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”be there”の全容が明かされたBUMP OF CHICKENツアーファイナルとオリジナルアプリのリリース
「明日の君の日常に僕は付いていくことができない。でも僕にできないことが、僕の音楽にはできる。君が望んでくれさえすれば。」
バンドのフロントマン、藤原基央氏(以下「藤くん」)は最後のMCでこう言った。
「BUMP OF CHICKEN TOUR 2023 be there」、2023年2月11日に有明アリーナで始まったツアーは、同年5月28日にさいたまスーパーアリーナで幕を閉じた。
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この最終公演は、メンバーと観客が信頼の絆で繋がり、安堵の空気で満たされたライブだった。すべてを燃やし尽くすようなヒリヒリしたものというよりは、長年の友人が旧交を温めお互いの存在を確認し合う、そういう特別な時間だった。
マスク着用義務がようやく外れ、これまで制限されてきた声出しもついに解禁。後世に残る最終公演のライブ映像が観客全員マスクにならなくてよかった。
メンバーが音を出し、藤くんが歌い、オーディエンスが応える。
これまでの日常はこの時のためにあったと分かる特別な時間。
「be there」アプリはバンプが思い描いた世界の体現
時間軸が前後してしまうのだけれど、終演後に運営から驚くべき発表があった。
それは、「be there」アプリのリリース。
アプリを起動すると、そこでは常に過去のバンプのライブ音源が流れている。同時にその音源を聞いている人の数が表示され、その瞬間に居合わせた人たちによるコメントが流れている。コメントの表示件数はほんの10件程度。過去ログの閲覧機能はなく、1つのコメントが画面に表示されているのはほんの数秒で、書き込みが多いときはせいぜい1,2秒で消え去っていく。それでも、参加者はその瞬間を共有し、お互いの存在を確かめ合う。
CDやアルバムに収録されたものではなくライブ音源なので、同じ曲でも歌詞変えがあったり節回しが違ったりしている。演奏が始まると、どのライブで歌われた曲かがチャット欄で流れてくる。気付いた誰かが共有してくれているのだ。
誰かが年齢を尋ねれば別の参加者たちがそれについて返信し、そして一瞬で流れて消えていく。「明日仕事休んでいいかな」と誰かが言えば、「いいよ」「大丈夫」「無理するなよ」「生きているだけでえらい」といったコメントが一瞬で大量に生まれては流れて消える。
ライブ音源と同時に生まれるリスナー同士の一期一会のやり取りそのものがライブだ。リスナーの日常とライブが繋がっている。
アプリ起動時のエフェクトは、まさに今回のアリーナツアーで使われた「be there」のキービジュアルそのもの。アプリ内のコンテンツである藤くんのインタビューで、アプリの構想がツアーに先行して行われていたことが明かされている。
たくさんの惑星が存在する宇宙。そこから一気に視点が引きになり、自分のいる宇宙船の窓の中から見ている世界が映し出される。そう、この場所はリスナー1人ひとりが宇宙船の乗組員であり、その窓の中から他のリスナーと繋がることができる場所になっているのだ。
これこそバンプが思い描いた世界。どうしたらこんな世界を描くことができるのだろう。
「自分たちでメディアを持ちたい」という想いから立ち上げられたバンプ渾身のアプリ。
ライブ最後のMCで藤くんが発した言葉に込められた想いは彼らの音楽に託され、さらにはこのアプリの形に体現されて、いつでも日常に寄り添ってくれる。
CDや音楽配信サイトで聴けるストリーミング音源とは明確に違う部分。それは、今この音楽を聴いているのが決してひとりではないという事実。同時に立ち会っているリスナーがいるという、その共鳴が感じられるのは本当に不思議な感覚だ。
「be there」の全容をライブ後に知る
ライブ終了後、夕飯を取るために入ったお店で、バンプの公式アプリがリリースされた通知に気付く。そして初めて「be there」の全容を知った。
「be there」は単なる言葉ではない。
藤くんをはじめとするバンプメンバーがこれまで抱えてきた想い。リスナーの日常に自分はついていくことはできないというもどかしさ。寄り添いたくてもできない難しさをどうにか解消し、自分が今そこにいることを伝えるための具体的な手段の提示。
その表現が「be there」アプリに込められている。
ツアー中に発表された楽曲「窓の中から」も同じ想いを出発点として生まれており、いわばこの曲こそ「be there」の概念の軸をなす存在といえる。今回のツアーの軸となる楽曲が日程上の都合で前半は演奏できないまま進んでいて、バンプもその関係者も辛かっただろうと推測する。
この曲はNHKの「18祭(Fes)」の企画で制作されたため、その番組放映の3月末までは楽曲を披露できなかった。収録日の変更も影響したことは間違いない。それが4月頭の長野公演でライブとして初披露され、「ずっとやりたかった曲」という表現に繋がった。
このあたりの考察は以下の記事にて。
「窓の中から」は、1000人の18歳世代と作り上げる企画で制作された楽曲だけあって、このさいたまスーパーアリーナにおいてもコーラスや掛け合いを含めて会場全体がひとつのうねりのように感じられた。バンドメンバーだけでなく、オーディエンスの歌声も合わせて初めて完成となるこの曲は、最新曲とは思えない完成度。
「この曲書いてよかった…!」と藤くんがつぶやく。
藤くんのラストMC
「be there」ツアー最終日、アンコール2曲目「ガラスのブルース」を歌い終えたタイミングで話された言葉。
インタビューでよくある質問なんだけど、「バンプにとってライブとは何ですか、どういう存在ですか」と訊かれてね。昔からライブに対してはすげえたくさんの想いが渦巻いていて、なんて説明していいか分かんなくなって、うまく答えられたことがあまりないんだ。どう答えてもうまく言い表せていないような感じで、そのうち「ちょっとそれはあんまわかんないです」とか言うようになったりして。
でも、27年活動してきて、このbe thereツアーやって、ここ最近でようやくひとつ分かったことがあります。
僕にとってライブってのは、僕らの音楽、曲、歌、声、ギターの音、チャマのベース、ヒロのギター、ヒデちゃんのドラム、俺たち4人の音楽を受け止めてくれた人に会うための場所です。俺たちの音楽を受け止めてくれた人に会う。それが俺たちにとってのライブです。
シンプルなことだけど、自分にとってすげえ大事なことなんだと改めて be there ツアーを回って思いました。
どんな曲も、最初書くときはひとりでスタジオの中で歌って書くのさ。
それでちゃんと届いてるかなってのもさ、こうやって目の当たりにして確認するわけ。だから会えた時こんなにうれしくて、終わろうとしている今こんなに寂しいんだなと思います。今日は本当にどうもありがとう。
勝手にですけど、僕は君のことを日常的にすごく近くに感じています。
曲作りのときは本当に何回も君の存在に助けられてる。
煮詰まったときに、この曲が完成したら君が聴いて受け止めてくれるんだ、そう思うだけで拓けた道がいくつもあります。
レコーディングブースの中で歌う時、声が詰まったとき、このマイクの向こうに君の耳があるんだなと、その存在を感じて、そこにめがけて歌ったことが何度もあります。その存在にこれまで何度も助けられてきたし、道を拓くことができたことが何度もある。
灯台みたいなもんでさ、迷った時は君の存在が、こっちに向かえばいいんだよって教えてくれる。そうやって何度も何度も助けられてきました。
君が僕にそうしてくれたから、僕も君にそうしたい。それが単なる想像じゃなく、本当に届いているのかを確認したくて、会いに来てくれた君たちの前で歌うんです。
君が昨日までどんなふうに生きてきて、ここまでどうやって来たかを僕は知らない。ほんの2時間だけどこれだけ深く繋がったのに、明日の君の日常に僕は付いていくことができない。
でも僕にできないことが、僕の音楽にはできます。
君の日常についていくことができる。
君が望んでくれさえすれば、家だろうと会社だろうと学校だろうと、僕の音楽は君の日常にどこへだってついていける。君が望んでくれさえすれば。
だから僕は音楽やってるんだと思います。だから歌いたいんだと思います。
君がいることが歌う理由になります。音を鳴らす理由になります。
チャマがベース弾く、ヒロがギター弾く、ヒデちゃんがドラム叩く理由、全部君がいるからなんだ。27年やってこられたのは、君の存在があったからです。
本当にどうもありがとう。
ここでは新しいアプリのリリースについては触れられていなかったけれど、アプリを開けば、話された言葉はすべて繋がっていると分かる。
「僕にできないことが、僕の音楽にはできる。君が望んでくれさえすれば」。日常に寄り添ってくれるのがこのbe thereアプリ。
常に一貫している藤くんの言葉。そしてその想いを支えるスタッフには感謝しかない。
「be there」ツアー 2023/5/28(日) 埼玉公演@さいたまスーパーアリーナ セトリ
本編
アカシア
ダンデライオン
天体観測
なないろ
透明飛行船
クロノスタシス
Small World
魔法の料理〜君から君へ〜
プレゼント
新世界
SOUVENIR
Gravity
窓の中から
月虹
HAPPY
ray
supernova
アンコール
embrace
ガラスのブルース
宇宙飛行士への手紙
さいごに
ライブの合間、気が付くと僕は何度も「ありがとう!」と叫んでいた。
この場を作ってくれたこと、心に響く楽曲を作ってくれたこと、自分に向けて音を鳴らしてくれたこと、歌ってくれたこと、すべてに感謝したい気持ち。客席からも同じ言葉が何度も発せられていた。
「ありがとうって、それはこっちのセリフなんだぜ」と藤くんが反応してくれる。
「be there」は藤くんの想いの象徴。同じ想いは言葉を変えてこれまでも何度も口にされてきた。今回のツアーとアプリでそれらの想いが具体化され、僕らのもとに大切に届けられた。
ツアーは終わってしまったけれど、彼らの活動はまだまだ続くと知っている。
最後の最後に、「新しい曲ができている」と藤くんが明かしてくれた。
僕はすべての言葉を聞きたいし、これからも鳴らされるすべての音を受け止めたい。