ブラジル先住民の椅子。
たぶんぼくは大昔のまだなにもなかった時代になにかしらの「答えみたいなもの」があると考えているのかもしれない。
目の前には森や川が広がっていて、数キロ先には獣や虫やあるいは別の人間がうじゃうじゃいるようなそういう世界で生きた人々がなにを考えたのか、どうやって生きてきたのか、そういうことを知ると、僕にも何かが分かるのかもしれない、と。
でも学者さんや、考古学者さんのようにそのことに人生を捧げる覚悟はない。ただ僕なりの考えを持ちたいだけだ。ちょうど不揃いなパーツで積み木を組み立てたみたいにすぐに崩れてしまい役に立たないものかもしれないけれど、それでも。
そういうわけで「ブラジル先住民の椅子」展に行ってきた。その名の通りブラジルの先住民が木を削りやすりをかけニスを塗り座るために作った椅子が展示されてある。
先住民と書いているので何百年も前に作られた椅子を想像していたのだけど、学芸員の方曰くおよそ100年前から30年前くらいに作られたものを集めた、とのことである。そしてこれらの椅子は今でも作られている。
作られている椅子は動物をモチーフにされている。ジャガー、コンドル、エイ、サル、カエルなど。きっとそれらの動物は先住民にとって日常的に見ることのできるものだったんだろう。インターネットや動物図鑑など存在しないであろう時代に作られたものなのだから、モチーフは周りにあるものに限られることになるはずだ。
現代ならサルだとかジャガーだけじゃなくて、サメでもサイでもニワトリでもなんでも作れそうだ。でもそういう広がり方じゃない広がり方がある。この写真のサルは両の手足が伸びている。
サルばっか作ってるよなー最近。飽きたよな。のばしてみない?やってみよか。
なんていうんですかね、そういう気負いのなさがあるんです。芸術してやろうというよりは、楽しんでるぞ、これは!というのが伝わってくる。そしてこの、気負いのなさは近代ジャパンを象徴するあるものに直結していると気づく。
かわいい、である。
ちょっとこわいかな。
気負いのなさとかわいさ。ちょっとこの仮説をこれから検証していきます。