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「爪痕を残します!」が生んだ、たくさんの敗者

いまから5~6年くらい前、キングコングの西野さんが『ひな壇に出ない』と言って、炎上したことがありました。

当時は『ひな壇に出ない=ひな壇ごときには出ない。MCしかやらない』という受け止め方をされて、生意気だ!となり炎上したんですが、西野さんの真意としては『ひな壇で活躍する能力がないから、他のフィールド(=絵本や漫才)で活動する』というものでした。

それで、下の動画は2018年の10月21日に公開されたものなんですが、トークの前半で当時の『ひな壇騒動』について、改めて話すシーンがあります。

そのなかで面白いなと思ったのが、西野さんの『爪痕を残す』という言葉への捉え方です。

トークのなかで、相方の梶原さんが『おれも西野と同じでひな壇に向いてなかったんだけど、なぜかずっともがきつづけちゃったんだよねぇ』といった旨の話をしたときに、西野さんが『それは「爪痕を残す」という言葉のせいだよ』と言いました。

どういうことかというと、『爪痕を残す』を『(ひな壇に向いてるか向いてないか分からない)若手芸人が、中堅や大御所のいるバラエティに飛び込んで一矢を報いること』とポジティブに定義づけることによって、若手芸人がバラエティにどんどん挑戦することを評価する風潮がつくられたということです。

悪い言い方をすれば、そういった空気感に梶原さんは『乗せられて』、得意ではないひな壇で『爪痕を残そう』とし続けしまいました。

ただ、どうして西野さんがこの仕組みに気づいたかというと、西野さん自身の信条が『自分の勝てる分野でしか勝負しない』ことだからです。

だからこそ、西野さんは絵本作家へと舵を切ったわけですが、『自分の勝てる分野でしか勝負しない』とは、言い換えると『自分の勝てる分野に"挑戦者"を呼び込む』ことでもあります。

そう考えたとき、バラエティやひな壇が得意な芸人さんたちは、自分たちのホームグラウンドに若手芸人を呼び込むために『爪痕を残す』という言葉を再定義したのだなと。

西野さんはそう分析したわけです。

この見解はとても面白くて、『爪痕を残す』っていう言葉はもともと、マイナスの意味で使われてたんですね。

災害や事件が起こった際に、その被害や悪影響などが後になっても消えないことを指していました。

ただ、バラエティにおける『爪痕を残す』って、とてもポジティブな感じがします。

西野さんの説が本当だったら、それを意図的にやった人は本当に頭がいいなと思います。

そして、似たような事例がないかなーと考えてたら、『有名税』もそうですよね。

これもマスコミやクソリプラーズが、自分たちの都合のいいように著名人のプライバシーを侵害できるよう、編み出された造語です。

こうやって挙げていったらまだまだあると思うし、むしろこうやって気づかれているうちは序の口で、本当に怖いのはぼくたちの気づかないところで、まだまだたくさんの言葉がこの世のなにかしらの空気感を醸成していることです。


…今日は昨日たまたま見た動画で感じた、『言葉の諸刃の剣っぷり』について書きました。

ディフェンスする側としては、常に『言葉の無意識への染み込み具合』は念頭に置いておきたいです。


▼このnoteで取り上げてるのもまた、善悪評し難いムーブメントですが、どうせなら『言葉の力』で、なにかしらのポジティブなムーブメントを起こしていきたいですね。


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藤本 健太郎 / 編集者
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