BUMP OF CHICKEN藤原基央氏インタビューに思うこと
2020年11月号「ROCKIN'ON JAPAN」のBUMP OF CHICKENインタビューを読み終えた。
「『aurora ark』ツアーから最新曲の誕生まで、1年間のすべてを藤原基央が語る」とのサブタイトルで、2019年のツアーから最新の「アカシア」「Gravity」までを、BUMP OF CHICKENのボーカル担当でかつ全楽曲の作詞作曲を手掛ける藤原基央氏(以下「藤くん」)が語り尽くすという、リスナーにとって相当贅沢な内容になっている。
ここしかないタイミング
インタビューだけで20ページにも及ぶ膨大かつ詳細な記事。読み終えてまず思ったのは、「よくぞ、このタイミングで出してくれた!」ということ。aurora arkツアーから最新曲が出るまで、彼らの動向は、週1回放送されるラジオ「PONTSUKA!」を除いてはほとんど知られておらず、そのラジオすら4カ月もの間休止していた。コロナ禍においては特段の新しい情報がなく、新曲のリリースも8月に「Gravity」の情報が出るまでは、バンドとして完全に沈黙している状況にあった。
その間彼らがどんな活動をしているのかしていないのか、何を考え、どんなことを温めているのか、あるいは本来あるはずだった出演やリリースの予定がコロナ禍によって延期や変更となったことがあったのかなかったのか。1リスナーとして、彼らの声が聞きたかったし、待ち望んでいた。
5月頃(時期はうろ覚え)、BUMP OF CHICKEN公式YouTubeチャンネルで、彼らのMusic Videoが多数公開され、リスナーは乱舞したが、公開そのものについて公式のコメントはなかった。
ツアーのきらめきが「アカシア」を生んだ
インタビュー記事によると、藤くんの中で、aurora arkがリスナーにとってだけではなく、彼自身にとっても大きな意味をもつツアーであったこと、あのツアーの熱量が「アカシア」のキラキラ感、躍動感に繋がっていることが話されていて、あのツアー会場で同じ空気を共有した1リスナーとしても誇らしい気持ちになった。もちろん、会場で僕がやったことなど、本当に何でもない。気に入ったグッズを買い、彼らの登場を待ちわび、ライブが始まればひたすら一瞬一瞬を見逃さないように、どうか時間が過ぎていかないように必死で願いながら、声を上げ、歌い、シンガロングに参加した、ただそれだけのこと。
本当に数万分の一の存在でしかないけれど、あの空気に触れ、同じ空間にいられたこと、そしてツアーのすぐ次に作られた楽曲が、ツアーのポジティブな影響を受けていることは素直に嬉しく思う。
aurora arkツアーの東京ドーム最終日、それももう本当に最後の時間、アンコールで藤くんが語った一節に、こんな言葉があった。
音楽ってものが生まれてから今日まで、新しい曲がどんどんどんどん生まれている。そんな中から俺の歌を、俺たちの音楽を見つけてくれた。(略)だから、俺の歌う歌は、俺たちが出す音は、絶対に必ずお前の未来がどんなものだろうと、どこにいようと、必ずそばにいる。
そう、この言葉はリスナーへの深い信頼をもって彼が本当の思いをもって伝えられたものであり、それはそのままアカシアの歌詞に昇華している。
「いつか君を見つけた時に 君に僕も見つけてもらったんだな」「もう離せない手を繋いだよ」といったフレーズは、まさにあのツアーがその場限りで完結するものではなく、その後の活動にも直接的に影響を与えていくほどの熱を帯びていて、愛情と絆が詰め込まれているのだと強く感じさせるし、彼自身も同じ趣旨のことを語っている。
あのツアーのきらめきが「アカシア」を生んだのだ。
早く次のライブで「オーイエー、イエー、アハン」のシンガロングをやりたいw
ツアー終了のさびしさが「Gravity」を生んだ
一方、ツアーが終わってしまう儚さ、さびしさから生まれたノスタルジックな楽曲が「Gravity」だ。「帰ろうとしない帰り道」から始まる歌詞は、その情景を強く思い起こさせる。体験したことがないのに、まるで自分にもそういう時間を過ごしたことがあったような、給水塔の周辺を舞う蝙蝠を見たような錯覚を抱かせる。
子供の頃のノスタルジーを感じさせる楽曲がバンプには多い。
「R.I.P.」や「魔法の料理 ~君から君へ~」など、自分が直接その体験をしていなかったとしても、それぞれが持つ子供の頃の体験、たとえば尻尾の生えた小さな友だちとの交流であったり、叱られた後の晩御飯の不思議であったりといったことが映像のように脳裏に浮かぶ。
僕自身の体験でいえば、家の中で遊んでいた時に母の大事にしていた三面鏡に何かをぶつけてヒビを入れてしまったり、病院に行きたくなくて忘れたふりをしてわざと外に遊びに行ったり、秘密基地で友だちと遊んだり…といった思い出がいくらでもあるけれど、普段はそれらを思い出すことはないし、実際のところ、もはや自身の記憶からも擦り切れてしまい、もう遠く彼方にいってしまった思い出たちも無数にあるのだろう。
今回、メンバー4人の中学時代の帰り道の様子が「Gravity」に描かれた情景に反映されているという。インタビューで語られている「夕日があの電線より下に行ったら帰ろう」とか、自分もそういうことをした気がするし、めちゃくちゃ共感できるけれど、大人になったらもう思いつきもしない感覚だよね。
すべての音を出し尽くしたら、ライブは終わっちゃうんだ。あの日のさびしさが「Gravity」に繋がっているのだよね。藤くんがライブで語っていた言葉をどうか忘れないようにと、帰りの電車内で必死に書き留めたことを思い出す。僕にとって大切な曲がまたひとつ増えた。
メンバーの不倫報道と「ROCKIN'ON JAPAN」編集部への感謝
冒頭にも少し触れた通り、あのツアーと新曲について藤くんが充実感をもって語れるのは、まさにこのタイミングしかなかった。少し時期が後にずれていたら、バンド内メンバーの不倫報道が明るみに出て、同じ心境ではとても話すことができてなかっただろうし、もし何らかを語ったとしてももっと別の言葉になってしまっていたことは間違いない。その意味で、今回インタビューを敢行してくれた「ROCKIN'ON JAPAN」編集部に深く感謝したい。
また、インタビュー後に出た報道に関して、その事による修正や加筆などはせず、当初まとめた記事のまま掲載するという姿勢を貫いてくれて、本当に感謝しかない。
BUMP OF CHICKEN関係の直近のニュース
8/24 藤原基央氏がラジオ「PONTSUKA!」で一般女性との結婚を発表
9/10 aurora ark ツアーDVD発売告知、事前予約開始
9/10 新曲「Gravity」をリリース
9/14 アニメーション映画『思い、思われ、ふり、ふられ』の「Gravity」特別MVが解禁
9/18 直井由文氏の不倫が文春オンラインで報道
9/29 新曲「アカシア」がポケモン公式YouTubeチャンネルにて公開
9/30 「ROCKIN'ON JAPAN」11月号発売
メンバーの活動休止がバンドにもたらす影響とは
BUMP OF CHICKENは、バンド結成から25年間、ひとりのメンバーが増減することもなく、これまで一貫して4人でその音楽活動が行われてきた。2020年9月に文春オンラインで発表された報道を受けて、直井由文氏(以下「チャマ」)が活動を休止し、今後は3人で活動していくことになるということで、それがバンドに及ぼす影響は少なからずあるだろう。
単なる音楽編成上の問題だけでなく、藤くんが紡ぐ歌詞や音楽性そのものに対しても無傷ではいられないかも知れないし、別の視点では、SNSでの発信やグッズ制作を担当していたチャマの離脱によって、マーケティング的にも影響を受ける恐れがある。チャマは盛り上げ役の側面もあったから、ライブにおいても彼の不在による影響は免れない。
ただ、こういった実務的な影響にとどまらず、今回の報道やその事実が彼ら自身の尊厳をひどく傷付ける出来事になってしまったことを、僕はとても残念に思う。
真摯に音楽に向き合う姿は、真摯に生きる姿を見せることでもあった。
彼らの幼少期からの友情や繋がりを、僕らリスナーは奇跡の物語として捉えてきたし、そしてこの物語はこれからもきっと紡がれていくのだと勝手に思い込んでいた。彼ら自身にも、そういう想いは少なからずあっただろう。
願い
でも、人間なんだから、間違えることもある。どうしようもない現実に向き合い、あるべき姿との矛盾に苦しむこともある。それでも、本当に辛いとき、しんどいときに僕らに寄り添ってくれた言葉であり音楽は、きっと彼ら自身をも裏切ることはないと信じる。
楽曲が生まれた瞬間から、楽曲には人格が備わり、勝手に成長していくんだという意味のことをいつか藤くんが言っていた。もし叶うことなら、彼ら自身の楽曲に、彼ら自身がどうか癒されてほしいと願う。
「もうきっと多分大丈夫 どこが痛いか分かったからね 自分で涙拾えたら いつか魔法に変えられる」(Aurora)
「何回転んだっていいさ 擦り剥いた傷をちゃんと見るんだ」(ダイヤモンド)
「泣いたり怒ったりした事の全部が 音符になって繋がって 僕らを結んだ」(リボン)
等々、彼らにはどうしようもないときに胸に刺さり染み込んでいく歌詞があり音楽がある。
BUMP OF CHICKENはそういう想いを綴ってきたんだ。
ちっぽけなリスナーである僕も、きっと彼らのそばにいる。
最後に
書いても書いても書き足りないし、言いたいことがきちんと言えてない感覚があります。後日加筆修正したり別記事として公開したりするかも知れませんが、ひとまず公開します。
最後までお読み下さってありがとうございました。