member: Pope.L, 1978–2001(10/21/ 2019~2/1/2020)@MoMA〈上〉
Pope.L(1955~)は、自らを“a fisherman of social absurdity”と呼ぶ。
その真意は、かなり複雑である。なぜなら、彼が漁師として捕えるsocialとabsurdityの間には矛盾とまではいかないが、懸隔があるからである。それが、彼の活動の出自となる時代背景に起因していることは明白だろう。その時代は、60年代からの公民権運動と過激なアフリカン・アメリカンの武装闘争、と80年代からのポストモダンの興隆期に挟まれた時期なので、余計に表現が複雑に縺れることになる。
とはいえ、彼が強調する作品の特異性の「穴」が、この引き裂かれた状態に助け船を出し、彼を時代の荒波に巻き込まれて溺死することを免れさせたのだ。
その一部始終を作品を通じて追跡したサーヴェイが、本展覧会だった。MoMAもNew MuseumのHaacke展同様、タイムリーな企画の展覧会を開催した。というのもそれらの展覧会は、ポストコロナのアートに、目立たないが確実な影響を与えるだろうから。
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