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自治体コンビニ交付で証明書が誤発行されてしまう障害のまとめ

富士通Japanの自治体向けシステム「Fujitsu MICJET」コンビニ交付で発生した証明書誤発行障害についてまとめる。

コンビニ交付サービスとは


コンビニ交付は、マイナンバーカード(又は住民基本台帳カード)を利用して市区町村が発行する証明書(住民票の写し、印鑑登録証明書等)が全国のコンビニエンスストア等のキオスク端末(マルチコピー機)から取得できるサービスです。また、お住まいの市区町村と本籍地の市区町村が異なる方は、事前に申請することで戸籍証明書も取得できます。

J-LIS運営のコンビニ交付サイトより

現在、1164市区町村(2023年05月07日現在)のセブンイレブン、ローソン、ファミマなど45種、約56,000店舗(2021年9月末現在)で利用できるサービスとなっている。

コンビニ交付システム概要(J-LISコンビニ交付ページより)

導入する自治体は、上記図のように証明発行サーバを設置する。キオスク端末から発行依頼があると、証明書交付センターのサーバを中継しその住民情報を保持する自治体の証明発行サーバに問い合わせする仕組み。

自治体基盤クラウドシステム(BCL)概要(J-LISBCLページより

証明発行サーバは自治体向けクラウドサービス(自治体基盤クラウドシステム(BCL))としても提供がされている。
今回障害を起こした富士通JapanのFujitsu MICJETはコンビニ交付を実現するSaaS型サービスで、上述のBCL型にあたる。(オンプレ設置でのサービス提供にも対応している模様)

発生事象


申請した人とは異なる住民の証明書が発行された。これまで計3回発生。
(1)2023/3/27 横浜市 10件(18人分)誤発行
(2)2023/4/28(判明日) 足立区 2件(4人分)誤発行
(3)2023/5/2 川崎市 1件(2人分)誤発行
(4)2023/3/27 徳島市 1件(1人分)誤発行

なお(1)の原因判明までの間、横浜市はコンビニ交付サービスを停止した。また同サービスを利用する自治体のうち少なくとも以下で同様にコンビニ交付のサービスを停止した。
足立区、世田谷区、宮崎市

原因


発生事象(1)の原因
システム高負荷時に印刷処理の強制解除が発生し、異なる印刷イメージを誤って取得した。

富士通 Japan(株)が提供する証明書交付サービスにおいて、コンビニエンスストアで証明書交付申 請をされる方が増加し、取引負荷が高まったため、印刷処理における遅延が発生いたしました。この 遅延に起因し、システム上設定されていた作成処理待ち時間を超える状態となり、強制的な印刷処理 の解除が生じ、次の印刷イメージファイルを誤って取得したため、申請された方とは異なる住民の方 の証明書が発行されました。

横浜市プレスより

発生事象(2)の原因
コンビニ交付システムと住民記録システムの随時連携処理と、同時に実行された印刷処理において不具合があり、本来の印刷イメージを異なるもので上書いた。

「コンビニ交付システム」と当区の「住民記録システム」は、それぞれのシステムで住民票データを保持している。そのため、住民記録システムの住民記録データベースに登録された異動情報を随時、コンビニ交付システムの住民票データへ反映する処理(随時連携処理)を行っている。今回、随時連携処理と2件以上のコンビニ交付の印刷処理が同時に実行された際に不具合があり、コンビニ交付システムで設定される印刷処理の処理待ちを誤って解除してしまい、本来の印刷イメージファイルを上書きしてしまうことで、申請者とは異なる住民の証明書が発行された。

足立区プレスより

発生事象(3)の原因
1秒以内に同一タイミングで交付申請を行った際、後続の処理が上書きしてしまった。なお該当事象は川崎市の戸籍システム特有の不具合であり、川崎市がコンビニ交付の稼働に当たり独自サービスと連携させるために開発したアドオンの不具合。なお当該アドオンの開発は富士通Japan。

2か所のコンビニで、2名の住民の方が同一タイミング(時間間隔1秒以内)で証明書の交付申請を行った際に、後続の処理が先行する処理を上書きしてしまうことによるものです。

富士通Japanプレスより

発生事象(4)の原因
証明書発行端末の連携設定誤り。

コンビニエンスストアでの証明書交付サービスと徳島市庁舎内に設置された証明書発行端末(以下、当該端末)を連携させるための設定に誤りがあった

富士通Japanプレスより

横展開


・「Fujitsu MICJET」コンビニ交付サービスを利用する自治体は200弱存在する。5/9に河野デジタル相より運用を停止してテストするよう要請があったことを受け、富士通Japanは自治体と今後調整を進める見込み。なお自治体との協議にあたってはデジタル庁の関与もあり得る。

・また5/10個人情報保護委員会にて以下方針が公表された。

多数の国民の個人情報及び特定個人情報に関わる重大事案であり、詳細な実態把握が不可欠であるため、⑴横浜市に対して行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(平成25年法律第27号。以下「番号法」という。)第35条に基づく報告徴収及び個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号。以下「個情法」という。)第156条に基づく資料提出の求めを、⑵足立区及び川崎市に対して個情法第156資料1 公表資料 条に基づく資料提出の求めを、⑶富士通Japan株式会社に対して番号法第35条及び個情法第146条に基づく報告徴収を行う

第241回個人情報保護委員会 議事録より

なお、上記サービスの利用自治体として名前が上がっている団体は以下
横浜市、足立区、川崎市、世田谷区、宮崎市、熊本市、刈谷市、豊橋市

また、上記に関連しプレスを出した自治体は以下(5/10時点)

吹田市

日立市

宇都宮市

猪名川町

射水市

千葉市

田辺市(PDF)
https://www.city.tanabe.lg.jp/kouhou/press/files/20230510shimin1.pdf

また、自治体向けに同様のコンビニ交付サービスを提供する以下企業より、同様なトラブルが発生しない旨プレスされている。

株式会社TKC

富士フィルムシステムサービス株式会社


関連情報


関連する自治体からのプレス

富士通Japanからのプレス

更新履歴
5/7 初稿
5/10 川崎市、デジタル庁の通達を追記
5/12 徳島市、個人情報保護委員会の公表を追記 


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