BUMP OF CHICKEN「be there」長野2日目(4/2)出がらしになった藤くんレポ
「出がらしです。俺がお茶っ葉だったならば水に入れても色も出ません。」
すべての曲目を終えたあと、両手を広げながら藤くんは満身創痍の姿を披露した。
ここまで出しつくしてふらふらになった姿を見たのは初めてのこと。
2023年2月11日の有明から始まった「BUMP OF CHICKEN TOUR 2023 be there」ツアーは、4月1日〜2日の2日間のライブで折り返しとなる。
4月2日に参戦した長野ビッグハットでのライブは、演奏がとにかく熱くエネルギッシュで、観客の熱とぶつかり合って昇華する。全編がそんなビリビリした圧巻のパフォーマンスだった。
照明のムービングライトやPixmobが効果的に使われていて気持ちを盛り上げてくれた。
ライブ本編
「アカシア」
オープニングは「アカシア」。
キラキラしたイントロ部分が繰り返されて、ライブが始まるわくわく感がひたすら高まる。
舞台中央の花道をヒデちゃんが歩いてくる。続いてヒロ、そしてチャマ。最後に藤くん。ギターを高く掲げ、観客の拍手を受けるとそのまま曲に入っていく。
中央のサブステージからライブが始まるのは最高の演出。
途中のシンガロングは、それだけで涙が出るほど嬉しかった。
「ダンデライオン」
2曲目は「ダンデライオン」。
Pixmobが黄色に輝く。サバンナでもあり太陽によく似た一面に咲くタンポポ畑のように見える。20年前にリリースされた頃はFLASH全盛で、FLASH職人が作った動画が「ラフメイカー」とともにネット上で出回っていた。バンプを知ったのはたぶんそれが最初だったと思う。CDも買わず、どんな人たちが演奏しているかも知らずに、それこそ誰もいない一人の部屋で閉じこもってFLASHで作られた動画を何度も繰り返し見ていた。
この曲をまさかライブで聴く日が来るとは思わなかったな。
「天体観測」
3曲目は「天体観測」
泣く子も黙る古のシンガロング、「オーイエーヘーアハーン」。
声出しできるようになったので存分に叫んだ。
なんだろうね、このもうライブでも毎回聴いているのに色褪せず、熱量で鳥肌が立って内から湧き出してくる感情は。
会場中央に設置されたサブステージでの演奏、冒頭の3曲だけでもうがっちり掴まれた。
ヒロの食べ物トーク
ツアー恒例、ヒロの食べ物トークはメインステージに戻ってから。
ヒロ「さっきはそこの桟橋で 何曲かやりましたけど」
藤くん「一体何が停泊してんのよ」←このツッコミが秀逸。
長野では前日におやきを食べたとのこと。食後に出てきて、藤くんはお腹いっぱいで食べられなかったので今日食べるとの話をひとしきり。
ヒロ「すぐ終わっちゃうから、集中して、気を抜かないように」
ヒロの言葉がたどたどしくて、しかも謎の上から目線w
25年以上ライブをやっていても、ずっとこなれた感じにならないんだよね。それもまたよい。
「透明飛行船」
5曲目は透明飛行船。
演奏が始まって、イントロですぐ演奏ストップ。
何らかのトラブルがあったことは分かるものの、何があったのか。説明を待つ観客。少しの間があって藤くん。
「そうだな、君たちには知る権利がある。」やや時間を置いて一言。「ヒデちゃんが間違えた。」
チャマ「ヒデちゃんが昨日の曲やった」
客席からはなぜか拍手。こういうときもBumperは温かい。予定通りに進まないことも一緒に共有できて、なんだか嬉しくなってしまうんだよね。
「窓の中から」
13曲目。
このツアーにおいて、これまで他の会場では「スノースマイル」が演奏されていた箇所。
「ずっとやりたかった曲をやります」
ボーカルの藤くんがそう言って始まったのは、「BUMP OF CHICKEN 18祭(フェス)」で放映・公開されたばかりの楽曲、「窓の中から」。
18祭はNHKの企画で、アーティストが1000人の18歳世代と一緒にパフォーマンスする一度きりのステージ。2016年からほぼ毎年開催されており、過去にはRADWIMPSやあいみょんなどが1000人の18歳とパフォーマンスしている。コロナ禍での休止やオンライン開催を挟みながら、2023年はリアル開催されたイベント。
番組自体はドキュメンタリー的な手法で、何人かの出演者に焦点を当てながら、彼らの生活や考えていることを深掘りして、今回のパフォーマンスに臨むそれぞれの向き合い方を見つめていく。毎回涙なしでは見られない感動的な番組。
ここで演奏される「窓の中から」は、バンプの熱量も1000人の18歳世代のそれも相当に高く、歌詞と楽曲も素晴らしく、圧倒的なパフォーマンスだった。
この18祭の放映は3月31日の金曜日。僕が参戦したライブはその2日後の4月2日。この2日間でできる限り楽曲を聴き込んで臨んだ当日。
掛け合いのコーラス部分を一緒に歌いたくて。
会場の観客も、多くは同じ気持ちでこのライブに集ったと思う。
このライブのチケットを取った時点ではこの曲が演奏されることはもちろん知らなかったわけだけれど、このタイミングでいち早くライブでこの曲を聴けて感激した。
「月虹」
14曲目は「月虹」。
ライブで聴くのは初めて。前作「aurora arc」のアルバムに収められているものの、「aurora ark」ツアーでは別の曲との入れ替えで、僕が参戦した最終日は残念ながら演奏されなかった。
この曲は間違いなく難易度が高く、相当の気合を入れないと崩壊する危険がありそうに思うけれど、そんなことは全く感じさせず、サブステージ上ではひたすらに濃密な時間が流れた。
曲終わりに静かなアウトロ。その音がクローズする瞬間に藤くんとヒロがグータッチしてサブステージに背を向ける。赤く薄暗い照明に浮かぶ姿がたまらなくエモい。
「HAPPY」
15曲目は「HAPPY」。
このライブで最も心に深く響いたのはこの曲だ。
何がどう自分の心に刺さったのか、その時もライブ後もずっと反芻して分析しようと試みたけれど、今でもよく分からず説明のしようがない。とにかく歌の前半から泣けて泣けてどうしようもなかった。気持ちが抑えられず、タオルを顔に埋めて全体を覆った。
「HAPPY」ってこんなに熱い曲だったっけ?
彼らの楽曲はどれも素晴らしい。とはいえ、この曲に特別な思い入れを持って聴いてきたわけではなかったのに、今日はどうしてこんなに感情が揺さぶられるのだろう。
藤くんが舞台上手に寄ってきて叫ぶ。
「生まれてきてよかったか?自分の "BIRTHDAY" の前に "HAPPY" を付けることができるか!?できねえなら俺が代わりに付けてやるよ!お前の "BIRTHDAY" は俺の "HAPPY"だ!」
言葉が自分に向けてまっすぐに飛んでくる。
藤くんにも同じ言葉を返したくなる。藤くんは今月自身の誕生日がやってくる。でも自分のことはそっちのけで、今日やってきた観客のことだけ考えて発せられた言葉に胸が熱くなる。
バンプのライブで、僕らは、僕は、普段は内に込められた感情を解放しにやってきている。
全17曲の15曲目。ここまで楽曲を聴いて感じて体を揺らしてきて、すべてのスイッチが入っていたところに、圧倒的なパフォーマンスによってこれまで持ちこたえてきたものが決壊したような感覚。
アンコール
アンコールは「ランプ」、そして「ガラスのブルース」。
アンコール後の藤くんの言葉。
「長野には初めて来ました。初めて来た街なのに、昨日も今日も、めちゃくちゃ暖かく迎えてもらえました。俺たちは来たことがない土地なのに、俺たちの、俺の曲は、先に君たちと仲良くなってた。すごく不思議な気持ちです。だけどめちゃくちゃ幸せです。」
続いて聞こえてきたのは、驚くべき言葉。
「もう1曲やりたいが、もう、声が出ん」
残る体力の計算もせずに出しつくしたパフォーマンス。もう声が出ないという言葉が彼の口から出てくるなんて。このライブで彼らの熱量を感じられて幸せに思うと同時に、切ない気持ちにもなった。
もうそれ以上は求められない。そう思うのに。
「それでも、もう1曲聴きたいか!?」
こう問われたら、それは聴きたいと思ってしまう。
「業務連絡、業務連絡。俺のイヤモニが入れ替わってLとRが分からない。至急、元に戻してください。」
スタッフがすぐやってきて戻してくれる。
「ありがとう、付き合い長いんだよ。」
この一言に現れる信頼感。舞台上でパフォーマンスするメンバーだけでは舞台は成り立たない。多くの頼れる裏方の存在を感じながら、このライブを構成する一員としてひたすらこの時間を大切にしたいと思う。
「くだらない唄」
ダブルアンコールで最後に歌ってくれたのは「くだらない唄」。
それはもう、心のこもった最高の唄だった。
すべてを歌い、燃やし尽くし、両手を広げて満身創痍の姿を観客に向けて披露する。
「出がらしです。俺がお茶っ葉だったならば水に入れても色も出ません。」
ここまで出しつくしてふらふらになった姿を見たのは初めてのこと。
こんなライブ、かつてあっただろうか。
伝説になり得るライブに居合わせた。二度とない時間。
本当にありがとう。
「be there」ツアー長野公演2日目セトリ
本編
アカシア
ダンデライオン
天体観測
なないろ
透明飛行船
クロノスタシス
Small World
魔法の料理〜君から君へ〜
プレゼント
新世界
SOUVENIR
Gravity
窓の中から
月虹
HAPPY
ray
supernova
アンコール
ランプ
ガラスのブルース
くだらない唄
さいごに
当日、長野駅に降りた瞬間から、駅周辺どこに行ってもBumperがそこにいて、話をしなくても連帯感があった。ライブ後も、翌日長野を離れるまではまだBumperの存在を感じていたが、それぞれが自分の生活に戻っていくにつれ、少しずつ街に溶け込んで見えなくなっていった。
見えなくてもいつでもそこにいる。みんな元気で。
ツアーはまだ続く。
どうか最後まで無事に駆け抜けられますように。
(おまけ)2月11日の有明公演レポと5月28日のツアーファイナルレポもよろしければお読み下さい。