最低賃金が全国一律28円の増額!最賃法を学ぼう
こんにちは。けんたろーです。
2021/08/14に厚生労働省の諮問機関である中央最低賃金審議会にて、2021年度の最低賃金を全国平均で28円を目安に引き上げ、平均時給を930円にすることが決定されました。
28円の引き上げ額は02年度に時給で示す現在の方式となってから過去最大で、上げ幅は3.1%でした。
最賃が上がっていくのはとても良いことですね。
大学生時代に時給を少しでも上げたくて頑張って働いていたことを思い出しました。
しかし中小企業の事業主にとっては頭を悩ませる問題でもありますね。
28円の上がり幅は大きく、痛手となる事業主も少なくないでしょう。
今回は社労士試験で言う労働に関する一般常識の中から、最低賃金法についてまとめていこうと思います。
◆最低賃金法の総則
最賃法の目的条文は以下のようになっております。
法1条 最低賃金法は、賃金の低廉な労働者について、賃金の最低額を保障することにより、労働条件の改善を図り、もって、労働者の生活の安定、労働力の質的向上及び事業の公正な競争の確保に資するとともに、国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。
最賃法における労働者、使用者、賃金はすべて労基法に規定するものと同じです。
最低賃金額については以下のように定義されています。
法3条 最低賃金額は、時間によって定めるものとする。
月給や日給ではなく、時間。つまり時給換算して定めるとされています。
最低賃金の効力については以下のように定義されています。
法4条
Ⅰ 使用者は、最低賃金の適用を受ける労働者に対し、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければならない。
Ⅱ 最低賃金の適用を受ける労働者と使用者との間の労働契約で最低賃金額に達しない賃金を定めるものは、その部分については無効とする。この場合において、無効となった部分は、最低賃金と同様の定をしたものとみなす。
最低賃金という名前の通り、その額に達しない賃金を定めるものは無効となります。そして最低賃金の額まで引き上げられます。
最低賃金を算定する上で除外すべき賃金は、以下のように定義されています。
法4条
Ⅲ 次の賃金は最低賃金の対象となる賃金には算入しない。
ⅰ 臨時に支払われる賃金及び1月を超える期間ごとに支払われる賃金
ⅱ 通常の労働時間又は労働日の賃金以外の賃金で以下のもの
① 所定労働時間を超える時間の労働に対して支払われる賃金
② 所定労働日以外の日の労働に対して支払われる賃金
③ 深夜労働に対して支払われる賃金のうち、通常の労働時間の賃金の
計算額を超える部分
ⅲ 当該最低賃金において算入しないことを定める賃金
ⅰの臨時に支払われる賃金とは、例えば慶弔手当のような臨時の理由で支払われるものです。
1月を超える期間ごとに支払われる賃金とは、例えば賞与などの数ヶ月ごとに支払われるものです。
ⅱの①~③は残業した際の割増賃金のことです。
①は時間外割増賃金、②は休日割増賃金、③は深夜割増賃金です。
ⅲは精皆勤手当や通勤手当、家族手当が該当します。
最低賃金法には減額の特例があります。
法7条 使用者が都道府県労働局長の許可を受けたときは、次に掲げる労働者については、当該最低賃金において定める最低賃金額から当該最低賃金に労働能力その他の事情を考慮して厚生労働省令で定める率を乗じて得た額を減額した額により第4条の規程を適用する。
ⅰ 精神又は身体の障害により著しく労働能力の低い者
ⅱ 試の試用期間中の者
ⅲ 職業能力開発促進法に規定する認定職業訓練のうち職業に必要な基礎
的な技能及びこれに関する知識を習得させることを内容とするものを
受ける者であって厚生労働省令で定める者
ⅳ 軽易な業務に従事する者及び断続的労働に従事する者
減額は以下の式で計算されます。
最低賃金額 - (最低賃金額 × 減額率)
(減額率は上記ⅰ~ⅳの種類別に規定されている)
◆地域別最低賃金について
地域別最低賃金の原則は以下の通りです。
法9条
Ⅰ 賃金の低廉な労働について、賃金の最低額を保障するため、地域別最低賃金は、あまねく全国各地域について決定されなければならない。
Ⅱ 地域別最低賃金は、地域における労働者の生計費及び賃金並びに通常の事業の賃金支払能力を考慮して定められなければならない。
Ⅲ Ⅱの労働者の生計費を考慮するにあたっては、労働者が健康で文化的な最低限度の生活を営む事ができるよう、生活保護に係る施策との整合性に配慮するものとする。
法9条は都道府県ごとに労働者・事業の様々な要因を考慮して決まります。
Ⅲ項は日本国憲法第25条の生存権とほとんど同じですね。
地域別最低賃金の決定は以下のように定義されています。
法10条
Ⅰ 厚生労働大臣又は都道府県労働局長は、一定の地域ごとに、中央最低賃金審議会又は地方最低賃金審議会の調査審議を求め、その意見を聴いて、地域別最低賃金の決定をいなければならない。
記事上部にて紹介したのも中央最低賃金審議会ですね。
つまり今回はこの法10条に基づいて決定が行われたということですね。
最低賃金には産業別に決定される特定最低賃金もあります。
法15条
Ⅰ 労働者又は使用者の全部又は一部を代表する者は、厚生労働大臣又は都道府県労働局長に対し、当該労働者若しくは使用者に適用される一定の事業若しくは職業にかかる最低賃金(以下「特定最低賃金」)の決定又は当該労働者若しくは使用者に現に適用されている特定最低賃金の改正若しくは廃止の決定をするように申し出ることができる。
特定最低賃金は産業別最低賃金を言い、関係労使の申出により設定される最低賃金(任意的設定)であるとともに、船員に適用されるものを除き、不払いについての最低賃金法による罰則の適用はありません。
逆に言えば地域別最低賃金の額未満、船員に適用される特定最低賃金の額未満しか支払わなかった場合は50万円以下の罰金刑の適用があります。
なお地域別最低賃金以上特定最低賃金未満の額しか支払わなかったときは30万円以下の罰金になります。
特定最低賃金の例に見られるように、船員に関しては特例があります。
法35条
Ⅰ 最低賃金の競合、地域別最低賃金、特定最低賃金の決定等の規程は、船員法の適用を受ける船員に関しては、適用しない。
Ⅱ 船員に関しては、最低賃金法に規定する最低賃金審議会の権限に属する事項は、交通政策審議会等が行う。
他の法律でも船員法の適用を受ける船員は特例があります。
最賃法も例外ではありません。
◆まとめ
最低賃金法は覚える量も少なく、複雑な条文でもないので簡単な部類だと思います。
ささっと覚えて労一の他の法律を見ましょう。