料理写真を撮る時のピントと絞り
イブイブの土曜、横浜はカップルで溢れかえって、外に出る勇気が起きない。
ヨルノヨのライトショーに加えて花火が上がり、撮影に回っても人混みで苛つくだけとは思うけど、今時の年の瀬の空気を切り取りたい気持ちは燻った。
みなとみらい地区は、コロナ前からこんな感じだった。
LED照明は熱を持たず効率も良く発色は強烈なので大規模なライトアップには便利だが、撮影にはその色の強さが扱いづらい面はある。
そしてその経済性から家庭や飲食店などでも使用率が高まり、結果的に自然光が入るような環境では、色のバランスが取りにくくなったようにも感じている。
この写真は、飲食店で撮ったもの。
強い電球色の中に外光(自然光)の青が混じる状況だったので、撮影位置を調整して影響が出ないようにしたが、それでも一部の光点に青い色が乗ってしまった。
光の問題は「そういうもの」だと納得して気にしなければ良いのだが、こういった写真を撮る場合、特に飲食店の場合は明るさが圧倒的に足り無い事が多く、かつ最短撮影距離近辺での撮影を強いられがち。そしてその距離と条件で撮る写真にはレンズの特性(利点・欠点とも)が顕著に出やすくなる。
料理の写真はスマートフォンで撮られる事が多いと思うが、デジタル一眼レフカメラで撮ったものとは質が違う。それはセンサーサイズが小さい事によりパンフォーカスに近い写真になりやすい=綺麗なボケが出ない、という特性による。
そのため、高機能スマートフォンではソフトや複数のレンズによって擬似的にボケを作る機能を加えている。
そんな特性をわかっているので、料理をフルサイズセンサーで撮る時は余裕をもったサイズで絞りこんで撮影するのだが、シャッター速度が遅くなりやすく手ブレも起きやすくなる。
なので、どうしても絞りを開けたくなるのだが、そうなると今度はピント位置がシビアになるのが悩ましい。
この写真は実験で撮ったもの。(TKGにふりかけをかけた物)
EF50mm F1.8 STMを開放(f/1.8)にして撮ってみたのだが、見事にレンズの粗が出ていて、効果としては面白いと思うが料理写真としてはダメだと思える。
絞りをf/2.8まで絞ってみたら、こんな感じに変わる。
被写界深度が出た事によりシズル感が自然になって、ボケ方も不自然に見えなくなった。つまりEF50mm F1.8 STMを使う場合は、少なくともf/2.8までは絞れと言うべきなのだろう。
だがそれでも、まだちょっと奥のボケが大きすぎる。
さらにf/3.5まで絞ってみたら、こんな感じになった。
前の2枚とは別物で、自然なボケと見せたい部分へのピントの効きがあるので、料理写真として成立すると考える。
よく言われる「2段絞ると良い」という事はこういう事で、後はどこへ「ピントの芯」を置くかが問題となる。
中華街の某店で撮った「台湾風黒酢やきそば」の写真。
RF35mm F1.8 MACRO IS STMはこういったシーンにピッタリにレンズで、マクロレンズ故に寄ってもボケが自然で失敗が少ない。
この写真はピントをほぼセンターに置いているが、山盛りになっている焼きソバの面に正対する様に斜め上から撮る事で、センターから手前にかけて撮影距離に大きな差が出ないように工夫している。
経験的にf/5.6まで絞ると望むボケ具合になる事から絞り込むがシャッター速度が1/25秒というスローシャッターになってしまうのが問題ではあるが、センサーが24メガ程度のカメラ(EOS R6MarkⅡなど)なら余裕で手持ち撮影ができるだろう。ただ、45メガセンサーのR5となると、気を抜けばブレが出るのは言うまでも無い。
同じレンズを使ってもこういった麺料理の場合は、撮影面がスープのためピント面を正対させるなら俯瞰で撮るしかなくなってしまう。
なので、この場合は差し色となる葉物にある程度ピントを残しつつ、白髪ネギとその先のスープ麺にピントが来るようにセットした。
こういった食卓で料理を見る確度で撮る場合は、一番最初に目は行く場所にピントの芯を持って行くのが基本で、器の全面に綺麗にピントを合わせる事は不可能と思った方が良いと思う。
俯瞰で撮っても、料理の高低差でピント面が違うので、若干斜めで撮ってパース調整で俯瞰図に調整する方がピントの調整が安易になる。
この写真はf/7.1まで絞る事で全体にピントがあるように工夫した。
バーシーンで綺麗だと感じてカクテルを撮る時は、正に明るさとの戦いになる。
このバーは比較的明るい方だが、それでもISO6400にしてもシャッター速度は1/10秒と遅くなってしまった。
で、こんな状況でピントを合わせる時には、一番前面にピントを持ってくるとカクテルの持つ景色が見えなくなったり、ガラス面の水滴に目がいって面白く無い。
なので、少し奥に合わせてみた。
・・・と、書いてたら飲みたくなってきたので、
今回はここで終了としよう。
こんなグラスを大切な人と一緒に傾けている人、多いのだろうね。