べれば良い。『四間飛車名局集』もある。上質な解説と棋譜がそこにある。

とは言え、どの戦法が初心者向けなんて議論は、はっきり言ってあまり意味がない。どの戦法にも攻め、受け、堅さ、広さ、様々な性質を持っている。どの戦法にも様々なメリットとデメリットがある。そして人には好みがある。何が合うかは人それぞれである。色々試してみて、まずは一つ好みの戦法を覚えてみるのが良いと思う。「これが自分に合うな」という戦法が四間飛車だったら、四間飛車党としてこの上なく嬉しいことである。

四間飛車を楽しんでいくなら、上に書いたように魅力的でおススメできる材料はたくさん揃っていますよ。

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