「コント漫才」と「しゃべくり漫才」
僕は、関東芸人はM-1で勝てないと思っています。ちょっと言い過ぎかな。言い換えると、勝とうと思わないほうがいい。矛盾するようですが、そう思えたら、チャンスはあるかもしれません。
(言い訳/塙 宣之)
お笑いコンビ・ナイツの塙さんによるお笑い解説本『言い訳 関東芸人はなぜM-1で勝てないのか』を読んだ感想、第2回です。
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きょうは、本のサブタイトルにもある通り『関東芸人はなぜM-1で勝てないのか』についての、塙さんの見解について紹介します。
本の構成として、先に答えを言ってしまって、後半にかけて中身を深堀りしていくスタイル。
ということで、早速本の中身を見ていきたいと思うんですが、その前に一応M-1の歴代王者の出身地を確認しておきます。
これまでM-1は1回の中断を挟んで14回開催されていて、そのうち関西出身以外の芸人が勝ったのは、5回しかありません。
逆に言えば、14回中、9回は関西出身の芸人が優勝しています。
さらに言えば、5組のうちの1つとしてカウントしている2017チャンピョンのとろサーモンも、出身自体は九州ですが、両者ともNSC大阪校を卒業しています。
そして、本のサブタイトルにある『関東芸人』に関して言うと、5回ある非関東芸人の優勝のうち、関東出身なのはトレンディエンジェルとアンタッチャブルだけ。
日本の人口だけで言えば30%以上が集中する関東地方から、14回中2回しかお笑いコンテストの優勝者が出ていないのは、やはりなんらかの理由があると考えても良さそうです。
少し前置きが長くなってしまいましたが、塙さんがM-1で関東芸人から優勝者がなかなか出ないのは、M-1では『コント漫才』よりも『しゃべくり漫才』が評価されるからだと言っています。
コント漫才とは、『お前コンビニの店員をやって。おれはお客やるから』と、設定を決めて芝居風に漫才を進める形式を指します。
一方で、しゃべくり漫才とは、キャラ設定をすることなく、普段のままの2人(もしくは3人)が話す形式です。
コント漫才よりもしゃべくり漫才が評価されるようになった大きな要因のひとつとして、塙さんは第1回の大会で中川家が優勝したことだと述べていました。
大会というのは、その後の発展を考えたとき、初代王者が誰になるかが、とても重要です。その大会の『格』が決まるし、方向性も決まります。
その意味において、中川家がM-1の初代王者になったというのは、結果的には、大正解だったんじゃないかな。
中川家とは、『しゃべくり漫才』を地で行くようなコンビです。
塙さんによると、中川家の礼二さんは、『喫茶店での会話の延長』が漫才の理想だと話していたことがあるようです。
実際、中川家の漫才を見たことがある人はわかると思いますが、中川家って礼二さんと剛さんが、本当に普段どおりの兄弟の会話の様子を見せられている感じがします。
しゃべくり漫才の代表格である中川家が第1回大会で優勝したことによって、M-1は暗黙の了解として『しゃべくり漫才を評価する』という方向性が決まりました。
ただ、それはしゃべくり漫才を評価しようと最初から決めていたから、中川家が優勝したのではなく、中川家が優勝したから、しゃべくり漫才を評価するという方向性が固まったのです。
そういう意味で、塙さんは中川家の優勝を『大正解だったんじゃないかな』と表現したのだと思います。
審査員の中に、そういう意識(※note筆者注:しゃべくり漫才を評価すること)があったわけではなく、いちばんおもしろいコンビを選んだら、それがたまたましゃべくり漫才のコンビだったということだと思います。ただ、結果として、そうなったということは否定できないでしょうね。
ということで、きょうはなぜ『関東芸人はM-1で勝てないのか』について、『M-1ではコント漫才よりもしゃべくり漫才が評価されるからだ』という話をしました。
ではなぜ、しゃべくり漫才が評価されるM-1では、関東芸人ではなく関西芸人が有利なのか。
それについて、今後のnoteで深ぼっていきたいと思います。