春犬バンドの新作音源を制作
今年の夏は、11月1日に津でワークインプログレスで発表され、その後シカゴで公演される中沢レイさんの「Respawn」用の音源と同時に春犬バンドの新作音源も作ってました。
コトの始まり
春犬バンド、2003年のピアノの中村さんとベースがボクのデュオという編成でアルバム「After Image」をリリース、その後ボクはパリに移り…という感じだったので、例え年に一度定期的に演奏はしていても、距離もあるし一緒に何かを「作る」っていう感じでも無かったってのが大きかったと思います。だけれど、前作アルバムは完売(ありがたい!)でストックは無し、ストリーミングとかでも聴けない…というのもなんだか寂しいな…と。
2022年に一緒にやった時に、「何か作ろう!」って話になり、例え一般的なジャズの方法で一緒に録れなくても、インターネットを介して往復書簡の様に録音をやり取りしながら作る「リモート録音」の方法で試したら良いんじゃない?という事で今回の録音プロジェクトの案は始まりました。
とりあえず、アルバムにして発表するかどうか?とかは置いておいて、まず録音をして、その後にその音源をどう扱うか決めよう…という同意も取れたところで具体的に動き始めました。
インターネットを介した制作、録音なんかは、仕事としても請け負ってるボクには割と日常茶飯事なのだけれども、春犬バンド東京チームは自宅録音とか、そういうコトは全くの未経験。それでも、「やってみたい!」という事で、まず機材やらソフトやらを揃えるところから、更にはyoutubeとかの解説ビデオとかに出てくる易しめな用語の意味さえわからない状況からのスタートでした。でも、こういう状況であっても「やってみたい!」と少しづつでも動いていて、こうやってチャレンジする姿勢を持った人と一緒にやってる事自体が嬉しいことでした。
”リモート録音”という事で、ボクが実際に手を出せるわけではなく、マイクも東京チーム自身でセッティングせなばならず、気に入る音が録れるマイクのポジションも実験し、試行錯誤を重ねなければならない…。これにはかなり時間を要したようでした。
そんな感じで実際に録音作業が始まったのは2024年春の終わりあたり。
曲作りとか音源のコンセプト
2023年に一緒に演奏した時にボクの曲とピアノの中村さんの曲作りの出発点の決定的な違いに一つ気づきました。
ボクは割と心象風景的なモノから曲を作る事がほとんどなのですが、中村さんは日常生活を題材にしたものがほとんどです。例えば「地下鉄」とか、そういう曲。
どちらかというとボクは、日常生活とは違うところから発想を受け取っていたのですが、彼女の場合は、「日常生活の向こうにある深淵」というか、そういう発想なワケで、これはとても興味深いな…と思いました。自分でもやってみよう、と。
なのでボクも日常生活を題材に曲を書き続けました。例えばパリの地下鉄であったり、スーパーマーケットであったり、窓辺から見える曇り空だったり、晴れた日に外を散歩に行きたいな…という気分だったり、そういう日常にありふれたコトを題材に書いていきました。ボクは作品を作る時は毎朝、起きてから数時間作曲するというルーティンでやっていますが、この音源の曲たちもそうです。
そんな感じで録音作業
今回は全曲ボクが書いた曲を録音したのですが、まずデモを作り、東京チームに聴かせた後、本制作、まずベースパートを録って送りました。その後東京チームからピアノパートが返ってくるので、それでミックス作業…と、大雑把にいうとこういう流れで作業していました。
本録音はそんなにすんなり行くものでもなく、ツアー直前にようやっと3曲が完成しました。なのでミニアルバムとして今回のツアーでは販売しています。
そんな感じなので、アルバムタイトルはもとより、曲名も仮題ですが、現時点では満足の出来です。今後コレがフルアルバムのバージョンが出るか?とか、インターネットで配信されるか?とか、そういう事も含めて現時点では全面的に未定です。
ちなみにアルバムタイトル、この際いわゆる今どきの俗っぽさを全面に出す、というジョークをしれっとかましても面白いのかな?と思い提案したのが、「私のモーニングルーティン」でしたが、即却下されましたとさ…。でも、全曲そうやって書かれたのは確かです〜。