マンガエージェントとしての電脳マヴォ②
電脳マヴォは現在、マヴォが編集を請け負うかたちでマヴォ作家さんを他社サイト・アプリに紹介する仕事を始めています。編集プロダクションと何が違うのかというと、マヴォはあくまで作家エージェントとして仕事することです。すべて事前契約ベースの仕事です。
少し困っているのは、企業様側は当然のように「連載」を要求してくること。しかしマヴォ作家さんは作家性の強い人が多く、兼業で生計を立てている人が多いのです。そうなると、連載の要請に応えかねることもあります。勿論、マヴォも「商売」として考えれば、連載できた方が有難いのですが。
本来なら、兼業しなくても良いようにマヴォがその作家さんに入る収益を調整し、たとえば作家さんに別途契約金が支払えれば良いのですが、資本がほとんどないマヴォでは現状、そこまで行ってません。これはなかなか深刻な問題で、今後どういうやり方にするべきか、考えています。
いや取引相手が出版社ならまだいいのです。問題は相手がIT企業さんだった場合です。ところが、いま、IT企業様案件が急激に増えているのです。
もともと異なる企業文化にいる人たちなので、漫画の連載がどれだけの手間がかかるか、理解が浅いのだと思います。これに「外資」という条件が加わると、かなりすごいことになります。
たとえばオンラインコミックの老舗である韓国NAVERのWEBTOONでは、毎日3本の漫画連載を1週間、週21本の連載を続けるのに、編集者が3人しかいません。つまり日本で考えるような、作家と作品を作って行く「編集者」は存在しないのです。編集は「システム」に委ねる、つまり締め切りとギャランティだけ設定して、締め切りを一日でも遅れたらギャラが半額になるとか、そういう形でメディアを維持しています。
電子メディアは長く「既存作品の再利用」が主流だったので、出版社が新作を連載する際に、編集者が作家に対してどのような仕事をしているのかの理解が足りず、そのため編集を「コスト」のように感じてしまうのです。そこを説明・説得するのもマヴォの仕事になります。
日本の漫画編集者は、作家に対してギャラを支払い締め切りを設定しますが、同時に作品のプロデューサーとして、作家と内容を話し合い、作家の相談に乗り、作家を細かくサポートします。ところがこういう現場プロデューサー的な要素は、どうやら日本の編集者独特の仕事で、諸外国の漫画編集者は、編集者が作品の内側に入り込んで、ともに作品を作るということが、ほとんど無いようなのです。
逆に言うなら、編集は作品連載を「管理」するだけの仕事で、1作1作の創作の「内側」に入り込んで一緒に作品を作って行く姿勢があるのは、どうも日本の編集者の突出した特徴になっているようなのです。
なのでIT企業は作家との接し方が分からず、また、作家さんは作家さんで、執筆と並行して仕事上の交渉をしなければなりません。
つまり、両者をつなぐエージェントの存在が重要になってきました。この場合のエージェントの仕事は、「作家と契約関係を作ったフリーランスの編集者」と考えるとわかりやすいです。
ここに来てIT企業様にも「新作連載」の機運が高まってきて、日本でこれを行うには編集者がいなければならないことが理解されるようになってきました。
つまり、マヴォのようなエージェントの出番が出来てきたというわけです。
ただIT企業さんには、作家との間にエージェントが介在することに抵抗がない、最初から契約ベースで動くなど、やりやすい面もあります。発注者にIT企業さんが増えてくると、エージェントの必要性も増えてくるとみています。