
AI企業のビズサイド・Bizdevになるためのキャリアパターン
はじめに
本記事は、AIのビズサイド・Bizdevキャリアパターンを紹介です。私のAIベンチャーにおけるビズサイド責任者としての経験をもとにしています。本記事を通じて、ビズサイド・Bizdevに興味を持っている方や、AI企業に就職したいと考えている方の手がかりとなると嬉しいです。
AIのビズサイド・Bizdevとは
AIのビズサイド・Bizdevは、企業のAI戦略、マーケティングやセールスの戦略を立案し、製品・サービスを市場に展開する重要な役割です。また、AI開発プロジェクトにおけるPMやPdMを担っています。具体的なロールやタスクは、↓に書きました。それでは、ビズサイド・Bizdevに携わるためには、どのようなキャリアを歩んでいけばよいのでしょうか。
必要なスキルと経験
【必須に近いベーススキル】
AI企業のプロジェクトは、大手企業との協業や受託が多いため、大手向けコミュニケーション能力や分かりやすいプレゼンテーション能力が必要になります。専門性としては、クラウド知識やシステム設計を行うITスキルの経験、データから示唆を導出した経験が重要です。セールス経験は、ジュニアメンバーであれば不要ですが、プロダクトアウトではないコンサル営業型の提案を大手企業に行った経験を重視されます。
【あるとベターなスキル】
AI開発は、決まった要件を確実に開発するのではなく、アジャイルに実現性や価値検証を行うため、戦略的思考力が求められます。理想的には、AIの知識や特定のドメインの技術潮流に詳しいとより良いですが、必須ではありません。理系出身者や不確実性の高いプロジェクトの経験を持つ人であれば、活躍できる可能性があります。AIは、入社後に身につけるパターンが多いです。
私がLaboro.AIで採用をしていた時には、メインが企業との協業ビジネスのため、クライアントワーク経験者を中心に採用していました。大まかには、下記のパターンです。凄く狭いので苦労をしました。SIerの方が入っていませんが、他のAIベンチャーでは採用ターゲットになっています。セールスやマーケティング経験者は、SaaS系以外で歓迎されない印象です。
【ジュニア層】
・経験2-3年程度の複数プロジェクトを担当し、自律的にプロジェクト報告をしていたデータサイエンティスト
・理系出身(修士か統計系の学部)の経験3年程度の若手コンサルタント
【中堅層】
・データやITをある程度理解し、不確実性が高いプロジェクトのコンサルティング経験者
・事業会社の事業企画と開発経験者
・AI企業でのPM経験者
AIのビズサイド・Bizdevに至るキャリアのパターン
ビジネスサイドになるパターンは、以下の3つのタイプがあります。
1. エンジニアからビジネスを学ぶタイプ
2. アナリストやデータサイエンティストから技術とビジネスを学ぶタイプ
3. ビジネスから技術を学ぶタイプ
エンジニアからビジネスを学ぶタイプ
メガベンチャーやSaaS企業などでサービスに近い領域で働くAIエンジニアがビジネスサイドの役割を担うようになった。
価値のあることを実行するためには、技術を深掘りするのも重要であるが、それ以上にAIを知らないビジネスサイドの筋の悪さが課題と感じ、自らビジネスサイドの役割を担うようになった。
アナリストやデータサイエンティストから技術とビジネスを学ぶタイプ
実務上の課題を解決するためにはより高度な技術が必要になり、データサイエンスを担う人たちの役割が拡大した。
ビジネスサイドがデータに対して理解不足であることから、データサイエンティストの役割が拡大した。
ビジネスから技術を学ぶタイプ
実行を伴わないDXなど、実現性を判断できないことに課題を感じ、自ら判断できるように技術を学んだ。
エンジニアのビジネス観点が弱いため、ビジネスサイドから技術を理解し、適切な対応を行う必要があった。
データに近いケースやITに近いコンサルティング、PMなどがバックグラウンドのケースが多いです。
私がAIのビジネスサイドとして重要視していること
私が信念として重要視していることがいくつかあります。
自分で実装することが重要
私はLaboro.AIに参画したメンバーに、kaggleかSIGNATEの問題を使ってデータ分析からモデルを作って評価するまでをやってみてほしいと伝えています。理由は、PMとして工数感や拡張性を理解する必要があり、実装の流れがわからないことは致命的なためです。プロジェクトを通じてでも良いのですが、以下の感覚を身につけてほしいと思っています。初めて使用するフレームワークのリスクや工数感覚を理解すること
どの程度のことがどのくらいの工数で実現できるか感覚でわかること
APIなどAIを使用するシステム全体の設計を理解できること
サービスとしての拡張性を設計できること
ビジネス目的を達成するためにAIに固執しない
日本の大手企業には、技術が良いとサービスや事業がグロースするというユートピア思想を持った方が多いです。典型例が「パーソナライズするとユーザーが集まる」です。万能なAIがサービス価値を生むという思考停止と思っています。事業成功の要素に立ち返って「認知がないサービスではAIより広告に投資するべき」という当然の思考が薄いと感じます。あくまで手段である事を忘れてはいけません。データを理解する
データ構造や分布を理解せずに、今後の方向性を議論することは間違いです。私はデータの理解を非常に重要視しています。もし、エンジニアや経験豊富なデータサイエンティストがおり、ビジネス視点も持っている場合、不要かもしれません(ビズサイド自体いらないかも)。しかし、少人数であれば、深い議論のために、エンジニアでなくとも必ずデータを理解することをお勧めします。理論より実践
AIにおいて理論は重要ですが、どのようなデータをどの程度学習し、どのアルゴリズムをどの程度の期間で実現できるかは、理論だけではわかりません。実際に試してみることが必要です。また、データの量や品質によって検証期間やアルゴリズムは異なるため、常に慎重に判断する必要があります。そして、実践的な学習方法として、動かしながら理解を深めることが重要です。私は、数理が苦手なため、非効率かもしれませんが、実践後に理論を学んだ方が早かったです。
最後に
ChatGPTの登場でAIが身近になってくる中で、技術理解の不足による誤解が増えていくというのは非常に重要な問題になると考えています。そのため、ビジネスと技術の両面を理解する人材は、ますます重要になっています。ただし、中途半端なゼネラル人材にならないように、しっかりと深堀りすることがポイントです。論文や実装記事を読んだり、実験をしたり、コンペに参加するなど、実践的な経験を積むことが必要です。そこまでは、業界に入ってからで問題ないです。キャリアパターンの合致し、技術的に好奇心が高い方はぜひチャレンジ頂きたいです。