コーチングで使う質問と普段の質問は何が違うのか?
皆さん、こんにちは。エグゼクティブ・コーチの林健太郎です。
この記事は、私が制作した動画講座:DELICオンラインから、チャプター6でお伝えしている「質問」について解説していきます。
コーチングの質問と普段の質問は何が違うのか
コーチングにおいて、質問の技術は必要不可欠な中核スキルなのですが、習得することが極めて難しく、プロのコーチでも継続して学び続ける必要のある、奥の深いスキルでもあります。
なんて、冒頭から少しハードルを上げてしまいましたが、健常者であれば、生まれてから一度も他人に質問をしたことがないという人は恐らく存在しないのではないかと思います。つまり、私たち人間は息を吸うようにたやすく質問をすることができるということも言えます。
それでは、普段私たちが何気なくしている質問と、コーチングで使っている質問にはどんな違いがあるのでしょうか。
DELICオンラインの動画では、チャプター6の冒頭で3つの事例を使って質問の種類の違いをお見せしていますので、まずはこちらから動画をご覧になってみてください。私が実際の研修の中で参加者を相手に質問をしていく動画になります。
いかがでしたでしょうか?
皆さんには、違いがわかりましたでしょうか?
【NGパターン1】自分の情報収集のための質問
まず最初のパターンでは、私が矢継ぎ早に質問をしていましたよね。
動画の中で私が使っていた質問をリストにするとこんな風になります。
・次の週末ってどんな予定ですか?
・靴のサイズは何センチですか?
・ご出身は?
・勉強でいうとどんな科目が一番好きですか
・昨日何時に寝ました?
全く脈略がないですよね。
相手からしてみれば、質問攻めに合うような感覚だと思います。
この動画では、いかにも「質問攻め」というスタイルで私が質問をしているので、皆さんにとっては、かなり違和感があったかと思うのですが、この質問のやり方は実際には営業マンが好むスタイルだったりします。
色は?納期は?サイズは?みたいな形で、自分にとって必要な情報を順番に尋ねていくための質問で、特に相手のためを思って問いかけていないのが特徴です。
これは残念ながら、コーチングで必要になる質問とは種類が異なるものです。
【NGパターン2】自分が意見を述べるきっかけとなる質問
さて、今度は2つ目の質問について考えていきましょう。
私と参加者とのやり取りをここで再現してみましょう。
林:週末どんなことされていますか?
参加者(以下、参):仕事です。
林:仕事ね。他には?
参:他には・・・ランニングです。
林:ランニングか〜。私はね、ランニングってあんまりしないんですよ。でもね、週末に結構仕事を家に持ち込むことが意外とあって、それが家族にかなり不評で、結構大変なんですよ。どうしたらいいかなって思ってて、もうね、あなたにも聞いちゃいたいくらいなんですよ。それで、いろいろ試してるんだけど、なかなかうまくいかなくて。
参:・・・
このパターン、皆さんはどう感じたでしょうか。
動画だと極めて露骨に見えると思うのですが、これも日常的に使われている質問の手法だったりします。
特に、上司部下や家庭の中で起きやすい構図で、聞き手側にはあらかじめ決められた話題があって、そこに導くための呼び水と言うか、悪く言うと「撒き餌」のような質問の形ですよね。
これ、構文としては質問の形をしていますが、実質的には自分のことを言いたいがための「前フリ」であり、完全に「自分のための質問」です。
このスタイルも、残念ながらコーチングで必要になる質問とは種類が異なります。
相手の思考を深めるための質問をしよう
さて、最後に3つ目のパターンです。
こちらも、私と参加者のやり取りを再現してみるとこうなります。
林:週末どんなことされていますか。
参:週末は、サッカーをします。
林:サッカーですね。もうちょっと詳しく教えてください。
参:もうちょっと詳しく・・・試合があります。
林:試合がある。試合はやる?見る?
参:やります。
林:やるんだ、サッカーどれくらいやってるんですか?
参:小学校2年生から高校3年生まで。
林:じゃあ、今もまだ。
参:今はそうですね、遊びで。
林:へぇー、どのくらいの頻度で行くとかあるんですか?
参:月1ぐらいですか。
林:ちなみになんでサッカーは、大人になってからまたやろうと思ったんですか?
参:やっぱり、チームスポーツが好きなんで。いろんな人とコミュニケーション取れたりとか。
林:チームスポーツが好きなんだ。サッカー以外のチームスポーツも好きなんですか?
参:見るのは好きですね。やるのは苦手です。
このパターンは明らかにこれまでの2パターンとは異なるものでしたよね。
参加者の方に、どう感じたかを聞いてみました。
パターン1は質問攻めだったし、パターン2はどちらかと言うと話を聞かされた感じでしたが、パターン3はこっちも考えながら話ができたような気がします。やることに対して話をしながら、内容的にはどんどん具体的になっていくような感覚がありました。
そんな参加者のコメントにもあるように、パターン3の質問では、話が広がっていくような感じだったり、より深い会話ができているような感覚を話し手が得られるのではないかと思います。
相手の頭の中にある情報や感情、伝えたいことをひとつひとつ丁寧に紐解いていくようなプロセスだったとも言えますよね。
この質問のスタイルは、相手の状態を気にかけ、相手の思っていることを引き出すために問いかけているのが特徴です。
3つのパターンの中では、最もコーチング的な質問のスタイルだと考えて良いと思います。
質問の質により取り扱われる内容が変わる
質問のしかたによって、話の方向が大きく変わるということについて、動画でご紹介した3つのパターンをご覧いただくことで理解が深まったのではないかと思います。
これを少し別の角度から解説したのが、上の画像になります。
私たちが相手に伝えたい情報を大きく2つに分類すると
1)言葉として表現できる情報
2)伝えたいんだけど、言語化できていない情報
の2種類に分類できるのではないかと考えています。
この画像では、氷山として表現しているのですが、「言葉として表現できる情報」を海面から顔を出している氷山の一角だとします。
氷山は比喩的な表現ですが、海面から顔を出している体積よりも、海中に隠れている体積のほうが大きい可能性があるということを示唆しています。
つまり、言語化できている情報は相手の伝えたい情報のごく一部であり、もっと別の情報が内在している可能性があるということを意味しています。
その海中に潜んでいる情報を取りに行くのがコーチングの質問であると考えることもできます。
海中に眠る氷山の下の方にあるような情報は、相手の中でも言葉として伝える準備ができていない断片的な情報かもしれません。それを質問によって繋げ、整理していくのがコーチングの質問なのです。
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さて、DELICオンライン、チャプター6でお伝えしている質問のスキルですが、お伝えしたい項目が多いので、今後継続して記事を書いていこうと思います。
今回お伝えしたのは、質問をする目的です。
質問を学ぶ上でまず大切なのは、質問の用途を理解すること。
自分のために問うのではなく、相手のために問う。
まずはこれを覚えてください。
そして、次の記事を待ちきれない方は、ぜひ動画↓で先に学びを進めてみてくださいね。
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