ベテランコーチが本気でコーチングするとこうなる!撮影秘話も。
皆さん、こんにちは。エグゼクティブ・コーチの林健太郎です。
この記事は、私が制作した動画講座:DELICオンラインから、チャプター9の内容を解説していきます。
チャプター9は、私が実際にクライアントさんにコーチングをしている動画になります。
このnoteの記事ではコーチングセッション中の会話を完全に再現する形ではなく、裏話や、動画で語っていない要点や補足情報などをお伝えしていこうと思います。
動画本編をご覧になりたい方はこちら↓からご覧ください。
動画に登場するクライアントさんは誰なの?
チャプター9では、実際にコーチである私がクライアントさんに向けてコーチングをする様子をノーカットでお見せしています。
チャプター8でお伝えしたコーチングの流れ「TWISTモデル」を実際に活用してコーチングを進めていく、およそ25分の動画になっています。
動画を見てくださった方は、きっとこのクライアントさんのこと、気になりましたよね。
本物の会社の経営者さんなのか、それとも役者さんなのか、本気の会話なのか、台本があったのか、などなど。
実は、この方、倉田隆弘さんというプロのコーチなんです。私が国際コーチ連盟 日本支部の代表理事をしている時に、理事として活躍してくださったコーチで、今でも仕事を一緒にしたり、お友達としてもお付き合いさせていただいている方です。
倉田さんは、プロのコーチとしても非常に優秀な方ですが、企業でのマネジメント経験も豊富で、今回の役割にピッタリだと思い、出演を依頼させていただきました。
コーチングには守秘義務が生じる
なぜ、本物の経営者さんとのコーチングを録画しなかったのかということを少しお話すると、ここにはコーチングの倫理規定(国際コーチ連盟が定めています)の中でクライアントとコーチの間で交わされた情報に関して、コーチはクライアントの許可なく他言しない、という守秘義務に関する規定があるからです。
特に、この動画のように、公に開示される性質のものであれば、その場でクライアントさんと合意形成ができたとしても、時が経った時に情報として開示されていては困る、といった申し立てを受ける可能性もあり、一度Youtubeに公開してしまうと完全にコントロールができないというリスクがあったため、リアルな経営者さんとのコーチングのシーンを撮影することはは難しいと判断しました。
一発勝負でシナリオのないコーチング!
という背景情報をお伝えしつつ、倉田さんとはこの日の撮影の30分ほど前にお会いして、
・どんなコーチングセッションを撮影したいかという「目的」
・どんなクライアントさんを演じてほしいのかという「役柄」
・おおまかにどんな内容でコーチングを受けてもらうのかという「テーマ」
の3つだけを設定し、そこから先の会話は実際の流れによって、即興的に作るという形で進めることに合意しました。
映像でご覧いただくとよく分かると思うのですが、この「ざっくり」な設定によって、私にも倉田さんにも緊張感が生まれて、ライブ感溢れるコーチングセッションがお見せできているのではないかと思いますが、皆さん、いかがでしょうか?
ちなみに、NGなしの一発撮りで撮影終了となりました!
なぜ、経営者を相手にしたコーチングを見せるのか
DELICオンラインは本来、リーダーが職場でコーチングスキルを活用しながら、部下やメンバーとコミュニケーションをとるために開発されたプログラムです。それであれば、リーダーが部下にコーチングをしている映像を見せるべきではないか。
そんなご意見を持たれる方もいらっしゃると思います。
しかし、とても残念なことに、私は会社の現役のリーダーではないので、私が「リーダー役」をやれば嘘くささが出ると思うんです。そういったことから、リアルなリーダーとしてのコーチングをお見せすることは残念ながらできないということを認めざるを得ませんでした。
そして、こういった不都合な事実すら、皆さんに開示することでリアリティーを追求するほうが理解を得られやすいのではないかと考えました。
そのため、DELICオンラインでは、プロのコーチである私が、本業である経営者向けのエグゼクティブ・コーチングをしたらどんな風になるのかを、お見せすることで、リーダーの方々もそこから学び取れるものがあるのではないかと考えました。
更にもう一つ、理由があるのですが、これはリーダーというよりも、私たちのようにプロとして活動するコーチに見てほしいという強い思いがありました。
それはなぜかと言うと、先ほどの守秘義務のこともあり、実際のコーチングセッションの映像というのが世の中にあまり出回ってなく、そのため、リアルなコーチングセッションから学び、スキルを向上させる機会が少ないのが、コーチング業界の実情だと思います。
そんなプロのための学びの機会としても、この映像が広まっていくといいなという強い思いから、今回の映像をDELICオンラインに含めさせていただきました。
見どころ①:他にありますか?
この動画の中で肝になるポイントを幾つか挙げていこうと思うのですが、まずは3分14秒あたりのシーンをぜひご覧ください。
会話が始まってから、およそ3分かけてクライアントである社長さんは、今日話したいこととして準備してきた内容をコーチに話します。
恐らくここで、クライアントさんとしては「よし、これでテーマが定まったから、その話を深めていこう!コーチよろしく!」といった状態にあるのではないかと思います。
一般的な会話であれば、そのまま話を先に進めてしまうところなのですが、私の場合は「他には?」という問いかけをします。
私の中には、クライアントさんが話したいことは1つではないという見立てがありますので、一通り、話したい可能性のある事柄をテーブルに乗せる行程を冒頭で踏むことが大切だと考えています。
特段、それ以外に話題にしたいことがなければ、クライアントさんから「特にありません」という言葉が出ると思いますので、怖がらずに問いかけてみてください。
見どころ②:ものすごく単純な復唱の効果
8分20秒前後のシーンを以下に再現してみたのですが、こんなやり取りがなされています。
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【倉田社長】
・・・このままじゃいけないと言う・・・経営者としての気づきっていうのかな・・・っていうところに、なんか齟齬ができている感がある。
【林】
齟齬ができていると・・・というとどの辺、どんなところで?
【倉田社長】
やはり自分としては、変わっていくことが必要だよねっていう。
で、そのためにいろんな準備が必要で、何がどう変わるのか、我々はどうしたいのかっていったところをちゃんとステップを踏んで、やりたい・・・
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このくだり、とても興味深くて、私は殆ど単語レベルの復唱しかしていないのですが、これだけでクライアントさんは自分の思考をより深めていくことができています。
コーチングというと、効果的な質問をすることや、会話をリードすることにフォーカスしがちになるのですが、このシーンのように、至ってシンプルな復唱が意外と効果があるということ、ぜひ映像から学び取ってください。
見どころ③:急にスイッチが入るクライアントの様子
EXPANDの後半部分ですが、ここでクライアントさんに劇的な変化が起きたこと、お気づきになったでしょうか?
すこし映像中の会話を再現すると・・・
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林:今お話しされてて感じることや、理解が進んだことってありますか?
倉田社長:そうね、やはり一つは安定っていうのも必要なんだけれども、チャレンジっていうね、言葉がちょっと今浮かびましたね。
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というやりとりがあって、そのあとしばらくしてから・・・
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林:なんか輪郭が見えてきましたね。
倉田社長:そうですね、やっぱビジネスとしてのチャレンジ、可能性、結果としてオリジナリティを持つ会社。そうだ、魅力のある会社にしたいんですよ。(手を打ちながら)
林:魅力のある会社(単純な復唱)
倉田社長:はい、はい、はい。(同じ言葉を連発)
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このあたりから、クライアントさんの声の大きさや身振り手振りの大きさや頻度が大きく変化していきます。
そして、これは私にとっては、想定外のことで、事前に倉田さんと打ち合わせした時には、こういう要素を話す予定ではなかったので、倉田さんが即興的に役になりきって想起した、つまり「思考を刺激され、何かを本気で発想した」ということが起きている可能性が高いシーンです。
英語では「Aha! Moment」と呼んでいますが、大きなひらめきや着想を得た瞬間のクライアントさんの状態を目のあたりにできる、世にも珍しい映像ではないかなと思います。
見どころ④:コーチが話を見失う瞬間
映像では全く読み取れないと思うのですが、この14分を過ぎた辺りから、コーチの私はクライアントさんが何を話しているのか、微妙に理解できなくなってきていたりします
(こういうこと、意外によくあります)
私が
「魅力的なという言葉を、もう少し噛み砕くとどんな要素が入ってきますか?」
と問いかけるところまではグリップ感があったのですが、実はクライアントさんが
「新しいこと、オリジナリティのあること、あと興味が持てる、あと会社に誇りが持てる、というか、自分でやっているということを自負できる」
と言葉を紡いだ瞬間に、完全に文脈を見失ってしまいました。
恐らく、私が想定していた情報とは全く違う情報が語られたので、ビックリして、文脈を見失ってしまっている状態だったと思います。
そんな状態になった時、コーチはどう対処していくのか、といった視点でこのあたりのシーンを見ていただくと、また別の見方ができると思います。
その後のやり取りをざっくりまとめるとこんな感じになります。
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林:そういう要素が入ったものが魅力的な会社ということ?
倉田社長:今そう思いましたね
林:今それを言ってみてどうですか、そこに本当に行きたいと思えましたか?
倉田社長:そうですね、まだちょっと足りないような気もしないでもないんだけど、必ずそれは必要な要件ではありますね。
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こんな形で、至ってシンプルな対話の取り回しに終始していますよね。
具体的な情報が全く入らず、「そういう」であったり「それ」や「そこ」など曖昧な言葉に終止していることからも、会話の文脈を見失いかけている様が見て取れるのではないでしょうか。
そんな時にも、クライアントさん自身は何を話しているのかわかっているし、内面から出る言葉をどんどん紡いでいるので、それを邪魔しない関わり方ができていれば、こういう場面は切り抜けられたりします。
つまりは、相手が自分で答えを出せることを信じるという方針を貫いているのです。
コーチングはパートナーシップ関係であるという考え方、こういう部分から学んでください。
見どころ⑤:クライアントへのチャレンジ
コーチングの特に後半部分でよく起きることの一つに、クライアントさんが現実的な考えに立ち戻り、考えついたアイデアへの熱量が下がり、本当は望んでいないような選択肢を選ぼうとすることがあります。
そういったときのコーチの役割は、クライアントさんが望む未来を改めて見せることです。そして、その方法の一つとしてチャレンジというやり方を使うことがあります。
このシーンだと、17分あたりにクライアントさんが熱量高くこう言うシーンがあります。
「まずみんなと話をしたい、直接現場とですね」
それに対して私が20分を過ぎたシーンでこう問いかけます
「実際に、どうどういう風にやろうとか、誰に、どのくらいの人に、どういうレイヤーに向けてやってみたいとか考えていることはありますか?」
ここでは、「本当に実行できますか?」という意思確認をしています。それに対してクライアントさんは
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「そうね、突然言ったらビックリしちゃうよね。現場も気持ちの準備が必要かもしれない。社内のイントラネットを利用して、もうちょっと発信した方がいいかなと思いましたね」
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ここ、とっても大切なポイントで、私の次の言葉としてはこんな事を言っています。
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「なんか、少し粒度が下がってきたというか、方向性変わってきたというか、周知してから話にいくって感じになってるんですけど、さっきはみんなに話しに行くって言ってましたよね」
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こういった形で、当初やりたい!とクライアントさんが言っていた事柄を改めて照らすことで、もう一度目的を再確認できるようにしています。
コーチが目的を管理し続けていない場合、例えばこの場合、社内のイントラネットを使って発信するというクライアントさんの発言を真に受けて、
「じゃ、それをやってみましょう!」
と手打ちしてくなる衝動を抑えきれなくなります。
そもそも、何のために会話しているのか、文脈や目的を管理するのはコーチの仕事ですので、無意識的に放棄しないように気をつけてください。
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さて、ここまでDELICオンライン、チャプター9の実際のコーチングセッションの映像で解説しきれなかった裏情報の様々をお伝えしてまいりました。
この記事で解説している事柄を踏まえて改めて動画を見ていただくと、たくさんの発見があると思いますので、ぜひ時間を取って25分の学びの旅に出てみてください。
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次回は、最後のチャプターであるチャプター10を解説していきます。
次の記事を待ちきれない!という方は、ぜひ動画で先に学びを進めてみてくださいね。(チャプター10の動画はこちらから↓)
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