耕す。
2022年が幕を開けた。
昨年から、自由気ままに文章を書き留めていきたいと思っていたのだけど、何について書けばいいかはっきりとまとまらないまま、入力画面を開いては一向に筆が進まずに閉じる、という無意味な動作を何度繰り返したことか。
ブランディングや広告のためのアートディレクション・デザインという業務を生業とする私は、クライアントの問題解決のための日々を過ごしている。「新ブランドを立ち上げたい」とか、「お店をオープンする」とかの相談に、どんな思想や特性があるのか、どんな人に買って欲しいのか、というところから洗い直して導き出したコンセプトを根っこに、ネーミングやロゴ、パッケージ、写真撮影など独自性を宿すための世界観作りという幹や枝葉に広げていく。
ここまで書くと、我ながらちょっとクリエイティブな世界に身を置いているように思うのだけど、なんで自由に文章が書けないのか。文章を書くコピーライティングの仕事も日常的にやっているのに、だ。悔しいったらありゃしない。しかし思えば、普段の仕事にはいつもお題があって、そのお題に対しての解を探していく作業、とも言える。そうか、あたいはこの仕事にどっぷりと浸かる中でいつの間にかお題やテーマがないと脳が働かない体になっちまったのか。
なんの制約もない、というのは一見とても自由で気楽なもののように聞こえるけれど、逆さに見れば途方もない宇宙でもある。普段の仕事でも、何かしらのテーマやコンセプトというある種の制約を導き出すことでクリエイションの指針としているわけだ。
ということで、ちょうど事始めにもってこいの年始のタイミングなんだから、毎年決めている自分へのテーマを日々の書き留めのテーマにしようと思う。
2022年のテーマは「耕す」。
独立して丸7年が経ち、ある程度業務上の基盤は整ったように思う。新卒で入社したSも今年キャリア3年目を迎えるし、主婦業の傍らリモートでサポートしてくれる元同僚のWとの連携リズムも整った。
それからもうすぐ1歳になる娘のこと。
妻と、日々新しい成長を見せてくれる娘との三人暮らしは、毎日ヘトヘトになりながらも(妻の方が大変なんだけど)、今まで知らなかった、成長を見守る喜びを教えてくれる。
これまでは、「種を蒔き、水をやる。そしてその種が芽吹いて花を咲かせるよう育てる」というベクトルで生きてきたように思う。たとえば仕事の種や、暮らしの豊かさの種。視点は一粒ひと粒の種に向いていて、より多くの種をまくこととその成長に関心があった。
先に挙げた自分を取り巻く状況とともに、新しい視点が加わった。それは、「より良い土を作ること」。
事業に関して言えば、「ある程度形やリズムが整う」≒「土が固くなってきている」という感触でもある。子育ての方では、娘がのびのびと感性を伸ばしていける柔らかい土のような親子関係や接し方を心がけたい。
ここで言う「土」は、オフィス環境や家、知育玩具などのハード面ではなく、思考や感性、関係性といったソフト面のことで、ものづくりや子育てのための「土壌」を柔らかく肥沃にしていきたい、というニュアンスがしっくりくる。
そこで、「耕す」だ。
今ここまで書いただけでも、ふんわりと頭の中にあった思考を捏ねて捏ねてクリアになってきた感じがする。
なので、ここで日々の雑感や気づき、仕事のレポートや子育てのことなど、自分の脳内を耕すことを目的に駄文乱文織り交ぜて書き留めることにする。
それにしても、思い立ったことをただ書けば良いのに、何かと理由を求める性分であることを改めてはっきりと自覚した次第です。
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