自分で考えない部下を実は「あなた」が作っているという不都合な事実
皆さん、こんにちは。エグゼクティブ・コーチの林健太郎です。
この記事は、私が制作した動画講座:DELICオンラインから、チャプター10でお伝えしている「皆様から良くいただく質問」について解説する記事の第2弾です。(動画を視聴されたい方はこちらから↓)
前の記事と同様に、プロのコーチであり友人でもある本橋萌さんと一緒に進めていく動画を解説していきます。
本橋:それでは今日寄せられた質問を動画で見てみましょう。
部下に「わからない」と言われた時どうするか
質問者:相手に質問をしたときに、相手の方が『わかりません』とか『どう思います?』って聞いてくるんですけど、その時にどんなふうに対応したらいいですか。
本橋:コーチやリーダーが質問を投げかけた後に、クライアントの方に「わかりません」って言われてしまうケースってあると思うんですけど、こういう時はどうしたらよいのでしょうか。
林:そうですよね。こういう時、コーチやリーダーとしては、ついつい答えたくなっちゃうと思うんですよ。
相手が「わからない」と発言しているわけだから、それに対して助け舟を出したくなるのが人情というか。。。
何も考えずに、自動反応的に正解や見解を相手に伝えてしまう。
そんなこと、みなさんも経験したことないでしょうか?
特に、リーダーの皆さんが会社で部下やチームメンバーと話している時を想像してほしいのですが、部下の方が「わかりません」とか「これどうしたらいいですか?」と発言したとしたら、上役であるあなたが何らかの答えを示さないと恰好がつかない、と考えるような気がするんです。
少なくとも、私が上役の立場だったらそうなると思うわけです。
でもですよ、皆さん。ここはぜひ我慢してほしいんですよ!!
(珍しくカメラ目線 笑)
本橋:我慢ですか。
林:そうなんです!これが実は相手の自律性を「あなたが!」阻害するやりとりになったりするんです。
本橋:部下の自主性だったり、やる気を摘んでしまう可能性があるっていうことですね。
部下は思考を放棄する時「わかりません」と言う
林:はい。視聴者の皆さんもぜひ上司部下の関係性を想像してもらいたいんですよね。
例えば、部下が上司に向かって「わかりません」って言葉を伝えるときに、どんなことを考えていると思いますか?
単純に方法や正解がわからないということを示唆しているときもあるかもしれませんが、大半の場合は別の意味を持っているのではないかと思うんです。
例えば、もうそれ以上考えたくないから「わかりません」という言葉を使って思考を放棄するということもあり得るのではないか、ということを言っています。
つまり、
「私なりに考えられる部分は考えたけど、ここから先は分からないので”わかりません”って言えば、あとは上司が考えてくれるんじゃないか」
こんなふうに考えての「わかりません」という発言、というケースも考えられるということです。
それに対して、上役やコーチが回答を示してしまうということが起きた場合、「わからないと言えば相手が解決してくれる」という依存関係が生まれやすくなります。
本橋:なるほど。
その場合、上司は自分で答えを言いたくなる衝動をグッとこらえていただいて、部下に対して何か問いかけることが良いということなんでしょうか。
だとすると、どんな質問をすればいいのでしょうか。
林:相手が「わかりません」と言ってきたときにどうするかということですよね?
本橋:そうですね。部下から「わかりません」と言われてしまって、でこちらも考えや答えを言いたくなるのをグッとこらえた後に、何か質問をしたらいいっていったときに、おすすめの質問とか自分だったらこうするっていう何かありますか。
相手の「わかりません」への対応の仕方
林:例えば、わかりませんって言われたら「じゃあ何がわかる」って聞いてみるといいかもしれません。
正反対の事柄を問いかけてみるというアイデアです。
こういったやり取りにおいて何が大切かというと、相手の「わからない」ということに対して許可を出すというか、「わからないんだね」と状態をそのまま伝え返すというのが大切だったりします。
決して答えを変わりに出してあげることではないということ。
そして、その「わからない」に対して「一緒に考えよう」というスタンスでいることを伝えることが大切なんです。
本橋:なるほど。上司から部下へ答えを言うのではなく、一緒に考えるということによって、部下の自主性を引き出すっていうことをおっしゃっているということなんですね。
林:例えば私がよくやるのは「一緒にブレストしようよ」と私から提案して、相手が「いいですねぇ」と合意するとします。
そしたら「じゃ、先どうぞ(あなたから先にアイデアを1つ考えてみてください)」と水を向けて、相手方に先に話してもらうというやり方です。
本橋:なるほど。これ、林さんのテクニックの一つなんですね。
林:そうですね。なるべく私が介在しない状態で、相手が自力で考えられた方が自律性が高まると思うので、その方法を工夫しています。
誰でもそうだと思うのですが、自分で考えて行動した時に、成功した、失敗したといった体験をすることで初めて自分ごと化すると思うんです。
逆に、誰かの助言を受けて体験しても「やらされた体験」であり、「自分のもの」にならない傾向があるとも言えます。
こういった手間をかけて作っていく対話が相手に「自分で全部やれる状態」を作り、「自分で考えなきゃいけない」という思考も育むんだと思います。
本橋:うーん、なるほど。
林:ここを端折ると、後でリーダーは高い代償を払うことになるように思うんです。
本橋:つまり、この問いに対しては、わからないことをも受け入れて、そこから一緒に考えることが大切で、「考える一歩目は相手から」という概念で話を促すことが必要なんですね、よく分かりました。
仕事中にそんな丁寧な対話なんてできないと思うあなたへ
林:多分、ここで話を終わってしまうと視聴者の皆さんは、「よく言うよ、林さん」って感じになると思うんです。「上司の私にはそんな時間の余裕がないんですけど」と。
確かにおっしゃるとおりで、こういう丁寧な対話ばかりを意識していると、それだけで1日終わっちゃう感じになる可能性はあります。
リーダーの皆さん、そこはよく考えて、コーチングを使った会話をしたい時とそうじゃない時というのを考えてみてほしいのです。
時間をかけてでもコーチングを使った会話をするべきか否か、という部分に理解を深め、その場で必要な対話の手法を選んで使ってほしいんです。
本橋:使い分けるっていうことなんですね。
林:そうなんです。常にコーチングを使うといい、といったことを押し付けようとしているわけではないんです。
例えば、いつもと同じ仕事をいつもと同じようにしてくれればいい、という状況であれば、コーチングの会話はいらないですよね。単純に指示をするのが適切でしょうし、手っ取り早いわけです。
本橋:そうですね、いつも同じように動いてほしいということですからね。
林:そうなんです。例えば単純な指示をする時に「昨日と同じ集計の作業してほしいんだけど、どう思う?」という風には言わないと思うんですよね。
本橋:そうですね、『お願いします』っていうふうに言いますよね。
林:はい。指示命令がいい時もあれば、コーチングがいいときもあるので、その場所とか使うタイミングとか、そういうのをしっかりわかった上で、大事な時、必要な時に使えるようにすることが大切です。
さて、ここまでDELICオンライン、チャプター10から「よくある質問」を題材に解説してきました。
今までお読みいただいたDELICオンラインの動画解説noteはこれで終わりになります。
最後までお読みいただき、誠にありがとうございます。
チャプター10の終わりに伝えている事柄を、このnote記事でも皆さんへのエールとしてお伝えしてお別れしたいと思います。ぜひ最後までお読みください。
頑張れリーダーの皆さん!
DELICオンラインの動画を視聴されたり、noteの記事をお読みいただいている皆さまはきっと何らかの形で人々に介在するリーダーとして、会社だったり、いろんな組織の中で、頑張っている人だと思うんです。
だけど、与えられた環境の中で、あまり教育らしきものを受けずに登用されて、霧の中を走っているような状況で悩み、苦しんでいる方も多いと思います。
そういう方々の助けになればいいなと思ってこの動画を開発し、公開しているわけですが、きっとこれをお読みの方はDELICオンラインを全編見てくださってるはずなんですよね。
ただ、とても残念なことに、オンライン講座には限界があると思うんです。
例えば私たちが最高のプログラムを提供したとしても、視聴される方の再生環境によっては、何かをやりながら片手間で動画を見ることもできると思うので、再生環境によっては学習効果を担保することができないというところにあると思うんです。
そこで私からのお願いです。
視聴者の皆さまには、この動画で学んだことは、生活や仕事の環境で実際に使っていただくことで初めて効果が出るということを覚えておいてほしいんです。
つまり「学んだつもり」では意味がないのが、この対話に関するスキルだということです。
相手に使って、影響力を行使できて初めて、その効果が担保できるんです。
ぜひ、学びをどんどん使ってみてください。
そして。。。
使い始めたあとで、やってほしいことがあります。
改めて、もう1回動画を見返してほしいんです。
「ここ気になるな」という部分を見返しておさらいしてくださると学びが深まります。
また、例えば今日大事な会議があって、チームメンバーと話をしなきゃいけないっていう時は、必要なおさらいを、たとえば会議の前とか電車の中とかその前の晩とかね、必要な部分だけ見るみたいな使い方を是非してもらえればいいなと思うんです。
是非そんな使い方をしてみてください、というのが私からのお願いです。
ここから先はあなたの番です!
実際に学びを活用し、チームと一緒に成功するということの喜びを、ご自身で味わってほしいなと思っています。
リーダーが対話というツールを活用し、強い影響力を持ち、チームと共に成功できる環境が作れることを切に願っています。
DELICオンラインというツールを提供し続けることで、陰ながら皆さまを応援し続けます。
頑張れ、リーダーの皆さん!
これまでご愛読いただき、誠にありがとうございました。