哲学の巨匠に学ぶ今の生き方 ロック
今回の巨匠はイギリスのジョン・ロック(John Locke 1632年- 1704年)です。
「イギリス」「ジョン」「ロック」でビートルズを思い浮かべた人、違いますよ。
高校生の時に倫理を授業でやった人ならばロックの他にバークリー、ヒュームとともに経験論を展開したグループとして覚えているかもしれませんね。世界史をやった人ならば、彼の著書「統治二論」がイギリスの名誉革命を正当化するものになり、アメリカ独立戦争やフランス人権宣言に繋がったということで覚えている人も多いでしょう。
今回はその自由主義(リベラリズム)の父と呼ばれるロックの思想から学ぶべきことを考えてみます。
彼の主張する社会契約説は王権の神授説を否定して、人間の自然状態を「牧歌的・平和的状態」だとしました。自然状態下(State of Nature)において、人は全て公平に、生命(life)、健康(health)、自由(liberty)、財産(所有- Possessions)の諸権利を有する、誰もが自由であり、誰もが他の者の諸権利に関与する権限はないと、公権力に対して個人の優位を主張しました。
ただし自然状態だと、誰かが不正をしたりしても誰もその犯罪者を逮捕、拘束できず、そして裁くこともできない。それでは困るのでロックは我々自身をこの不都合な自然状態から守るために、政府が必要だと考えた。そして政府は国民の「承認」によって設立されるとした。政府は国民との契約によってのみ存在し、国民は自らの保有する各個の自然権を一部放棄することで、政府に社会の秩序を守るための力を与えたのである。言い換えれば、契約の元で政府に我々の自然状態下における諸権利に対する介入を認めたのですね。
ロックの社会契約説から現代の我々も政治を考える時に、学ぶべきことがたくさんありますよ
政府の正当性
政府の権力は人々の同意に基づくべきで、これは現代の民主主義の基盤となる重要な概念です。
自然権の尊重
生命、自由、財産といった自然権の概念は、現代では当たり前すぎて見過ごされます。放っておくと政府に制限されかねないから。
権力の制限
政府の権力は人々の権利を守るために制限されるべきです。決して政府の利益を拡大するために野放ししてはいけないのです。そして権力は分散させるのが基本という。現代の立憲主義や権力分立の原則につながっています。
抵抗権
不当な支配に対する抵抗の権利を認めています。これは現代のデモなど民主的な変革の思想的基礎となっています。
所有権の重要性
個人の所有権の正当化は、現代の経済システムや財産権の考え方に影響を与えています。
今では当たり前の権利や政府のしくみが、17世紀ですでに語られていることに驚きですね。そして当たり前の権利は、放っておくと政府に接収されかねないので、権力の分散や政府に対する監視、抵抗が必要だと思うのです。